リモートワークは、いかに 報道機関 へ影響を与えてるか?:「でも、変わらず〆切はある」

新型コロナウィルス感染がさらなる拡大を見せるなか、メディア界でも働き方の新常態が急速に生まれつつある。

ニューヨークのラジオ局WNYCは各パーソナリティにマイクスリーブを支給し、感染リスクを最小限に抑えるため、スタジオへの携行を励行させている。リファイナリー29(Refinery29)のコマースチームの場合、在宅勤務とはいえ、商品レビューを書く都合上、社に送られてくる商品サンプルなどをピックアップする必要があるため、1日おきに違うスタッフを1人だけ出社させている。家族のいる従業員は自宅内での仕事場の確保に苦労しており、たとえば、アトランティック(Atlantic)のある幹部は、配偶者との寝室をオフィスにしたため、子ども部屋で寝起きしている。

もちろん、記者/レポーターらも正社員/フリーランスの別にかかわらず、締め切りを守るために四苦八苦している。公私にわたって記事のネタを提供してくれる有名人を捕まえるのがますます困難になっているからだ。

「いまは[私のような人間に]語っている場合ではない、という彼らの気持ちもわかる」と、ある記者は嘆く。「でも、こっちにだって、相変わらず締め切りはあるんだ」。

Slack(スラック)やZoom(ズーム)、クラウドベースのCMSといったコミュニケーションツール、G Suite (ジー・スイート)をはじめとする生産性向上ツールの普及により、ジャーナリストもリモートワークをしやすくはなっている。だが、社会的隔離が今後も数週間続くことが予想されるなか、多様な収益源を持つメディア企業は状況への適応を迫られている。

急速に普及する在宅勤務

司法系ニュースメディアのロー360(Law360)は、スタッフが分散していることを受け、毎週配信のポッドキャストを休止し、大麻合法化に関する2019年の特集『ロー360・エクスプローラー:リガリゼーション(Law360 Explores: Legalization)』の再配信を決めた。同番組のプロデューサーは自室のデスクとキッチンテーブルを往復しながら、何週間も先に収録できることを願う番組の企画に追われている。

3月第2週、インサイダー社(Insider Inc.)からボックスメディア(Vox Media)、ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)に至るまで、さまざまなメディアが暫定的だが強制的な在宅勤務制度を施行した。バイスメディア(Vice Media)、ワシントン・ポスト(The Washington Post)、マックラッチー(McClatchy)、メレディス(Meredith)、CNNといったパブリッシャーも、強制ではないが、在宅勤務をスタッフに奨励している。

こうした制度の大半は、スタッフにしばらくのあいだ、オフィスに近寄らないよう求めるものだが――ニューヨーク・タイムズは10日間出勤を禁止する――感染はすでにメディア界にも広がりはじめている。たとえばCBSニュース(CBS News)とコンデナスト(Condé Nast)の従業員は3月、陽性の診断を受けた。

各社で試される対応策

幹部勢は決して、今回の決断を安易に下したわけではない。インサイダー社のマネジメントチームは、広報によると、公式発表に至るまでに何週間も対応策を協議し、報道局にあらかじめその旨を伝え、準備を整えさせていた。ビジネスインサイダー(Business Insider)も然りであり、今回の発表前に開催した全社会議において編集主幹アリソン・ションテル氏は、リモートワークを実施する記者が普段どおり業務をこなすための方法についてプレゼンテーションを行なった。

過去の経験を活かしているパブリッシャーもいる。ボックスメディアは10年近く前にデベロプメント/エンジニアリングワークフォースを構築しており、その際に社内で作り上げたリモートワークハンドブックをマネージャーとスタッフのトレーニングに用いている。同社は従業員とマネージャーの双方に対するオンライントレーニングセッションを開催しており、広報によれば、3月第4週にも新たなオンライントレーニングを提供する計画がある。

制作コンテンツの多様化に乗りだしているパブリッシャーのなかには、さらなる対策とワークフローの変更を迫られたところもある。ボックスメディアは自社ポッドキャストネットワークの番組に携わるスタッフにマイクとデジタルオーディオ録音機器を配布し、各人に自宅でポッドキャストの収録をさせている。また、ゲストへのインタビューも自社スタジオではなく、別の場所での収録を促している。

現場に残る古い習慣

とはいえ、記者/レポーターは結局、取材のために自宅を出なければならず、現場には古い慣習がしぶとく残っている。たとえば3月第2週、米映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタイン氏の量刑審問の際には、マンハッタンの裁判所前にカメラマンや記者/レポーターが大挙して押し寄せた。ひしめき合うその様子はまるで、数週間前の光景のようだった。「社会的隔離をネタにしたジョークは山ほど飛び交った」と、その現場にいたある記者は語る。「でも、それ以外は普段と何も変わらなかったね」。

Max Willens(原文 / 訳:SI Japan)