年間399ドル(約4万5000円)で技術ニュースを提供する、インフォメーション(The Information)。同社によると、12月4日から、30歳以下の人々を対象に年間購読料199ドル(約2万2000円)のプラン、よりディープなファン向けの749ドル(約8万4300円)のプランが新たに加わったという。
デジタルメディア企業は、広告収入目標を達成できず、目標数値が切り下げられるなか、厳しい時期を迎えている。そんななか、サブスクリプション部門の状況は好転しているようであり、インフォメーション(The Information)がこのビジネスモデルを好んで継続している理由もそこにある。
年間399ドル(約4万5000円)で技術ニュースを提供するこのスタートアップによると、サブスクリプションは継続して拡大しており、その主要プランである399ドルプランを補完する新しいサブスクリプションプランへ手を広げている。12月4日から、同社は30歳以下の人々を対象に年間購読料199ドル(約2万2000円)のプラン(「ジ・インフォメーション・ヤングプロフェッショナルプラン」)と749ドル(約8万4300円)のプラン(「オールアクセスプラン」)を新たに加えた。
ふたつのプランの中身
ヤングプロフェッショナルプランは、30歳以下の人々に限定してイベントやFacebookグループへのアクセスを許可。この年間購読料は5年間有効だ。オールアクセスプランのサブスクライバーは、すべてのインフォメーションのイベントへの参加が保証され、ゲストをひとり連れてくることが可能だ。彼らはまた、その年インフォメーションでもっとも話題になった記事とリポーターたちによる独自の解説をまとめたハードカバー製の本も受けとる。
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インフォメーションCEOで創設者のジェシカ・レッシン氏は、この新しい廉価版サブスクリプションプランは、キャリアの早い段階にあり、予想収入まで到達していないが、勤めている会社の外の人々との出会いの場を求めている人たちの役に立つように考案されていると述べる。
高額プランは、同社のイベントを高く評価し、そのイベントに参加するためにより高い金額を支払う意思を示している人たちのために用意。インフォメーションは、イベントをスタンドアロンの事業分野ではなく、むしろサブスクライバーの利益になるよう扱うことを選択している。そのため、イベントは通常チケット予約が可能になると1時間以内に予定数が埋まってしまうという。
サブスクへの期待と課題
「サブスクリプションモデルにこれほど期待をかけたことはかつてない。旧来のメディアモデルが試みていることに目を向ければわかる」と、ウォールストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal)でレポーティングスキルを鍛え、家族の蓄えを使って、4年前にインフォメーションを立ち上げたレッシン氏はいう。「BuzzFeedは人員削減を行っている。サブスクリプション事業は、読者にとっても、企業にとっても最善のものであることは明らかだ。私たちは、私たちのジャーナリズムを用いて、できる限り多くの人々に奉仕し、その価値に見合う価格を維持する方法を模索している」。
すでに1年前にはインフォメーションは1万人以上のサブスクライバーを獲得していたとレッシン氏は述べる。その数字がどれほど伸びたのかについて彼女が口にすることはないだろうが、サブスクリプションは1年前と同じ割合で拡大しているという(同社によると、1ドルのお試し購読はその数字から除外されているということだ)。
インフォメーションはまた、小規模ではあるものの、法人向けサブスクリプション販売事業も拡大していると、レッシン氏は述べた。そして、高価格帯では、1万ドル(約113万円)の年間購読プランも設けており、直接記事の報告が得られることがその利点ということだ。訴求力が限られているため、力はそれほど入っていないが、高度に専門化されたB2Bサービスを成長させる機会があることをインフォメーションは示している。ちなみに、1万ドルプランの主なサブスクライバーは金融業界の人たちだ。
パブリッシャーたちは、その熱狂的支持者たちがサインアップする初期の段階にサブスクリプション事業のもっとも大きい伸びを経験し、あとになって能力が試される事態に直面しがちだと、パブリッシャーのメンバーシッププログラムの構築を助ける、ニュース・レベニューハブ(News Revenue Hub)のCEO、メリー・ウォルター・ブラウン氏は語る。「継続してオーディエンスを構築しなければならないときになって、苦労がはじまる。サブスクライバーに変えるための潜在的な顧客プールをキープすることだ」と、彼女は述べる。「彼らをパイプラインに引き寄せ、ニュースレターにサインアップさせ、なぜ彼らのサポートが必要なのかを納得してもらわなければならない。彼らがメンバーのデータベースを構築しない場合、プログラムが立ち行かなくなる」。
今後の拡大戦略
パーソナライゼーションと連動して、インフォメーションは、これから1年でエディトリアル責任者を30人に倍増させることで、その取材範囲拡大も計画している。現在インフォメーションの社員は合計30人であり、そのなかにはエディトリアル担当以外の社員も含まれている。
イベントも今後の1年間でさらに大きく注目されていくことになるだろう。インフォメーションは毎年2種類のイベントを開催しており、その1つが8から10回開催されるネットワーキングイベント、もう1つが丸1日をかけるプログラムイベントで、2018年はこれまでの2回から4回に増やす予定だ。よりたくさんのオーディエンスに到達するために、インフォメーションは動画で彼らのイベントを閲覧できるように最近取り組んでいる。
継続的な価値の提供で経常利益をあげることは簡単だ。だから、パブリッシャーのサブスクリプションとメンバーシップはエディトリアルプロダクトに結びつく傾向がある。そのために、インフォメーションは同社のジャーナリズムをそのメイン商品と位置づけ、テック企業の役員の顔ぶれやセクシャルハラスメントといった、秘匿と考えられる領域に深く切りこむことに焦点を当てている。
「私たちのサブスクライバー基盤の本来の限界は、私たちのプロダクトにどれほど価値があるかにかかっている」と、レッシン氏は述べている。「私たちが現在いる成長レベルがその限界まで近づいているとは考えていない。FTやウォールストリート・ジャーナルのサブスクライバー数をみると、長期に渡って、ビジネスとテクノロジーに関するもっとも重要な記事を読みたいという人たちが、そのオーディエンスになっている。4年前は、有料購読してくれる人たちを捕まえられるかが問題だったが、現在では、価値あるプロダクトを作りだせるかどうかが問題になっている。なぜなら、そこには巨大な市場が存在しているからだ。私たちが報道していることの多くは、他社はいまのところ報道していない」。