インデペンデント(The Independent)やイブニングスタンダード(Evening Standard)を発行するESIメディアが、今後エージェンシー向けに人気記事のデータへのアクセスを認めていくという。そうなれば広告主側が広告購入を管理しやすくなり、双方がより深く長期的な関係を構築することが期待できる。
オンラインメディアのインデペンデント(The Independent)およびイブニングスタンダード(Evening Standard)を発行するESIメディアが、今後エージェンシー向けに人気記事のデータへのアクセスを認めていくという。そうなれば広告主側が広告購入を管理しやすくなり、また双方がより深く、長期的な関係を構築することが期待できる。
ESIメディアからアクセスを認可されたエージェンシーは、ESIリアルタイム(ESI RealTime)と呼ばれるダッシュボードから、インディ100(indy100)やホームズアンドプロパティ(Homes & Property)を含めた同社のポートフォリオ全体で、もっとも人気のある記事を確認できるようになる。
ダッシュボードに表示されるのは、アクセス解析ツールのチャートビート(Chartbeat)で調査した、記事コンテンツの訪問者数および滞在時間で、ここ数年ESIメディアをはじめとする多くのパブリッシャーが、ニュースルームにおける指標として活用してきたものだ。これは掲載サイト、デバイス、セクション(旅行、スポーツ、ビジネスといったもの)によって分類できる。資金力のある広告主なら、これを使ってロンドンのソーシャルメディアでもっとも読者数の多い人気記事に広告の掲載予約を行うことができる。
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エージェンシーは広告主のニーズに合った人気記事についての調査を行える。そして、ESIメディアの広告運用チームのメンバーがその要望を実行してくれる。広告はメディア全体を通して直接、あるいはプログラマティック広告として予約可能だ。ただ、広告主の希望がホームページやチャンネルのテイクオーバーといった優先キャンペーンと重なった場合は、この限りではないという。

ESIリアルタイムのダッシュボード
人気記事向けに広告作成
「私は、このやり方でさらに業績が伸びると期待している。見通しは非常に明るいと思う」と話すのは、ESIメディアのチーフデータオフィサーのジョー・ホールダウェイ氏だ。広告予約する誰もがダッシュボードを利用するわけではないということは、彼女も承知の上だ。「長期的なパートナーとして考えたときに、これはほかのメディアオーナーとの大きな違いとなる」。
今後数カ月、同メディアはビールブランドのクローネンブルグ(Kronenbourg)および担当エージェンシーのピュブリシス(Publicis)とともに初のキャンペーンを展開する。これは同メディアオーナーにとって大仕事だ。ESIメディアのアナリストがもっとも閲覧数が多くなると思われる記事、そしてさらに広告主のガイドラインに沿ったものを見極めて広告バイヤー向けに送信する。そこから2時間以内に、エージェンシーは該当記事に関連性のある広告作品を返送する。すると日食やフランスのマクロン大統領に関連性のあるコピーのついたクローネンブルグの広告が、記事に掲載される。現在、同ブランドがターゲットにしているのはサッカー選手の移籍市場関連でもっとも人気のある記事だ。

クローネンブルグの広告の掲載例
最近人気のあった記事は、なぜなぜリヴァプールFCがフィリペ・コウチーニョ選手を手放さなかったのか、というもので、同時訪問者数が3000人。記事の平均滞在時間は80秒だった。
クリックスルー率は好調
「スケールは必ずしも大きくはないが、ターゲティングの堅固さがある」と、ホールダウェイ氏はいう。「トップ人気記事を通じてインプレッション数200万回予約するのであれば、これをやらない手はない」。インターネット調査会社のコムスコア(conScore)によると、イギリスのインターネット人口は5050万人いるが、ESIメディアが所有するサイトの月間ユニークビジター数は、総計2350万人だという。
英国のEU離脱(ブレグジット)やトランプ大統領、そしてスポーツ関連イベントの記事は常に人気が高く、ブレグジット関連コンテンツの平均滞在時間は約3分だ。広告主がテロ攻撃などの記事に広告掲載を望まない場合は、それらを自動的に除外することができる。これも、広告購入が「読者が何を読んでいるか」に基づいて行われているからだ。これは必ずしも予見可能なことではなく、通常、パブリッシャーがベンチマークや保証を提供するのは困難なものだ。
キャンペーンが継続展開中であるため、ホールダウェイ氏は広告の成果を明確に数値で提示することはできなかった。しかし、初期段階における見通しは明るいといい、特にビルボード広告やハーフページ広告といったフォーマットのクリックスルー率は好調だという。
プレロール広告も対象に
いまのところ、インベントリの対象となっているのはディスプレイ広告のみだが、同パブリッシャーは今後2カ月のうちにプレロール動画広告にも対象を広げていきたい考えだ。
ESIメディアのツールを使えば、メディア購入の柔軟性が高まるだろう。同社がクローネンブルグと展開しているようなキャンペーンにはオーダーメイドのデータ要素があり、長期的な関係構築が期待できる。「コアとなる製品の出来映え以上に、(ポジティブな)ハロー効果が見られる」と、ホールダウェイ氏は話した。