リテンション向上のため、 FT がメールアンケートを導入

フィナンシャル・タイムズ(The Financial Times、以下FT)がニュースレターでアンケートの導入を開始した。目的は読者にコンテンツにより定期的に触れてもらうことと、会員のリテンションを高めてもらうことだ。まだ実装から間もないが出だしは上々のようだ。

3月以降、同社はもっとも人気の高いニュースレターであるファーストFT(FirstFT)で27回のアンケートを実施している。ファーストFTは会員限定のニュースレターで、同社によると10万人以上が登録しているという。ファーストFTは世界的なトップニュースをまとめて朝に配信するニュースレターで、FTのほかの記事へのリンクも含まれている。リンクする記事はクリックスルー率に基づいて決められる。具体的な数字についてFTは明かしていないが、これまでのところ全リンクのなかでアンケートのクリックスルー率がもっとも高かったという。

FTのオーディエンス及び新コンテンツ戦略担当リーダーを務めるレネー・カプラン氏は「ニュースレタープラットフォームによるコミュニティの醸成というのは当社にとって新たな取組であり、今後もそのあり方を模索していく」と語っている。「まだ取り組みは初期段階だ。現在コミュニティ醸成のためエンゲージメントを活用しているが、これはエンゲージメントだけを目的にするのとは異なる。コミュニティへの帰属意識がある熱心なオーディエンスであれば、記事を開く頻度も増えて価値が高まる」。

アンケートの内容と利点

目標はニュースレターのコンテンツ消費量を増やし、開封率を上げることだ。今年4月にFTの有料会員は100万人を突破した。だがFTの何十というニュースレターの大半は会員向けとなっており、読者をひきとめることが重要となる。カプラン氏は最新の開封率について明かしていないが、以前25から50%と報じられたこともある。

現時点でFTのアンケートは「ボリス・ジョンソン氏はブレクジットを成功させられると思うか?」といった「はい」か「いいえ」で答える形式の質問だけだ。もっとも人気だったアンケートは6月4日に行われたもので、「ドナルド・トランプ氏を英国の公式訪問に招待したテレサ・メイ氏の判断は正しかったと思うか?」という質問だった。質問は世論でも意見の分かれている話題に対して投げかけられており、読者に返答をうながしている。アンケートはテック系プラットフォームのオピナリー(Opinary)を用いており、回答が即座に分かるようになっている。FTはアンケートの翌日にニュースレターでアンケート結果を公開している。次の段階は、質問の範囲と対象ニュースレターを増やすことだ。

広告を提供するパブリッシャーは、オーディエンス調査やアンケートを導入するケースが多い。一方でアンケートへ回答してフィードバックを提供する率が高いのはサブスクリプション会員のほうだ。会員からのフィードバックを記事や商品、戦略に反映させるパブリッシャーが増えている。たとえばアクシオス(AXIOS)やBsiness Insider、アスレティック(The Athletic)などだ。

アンケートは成功の度合いを測るうえで役立つ。ニュースレターに関連する指標はあいまいなものばかりで、大半の場合使われているのは開封率やクリックスルー率だ。FTのニュースレターの一部ではニュースレター単体での検証と分析が行われているが、これでは成功度合いを測りづらい。アンケートであれば開封率やクリックスルー率以上に、読者の記事自体への反応を見ることができる。

リテンション率を最大限に

一般的にニュースレターはニッチな分野を対象にすることが多い。オーディエンスはその分野に興味があり、自主的に登録してメールを開封するためリテンション率も高くなる。FTが取り組んでいるのが、このリテンション率の高いオーディエンスを最大限に増やす方法だ。

「各分野や製品に関するニュースレターとオーディエンスをどのように活用すればフォロワーを増やせるか、そしてコミュニティを醸成できるかというのが全体的な検討課題だ」と、カプラン氏は語る。

同社がニュースレターでコミュニティ醸成を図るのは、今回がはじめてではない。FTは「エナジー・ソース(Energy Source)」という、エネルギー分野のニュースの分析と解説を行う週刊のニュースレターを発行している。1年以上前に、同社はこのニュースレターを登録している読者に対して編集者への質問を募集し、翌週以降のニュースレターで回答を行った。ここでもニュースレターにおける指標の問題がさまたげとなったが、送られてくる質問の数は増えたという。

「ニュースレター内のコンテンツに関連した実際のアクションと、開封率やクリックスルー率を関連付けるのは難しい。結果に結びついた原因を特定するのが難しいのだ」と、カプラン氏は語る。「だが質問を書いてくるオーディエンスは測定可能だった。記事をわざわざ読んで質問を書いてくるということは、コンテンツに価値を見出しているのだから」。

Lucinda Southern(原文 / 訳:SI Japan)