「生き残っただけで 勝利」:コロナ危機への「適応」を急ぐ、独立系パブリッシャーたち

資金力のある支援者をもたず、親会社も、手元資金の用意もない独立系パブリッシャーは、すでに今年の成長をほぼあきらめている。代わりにいまは、戦略をどう工夫すれば生き残れるのか模索するのに必死だ。

スキフト(Skift)、ピンクニュース(PinkNews)、オーガスタス(Augustus)といったパブリッシャーもまた、イベントの中止、広告収入の枯渇、不透明な先行きという、おなじみの試練に直面しており、しかも彼らに失敗できる余地は少ない。「小さいことは美しい」などと言われるが、規模の小さいパブリッシャーはコスト抑制のためにとれる選択肢も限られる。そこで今回は、上記3つの独立系パブリッシャーが現在を生き延びるために、どんな対応策をとっているかをご紹介する。

メンバーシップに代わる寄付モデルをテスト

スキフトは、独立系のB2Bパブリッシャーとして独特の立場に置かれている。売り上げの40%をイベントから得ている一方で、主要な読者層は、目下どこよりも差し迫った苦境に立つ旅行と外食産業の人々だ。

2020年1月1日の時点で、スキフトのCEOラファット・アリ氏は、自社のイベント事業、サブスクリプション、そして買収を前提としたいくつかの成長プランを立てていた。その後、新型コロナウイルスのパンデミックを受け、アリ氏は2020年の売り上げが前年比25%減になると予測した。

同社はイベントを8~9本予定しており、それらは年内での延期が決まっているが、依然として中止の可能性もあると、アリ氏はいう。そこで失われる売り上げを補う選択肢としてバーチャルイベントは魅力的だが、現実のイベントで得られる売り上げと比較した場合、売り上げは「よくいって」対面のイベントの25~30%だろうと同氏は見ている。

スキフトの2019年の売り上げは、40%をブランデッドコンテンツ、40%をイベント、残り20%をサブスクリプションが占めた。キャンペーンが休止または取りやめとなるなか、サブスクリプションがこれまでになく重要度を増していると、アリ氏はいう。

3月にはスキフトへのトラフィックが3倍増を示し、情報が求められているのは間違いない。とはいえ、苦境にある業界の読者を高額なメンバーシップに移行させるのは困難だと、アリ氏は述べている。

同社の「スキフト・リサーチ」(Skift Research)は年間購読料2100ドル(約22万7300円)だが、新たに295ドル(約3万1900円)の月額オプションが追加され、さらにレポート1本からの購入も可能になった。ほかにもメーター制ペイウォールを導入する計画があり、同社は6カ月以上を費やしてそのための技術スタックを構築していたが、計画は棚上げとなった。

「業界が我々をもっとも必要としているときに(ペイウォールを)導入する道理はない」と、アリ氏は述べる。

代わりに同社は、同じ技術を一部転用した寄付のオプションをPRすることにした。アリ氏によると、反応はいまのところ良好で、徐々に寄付が集まりつつあるが、それでも会社を救うには足りないという。

また、新しくはじまったウェビナーのシリーズでは、アクセスに課金するのでなく、視聴者それぞれが払いたい金額を支払える選択肢を設けている。出張旅行をテーマとした3月のウェビナーでは、視聴者が3000人を超え、全員がお金を払ったわけではないが、視聴者から1人あたり平均37ドル(約4000円)の寄付が集まった。

2月初めにスキフトは雇用を凍結し、3月後半には従業員61名のうち3分の1を一時帰休とした。フリーランサーを起用する予算も削減し、またアリ氏によれば、同社オフィスの賃貸契約が7月31日に更新となるが、このまま更新はせず、社の業務をほぼ完全にリモート化することを真剣に検討しているという。

「もし生き残れたら、それだけで勝利だ」と、アリ氏は語った。「もし前年並みをキープできたら、それはもう大勝利だ」。

新たなデジタルプラットフォームに注力

創設15年、ロンドンに拠点を置くLGBT向けのメディアパブリッシャー、ピンクニュースは、同社最大のイベントである10月の「ピンクニュースアワード(PinkNews Awards)」を中止する見通しが高いと、CEOのベンジャミン・コーエン氏は話す。

