ブリーチャー・レポート はなぜ、成長を続けられるのか?:米デジタルメディア不振のなか

ブリーチャー・レポート(Bleacher Report)は、長尺コンテンツ、イベント、コマース、そして「ハウス・オブ・ハイライツ(House of Highlights)」や「B/Rフットボール」といった主要ポートフォリオブランドを中心としたポートフォリオ戦略に一連の投資を行っている。これにより、ワーナーメディア(WarnerMedia)を親会社に持つこのパブリッシャーは、2019年の収益が2億ドル(約200億円)を超える見込みだ。

2019年もほぼ半分終わり、ブリーチャー・レポートCEO、ハワード・ミットマン氏は、同パブリッシャーの総収益が前年比49%増であることを発表した。この発表は、ブリーチャー・レポートが今年度に高い収益目標を設定したあとのことだ。「昨年は大変な年だったが、今年は現在49%増だ」と、ミットマン氏はいう。

ミットマン氏は、ブリーチャー・レポートが今年どれだけの収益を計上しているのかを詳細を明らかにしていない。しかし、ブリーチャー・レポートが49%という現在の成長軌道を維持する場合、年間収益は2億ドルを超えることになると、事情通の3つの情報筋はいう(アクシオス(Axios)の報告によれば、ブリーチャー・レポートは、2012年にターナー(Turner)が買収したときの収益の4倍または5倍になると、今年初頭にミットマン氏が述べたという)。

そしてメディアにおいて、ほかの大手デジタルパブリッシャーが縮小を余儀なくされているなか、ブリーチャー・レポートは成長を続けているという。約500人の従業員を擁する同社は、長尺動画番組制作、コマース、イベント、その他の事業分野への投資を継続する計画だ。

新しい事業分野での成長

ブリーチャー・レポートが時間をかけて取り組んでいる3つの事業分野は、動画制作とライセンシング、コマースとイベントだ。

ブリーチャー・レポートは3月、チーフコンテンツオフィサーとして、長尺デジタル動画とエンターテイメントのエグゼクティブ、サム・トールズ氏を採用した。トールズ氏の役割の大きな部分は、「ゲーム・オブ・ゾーンズ(Game of Zones)」や「ザ・チャンピオンズ(The Champions)」などのデジタル番組を監督することだけでなく、ブリーチャー・レポートがサード・パーティにライセンス供与を可能にさせる長尺コンテンツの開発と制作だ。たとえば、ブリーチャー・レポートは、春にショータイム(Showtime)で放映されたドキュメンタリー映画「クワイエット・ストーム:ロン・アーテスト物語(Quiet Storm: The Ron Artest Story)」を制作した。

一方、実験的なマーケティングチームは、ブリーチャー・レポートのポートフォリオブランドに関連するイベントやアクティベーションを含め、6から8のイベントを今年開催する予定だ。たとえば、今年のはじめブリーチャー・レポートは、NBAオールスターゲームの期間中にハウス・オブ・ハイライツブランドのアクティベーションを開催し、アディダス(Adidas)、マクドナルド(McDonald’s)、Twitterがスポンサーについたスタジオ、ゲームルーム、バスケットボールジムなどを提供した。ブリーチャー・レポートの広報担当者によると、この実験的マーケティングチームからの収益は、前年比で67%増加しているという。

ブリーチャー・レポートは、オンラインとイベントを通じてファンに販売するカスタムアパレルやその他の商品でコマースにも着手している。現在開催されているFIFA女子ワールドカップに、ブリーチャー・レポートは女性アーティストたちと協力して9つのユニセックスなサッカージャージをデザインしており、これらはブリーチャー・レポートのサイトで購入が可能になる予定だ。広報担当者によると、ブリーチャー・レポートのコマース事業はまだ初期段階にあり、収益は前年対比で500%増加だという。

「我々は動画や長編記事だけを考えているのではない。意義があり、アーティスト、アスリート、そしてファンを結びつけるエンゲージメントポイントを作り出す方法を考えている」と、ミットマン氏は述べた。

ポートフォリオブランドが中心的な役割を果たす

ブリーチャー・レポートの成長の大部分は、ハウス・オブ・ハイライツ、B/Rフットボール(B/R Football)、B/R キックス(B/R Kicks)などのメディアブランドへの投資によってもたらされた。

ブリーチャー・レポートが2015年に買収したハウス・オブ・ハイライツには、インスタグラム(Instagram)のフォロワーが1310万人いる。昨年、ブリーチャー・レポートは、Twitterでのライブトークショー、ライブイベント、およびYouTubeで配信されるその他のオリジナル番組で、そのブランドとスタークリエイター、オマー・ラジャのプロフィールの拡大を重視してきた。今日では、ハウス・オブ・ハイライツがブリーチャー・レポートの総収益の10%を占めていると、ミットマン氏は述べている。

