ポッドキャストの世界では現在、ラテン系のリスナーが増えており、複数のメディアから注目を集めている。そうした中、アイハートメディア(iHeartMedia) は、この夏、ラテン系リスナー向けのポッドキャストネットワーク、「マイカルチュラ(MyCultura)」をローンチした。
米国におけるポッドキャストの世界では現在、ラテン系のリスナーが増えている。そうした状況に、アイハートメディア(iHeartMedia)など複数のメディアが着目しはじめた。
アイハートメディア・デジタルオーディオグループ(iHeartMedia Digital Audio Group)のCEO、コーナル・バーン氏によると、この夏、ラテン系リスナー向けのポッドキャストネットワーク、「マイカルチュラ(MyCultura)」がローンチする。初年度は30本のオリジナルポッドキャストを配信する予定で、ポッドキャスティングにおける多様な声やクリエイターを支援していくという。
手始めとして7月に始まる6番組では、リン=マニュエル・ミランダ氏、エヴァ・ロンゴリア氏、ウィルマー・バルデラマ氏、ロザリオ・ドーソン氏、グロリア・エステファン氏らラテン系のビッグネームを起用。番組ジャンルは、ポップカルチャーから音楽、コメディ、メンタルヘルス、金融、ニュースまで多岐にわたる。また、米保険会社のステイト・ファーム(State Farm) がスポンサーについたことも発表されている。パートナーシップ契約についてはまだ明かされていない。
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「米国では人口の18%をラテン系が占めているにもかかわらず、音声メディアから見過ごされてきた」とバーン氏は語る。ポッドトラック(Podtrac) のランキングによれば、アイハートラジオ(iHeartRadio)は米国で最大のポッドキャストメディアとなっている。配信中の番組数、550以上について、2021年4月の月間ユニークリスナー数は2680万人、ダウンロードとストリーミングの合計数は2億5100万を超える。最新の業績発表によると、デジタルオーディオグループの第1四半期の収益は前年比で70%増の1億5700万ドル(約170億円)超となった。そのなかでもポッドキャストによる収益は前年比で142%増と目覚ましく、グループ全体の収益の22%を占めるまでに至っている。
調査データの分析から掴む
米メディアエージェンシーのベリトン・ワン(Veritone One) でポッドキャストメディア担当VPを務めるヒラリー・ロス氏は、「2月にはユニビジョン(Univision)、リボルバー(reVolver)、ピタヤ(Pitaya)などの番組が配信され、ラテン系リスナー向けのポッドキャストは確実に増えている」と話す。「ラテン系やヒスパニック系のリスナー向けに制作されたポッドキャストはすでに多数配信されているが、まだまだ増やせる余地が確実にある。ジョー・ローガンのような大物が不在であることも、その裾野の広さの要因だろう」。
ニールセンが2月に発表した調査結果によると、ヒスパニック系のポッドキャストのリスナー数は、2010年時点では110万人だったのに対し、2019年には680万人と6倍以上増えている(同期間で白人のリスナー数は4倍に増加)。また、2020年6月にエジソンリサーチ(Edison Research)が行った調査では、18歳以上のラテン系米国人の45%がポッドキャストを聴いたことがあり、25%が過去1カ月間に聴いたことがあると回答している(米国全体ではそれぞれ52%、37%)。
ニールセンの調査では、回答者の47%が「ポッドキャストに出身国に関連した内容が含まれている」ことが「やや重要」または「非常に重要」と回答している。一方でポッドキャストを聴いていないラテン系米国人の4分の1以上(28%)が、「興味をそそられる話題がないので聴かない」としている。
「白人向け」からの脱却
バーン氏は「ブラックエフェクト(Black Effect)のときと同様に、ラテン系リスナーに焦点を当て、予算を振り分けることにより、この状況を改善できる」と話す。アイハートメディアは2020年秋、ラジオパーソナリティの シャルルマーニュ・ザ・ゴッド氏とともに「ブラックエフェクト」というポッドキャストネットワークをローンチした。現在、ブラックエフェクトの配信する番組数は30近くにまで増えている。「ブラックエフェクトとマイカルチュラは並行して進めているプロジェクトだ。前者の成功が後者の実現を後押しした」と、バーン氏。また、ブラックエフェクトはこれまで1億ダウンロードを達成しており、ペプシやAT&T、ピーコック(Peacock)、ステートファームなどのスポンサーを獲得している。
「データや調査からもわるように、ポッドキャストのリスナーが多様化していることが明らかだ。新たなミニネットワークや独立ネットワークなど、制作者サイドも多様化に向けた動きを進めるのも当然だ」と、ロス氏はいう。
「ポッドキャストはもはや、白人向けのスポーツやコメディ・コンテンツではない」。
[原文:iHeartMedia forms Latinx podcast network to address an underserved audience]
SARA GUAGLIONE(翻訳:SI Japan、編集:小玉明依)