「仕事を断る頻度が下がった」:米国の フリーライター たち、コロナ危機に翻弄される

フリーランスのライターであるジュリア・パインズ氏は、彼女が抱える主要クライアントから3月の仕事がひとつなくなったことを2月24日に伝えられた。2000ドル(約21万円)の報酬に値する仕事だった。

「何か大きなことが起きようとしていると、最初に感じたのはそのときだった」とパインズ氏は言う。3月、さらに仕事は減った。彼女は失業手当を申請した。それから1カ月が経ったがまだ連絡は来ないという。

このような状況はパインズ氏だけに限らない。米DIGIDAYがインタビューした10人のうちほぼ全員が、今年抱えていた仕事の25%から90%がフリーランス予算の凍結や削減が理由でなくなったと回答した。政府の救援策のうちいくつかは独立請負人にも適応されるようになったが、申請プロセスはそれだけでひとつの仕事のような作業が必要となっている。今後数カ月で経済が再オープンすると予測する人もいるが、春から初夏にかけてがフリーランサーたちにとってはピークの稼ぎ時だ。失ったお金を今年の後半で取り戻すのは難しいだろうと、彼らは言う。

「低い報酬額でも受けている」

ヘルスとサイエンス分野のフリーランスレポーターであるマグダレナ・プニースカ氏の場合、彼女のクライアントは完全にフリーランス予算をなくしてしまうか、報酬額を削減するという形だった。1200単語の記事に対してクライアントのひとつは400ドル(約4万2000円)の報酬を提案してきた。これは通常の報酬と比べて少なくとも30%少ないという。

「以前であれば承諾しなかった仕事を断る頻度が下がっており、以前なら断っていたような低い報酬額でも受けている」と、彼女は述べた。

プニースカ氏は自身の仕事の価値を下げたくはない。また、同じ量のコンテンツをフリーランサーたちからもっと低い報酬で得ることができるとパブリッシャーたちも気付くかも、と心配している。

ビル・ヒンチバーガー氏とランディ・ドティンガ氏はどちらも、カンファレンスに出向き、大手クライアントのためにそのレポートを執筆することでフリーランス所得の大部分を得ていた。あらゆるカンファレンスがキャンセルされたいま、どちらもほかの仕事を得るために慌てている。

ヒンチバーガー氏はアフリカのジャーナリストをバーチャルでトレーニングする単発契約を行っており、ドティンガ氏の場合は幸運にも政府による経済支援策PPPローンに承認されたためそれで乗り切るとのことだ。

支援策に対する複雑な思い

フリーランサーたちが一時的にでも応募することができた支援策には報酬保護プログラム(Paycheck Protection Program)、パンデミック失業支援(Pandemic Unemployment Assistance)、経済損傷災害ローン(Economic Injury Disaster Loan)、そして州からの失業手当があった。EIDLは農業ビジネス限定のものとして仕切られ、PPPは資金源が限られていたため、フリーランサーたちは中小規模の会社とこれらの支援策を巡って競争をしているように感じている。

「フリーランサーは、列の最後の方に並んでいるような気分だ。これらのプログラムでは資金がいずれ尽きるだろう」と、匿名希望のサイエンステクノロジー関連のフリーランスライターのひとりは語った。

同時に、州の失業手当、もしくはPUAにフリーランスが応募資格があるか、判断することは難しい。

匿名を希望した長編の雑誌向けのフリーランスライターのひとりは、失業手当に応募しても彼の収入が正確に反映されないかもしれないため、PPPのみへの応募を選んだと言う。数カ月前に終わらせた仕事の報酬をいま、受け取っているからだ。その一方で、ここ数週間に受けている仕事の数は劇的に減っている。

このフリーランサーはPPP申請プロセスを4月3日に開始し、申請を10日に送ったが、5月第2週まで振り込みを確認できなかったという。

「支援策を悪用していると思われたくはない」と、このライターは言う。

コロナウイルスとの向き合い方

同様の恐怖を持っているフリーランサーは多い。フリーランサーが法律上、どのような報酬を得るべきか正確に理解しようとしても、それもまた複雑な問題だ。

「失業手当はこれまで、フリーランサー向けの仕組みではなかった」と、フリーランスの音楽ライターであるギャリー・スアレズ氏は言う。失業手当や経済支援に彼が申請しない理由もそれだ。

スアレズ氏も現在の収入は「はるかに少なくなっている」という。ここ数カ月のあいだに、何千ドルも失ったという。それでも従来的な意味での失業というよりは、「仕事の数が減っている」状況だそうだ。そのため、彼が失った所得を正確に数字にするのが難しい。

またフリーランサーたちのなかには、新しい仕事を探そうとするべきか、これまでの仕事に留まるべきかで葛藤している人々もいる。

「コロナウイルスが自分の仕事の中心にしたくない」と語るのは、バネッサ・サルビア氏だ。サルビア氏はこれまで、意図的にウイルス関連のトピックを売り込むのを避けてきた。

もうひとりのフリーランサーの場合、ひとつのパブリッシャーが数カ月に及ぶプロジェクトの契約を破棄したことで年間の所得の80%から90%を失ったという。彼の分野はサイエンスとヘルスだが、それでもコロナウイルスに関して正確に報道をする能力が自分にあるか不安があるため、ウイルス関連の執筆の仕事はしたくないと言いう。

「9月以降の見通しが見えない」

いまこそが仕事で忙しくなるべき時期で、夏の終わりから12月にかけては毎年仕事が緩やかになる、と複数のフリーランサーが語った。

「9月以降の見通しが見えないような気分だ」と、スアレズ氏は言う。

Kayleigh Barber(原文 / 訳:塚本 紺)
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