「ハウス・オブ・ハイライツの事業を正しく行えば、それが会社にとって重要な貢献事業であり続けるだけでなく、それ自体が影響力を持つスポーツブランドに成長することができるだろう」と、ミットマン氏は語った。

B/Rフットボールブランドを有するブリーチャー・レポートにとって、サッカーもまた大きな投資分野だ。チューブラー・ラボ(Tubular Labs)によると、そのバーティカルは4月にインスタグラムで300万人のフォロワーを持っており、5630万の動画視聴数を記録した。ブリーチャー・レポートの女子ワールドカップ報道で中心的な役割を果たすだろう。トーナメントを前にして、昨年の男子ワールドカップでブリーチャー・レポートが生み出した収益と比較して、アディダスやHulu(フールー)といったクライアントからの広告収入10%増をすでに計上していると、ミットマン氏は以前に米DIGIDAYへ語っている。

ブリーチャー・レポートが今年投資しているその他のバーティカルにはB/Rキックス、B/Rフープス(B/R Hoops)、B/Rベッティング(B/R Betting)が含まれる。また、今年の投資には、ラスベガスのシーザーズ・パレス(Caesar’s Palace)にあるスタジオに関してブリーチャー・レポートとシーザーズ・エンターテイメント(Caesars Entertainment)のあいだで結ばれた提携が含まれ、そのスタジオでブリーチャー・レポートはゲームやギャンブル関連のコンテンツを制作する予定だ。

「彼らはZ世代とミレニアル世代のオーディエンスとの関係を保つため、従来のデジタルメディアプロパティの範疇を超えたサービスの多様化において大きく前進を見せている」と、マインドシェアU.S.(Mindshare U.S.)のスポンサーシップマネージングダイレクターであり、スポーツそしてエンターテイメント関連するエージェンシーの業務を監督しているジョッシュ・シュピーゲルマン氏は述べる。ブリーチャー・レポートはマインドシェアが検討しているスポーツメディアで最上位に置かれていると彼はいう。「具体的には、彼らがバナー以外にブランドの機会を構築するために多大な投資をしていることは明らかだ」。

競争の激化が課題

ブリーチャー・レポートの収益の伸びは、パブリッシャーたちが若年層のスポーツファンの時間と注目を集めるためしのぎを削っているときに生まれている。

ESPNは、Facebookやスナップチャット(Snapchat)などのプラットフォーム向けオリジナル番組制作に時間と金を費やしてきた。オーバータイム(Overtime)などの新興ブランドは、高校スポーツなどの分野に焦点を当てることでソーシャル動画視聴者の注目を集めている。そして、アスレチック(The Athletic)のような潤沢な資金を持つニューススタートアップも有料コンテンツに人々を惹きつけることに成功しており、海外にも拡大している

「スポーツパブリッシャーにとって真の差別化を図ることはさらに難しくなっている」と、シュピーゲルマン氏はいう。ブリーチャー・レポートは、大きな規模で若いオーディエンスとつながる、そして共感を呼ぶコンテンツとつながることに関わっており、明らかにひとつのポジションを確立している」。

ブリーチャー・レポートが手を出さない分野は、B/ Rライブ(B/R Live)配信サービスで利用できるものを超える有料サブスクリプションだと、ミットマン氏は前回のインタビューで米DIGIDAYに語っている。

ある事情通によると、B/Rライブでは、スポーツ中継やさまざまなスタジオ番組を提供している。このサービスはワーナーメディアスポーツ(WarnerMedia Sports)とブリーチャー・レポートの共同事業だが、B/Rライブが生み出した収入はブリーチャー・レポートの最終収益に直接計上されていないという。

B/Rライブとブリーチャー・レポートが制作したオリジナル番組の両方が放送中にハイライトされるため、ブリーチャー・レポートは引き続き親会社との強い絆から恩恵を受けている。シュピーゲルマン氏は、それがマーケターにとって有利に働いているといい、特にマーチ・マッドネス(March Madness)やNBAプレーオフなど注目を浴びるイベントでは、マーケターにより大きなリーチと露出をもたらしてくれる。

ミットマン氏によると、ブリーチャー・レポートが重視していることは、モバイルアプリやソーシャルチャネルを介したニュースサイクルと配信を取り扱うことにフォーカスしているブリーチャー・レポートに「常時接続」してもらうこと、そしてオリジナル番組制作、ポッドキャスト、イベントへの同社の投資をカバーする「オンデマンド」事業であり、それはこれからも変わりがないという。

「これらふたつのチャネルの力が一体となって、これからもスポーツやスポーツ文化の世界で水平方向、垂直方向の両方に我々がB/Rを成長させることが可能になる」と、彼は述べた。

Sahil Patel(原文 / 訳:Conyac)
Image via Bleacher Report