米デジタルメディア企業ジフデービス(Ziff Davis Inc.)のメディア「IGN」は、新たにVRというセクションを新設し、ほかカテゴリーにまたがるコンテンツの量産を見込んでいる。2万2000人の登録者をもつ「IGN」YouTubeチャンネルを新セクションの発展にも活用し、VRの消費人口の増加を期待する。
エンターテインメント情報サイトの「IGN」が、VR(バーチャルリアリティ)というバンドワゴンに乗った。
米デジタルメディア企業ジフデービス(Ziff Davis Inc.)が運営する同サイト。10月13日のプレイステーションVR(PSVR)の発売によって本格普及が期待される、VR専門のバーティカルサイト(カテゴリーサイト)を9月中旬にローンチした。
現在、IGNにとって、VRというトピックは、10種類存在する最重要カテゴリーのひとつだ。同サイトはVR専門チームを特別に作るのではなく、既存のニュース、特集記事、レビュー、ビデオなどの編集部門から人材を集めた。VRはこれらすべてのコンテンツに関わるものだからだ。
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エンタメを飛び越えるVR
「IGNはエンターテインメントサイトなので、VRとは深い関連性がある」と話すのは、IGNのチーフエディター、スティーブ・バッツ氏。「しかし、私はVR導入によって、現在のエンターテインメントが成していることと、VRが我々の生活の新しいエリアにまで広がってきたときに何ができるか、ということの相乗作用にも興味がある」。
たとえば、9月第4週にIGNは、VRチャンネルローンチ記念の一環として、12の特集記事を公開。そのうちの2記事は、ゲームや映画、テレビ番組などのエンターテインメントとは、まったく関係のない内容だ。ひとつは「VRがデートにもたらす変化」について、もうひとつはさらに深く切り込んだ「VRがすでに旅行業界に与えている影響」についてとなっている。今後IGNは毎週、VRのあらゆる側面について検証する社説記事を3〜5記事公開。記事のほとんどに、トピックへ関連したオリジナル動画を付随させるとバッツ氏は話した。
大々的に取り上げたIGNのVRコンテンツは、毎日のニューストピックや最新テクノロジーのレビューカテゴリー、ゲームや動画カテゴリーなど、同サイト内のもっとも重要な場所に掲載される。たとえば、デートや旅行にVRがもたらす影響を特集した記事のすぐ下には、「当初予想よりオキュラスタッチ(VRゲーム用コントローラー)が高価になりそうな件」といったニュースクリップがある。動画に目を向ければ、IGNのレギュラー放送には「[○○]の怖さ」といったシリーズがある。これはVRゲームをプレイしたり、VR動画を見ている人が、どのようなリアクションをとっているかを伝えるもので、ひと味違ったレビューになっている。
YouTube登録は2万2000人
同社は独自にVRと360度動画を使ったツアー企画をスタート。大規模なゲームイベントのPAX Eastをはじめ、ゲーム開発会社のブリザード・エンターテインメントの首脳陣を訪ねるといった、VRと360度動画のツアーを数多く行っている。
動画やゲーム制作スタジオが独自に作成したVR体験もIGNに提供され、IGNのVR専門のYouTubeチャンネルにアップされてきた。5カ月前にローンチされた同チャンネルは、2万2000人の登録者を獲得するまでに成長。IGNがVRコンテンツを配信するにあたって、主要な層だとバッツ氏は語る。
ほかのソーシャルメディアや動画配信プラットフォームの活用については、「マーケットが支持するもの」で決めていくとバッツ氏。「リソースは限られているので、最大のリターンを得られるものに的を絞らなければならない」。
しかし、本当に普及するのか?
とはいっても、現在VRが大々的に宣伝されているとはいえ、通常の動画と同規模になるほど成長するかどうかはいまだ不明だ。しかし、それがパブリッシャーやブランド各社が、VRとのつながりを深めていくブレーキにはならない。ちょうど9月末、タイム社がグラフ雑誌の『LIFE(ライフ)』をVRアプリとして復活させている。
「パブリッシャーにとって、広く普及していないプラットフォームをカバーするのは大変だ。しかし、VRコンテンツの消費人口は増加が見込める。VOD(ビデオ・オンデマンド)サービスのネットフリックス(Netflix)やフールー(Hulu)は従来の常識を打ち砕いてきた。VRも同じ道をたどることができる」と、バッツ氏は語った。