ピンクニュースは売り上げの15%をイベント事業で得ており、2019年は230万ドル(約2億4900万円)を売り上げ、45万ドル(約4870万円)の利益を上げた。それでも、年初に販売するアワードのスポンサーシップの売り上げが、第2、第3四半期の重要なキャッシュフローになると、コーエン氏はいう。一方、今年は、例年であればこの時期にはもうスポンサー枠が埋まっているはずなのに、いまだ1枠も埋まっていない。

1月と2月はすでに売り上げが下がったとコーエン氏は話す。雇用凍結は予定しておらず、同社は常勤のシニアエグゼクティブ職で3名を募集中だが、最近空いたポストについては代わりの人員を探さず、多くの役職を統合することになる。同社は現在、フルタイムの従業員27名を抱える。

これに伴い、同社が手がける他のイベントやプロジェクトも、多くが中止または無期限休止となっており、それにはプライド関連のキャンペーンやイベントも含まれる。その埋め合わせとして、バーチャル版プライドマーチ「プライド・フォー・オール(Pride For All)」の立ち上げを、来年からこの6月に繰り上げることになり、現在そのスポンサーシップ販売を試みているところだと、コーエン氏は述べている。そのほかにも、自社アプリへの注力を高めており、これにはベンチャー投資家が関心を示しているという。

またピンクニュースは、あるホテル企業と組んでLGBT向けの旅行サイトを立ち上げる計画だったが、新型コロナウイルス危機を受け、そのパートナー企業が参加を休止せざるを得なくなった。

「この6カ月間、いまでは休止となり、おおむねボツになってしまったこれらのプロジェクトに資金を投じていなければ、当社の収益性はもっと高かっただろう」とコーエン氏は話す。「だからといって、ただ手をこまねいていたくはない」。

D2C(Direct to Consumer)プロダクトを開発

創設5年、ドバイに拠点を置くデジタルメディア企業のオーガスタスは、2020年の売上高を400万ドル(約4億3300万円)と予想していた。2019年の売上高280万ドル(約3億300万円)から40%の増加だ。しかし現在、CEOのリッチ・フィッツジェラルド氏は、今年の成長は望めないため、新たなゴールとして売上高を前年並みに維持し、収支をイーブンにして、できるだけ従業員の雇用を守ることを目指すと述べている。

デジタルパブリケーション3つと、ブランデッドコンテンツのスタジオひとつを運営する同社は、すでに3月の売り上げが70%ダウンし、2月の31万1000ドル(約3365万円)から9万ドル(約974万円)に落ち込んでおり、純損失が8万ドル(約866万円)にのぼっているとフィッツジェラルド氏は明かす。今後も数カ月にわたって月2万~3万ドル(約216万~325万円)の損失を計上することになると同氏は見ている。

これを受けてオーガスタスは3月12日、従業員25名のうち4名をレイオフし、残る21名の賃金を15%カットした。

2月のオーガスタスの売り上げは、94%をブランデッドコンテンツが占め、残る6%をディスプレイ広告が占めた。しかし翌3月には、この比率が80対20になり、予想売上目標の24%しか達成できず、到達率も2月は90%だったのが、キャンペーンの中止や休止を受けて18%に急落したとフィッツジェラルド氏は話す。そうしたなかには、映画館チェーンとの10万ドル(約1080万円)の契約もあったが、映画館の閉鎖を受けて計画は中止になったと、同氏は述べている。

そんな同社が現在、主に注力しているのがD2Cプロダクトだ。たとえば、同社のライフスタイルサイト(「Lovin Dubai[ラヴィン・ドバイ]」と「Lovin Saudi[ラヴィン・サウジ]」)のメンバーシッププログラムや、アラビア語のストリーミングサービス「Smashi TV(スマッシーTV)」などがそれにあたる。

「人員を増やしたり、利益の大きい年を当てにしなくてすむ、基礎固め的な仕事はたくさんある」と、フィッツジェラルド氏は述べた。

Kayleigh Barber(原文 / 訳:ガリレオ)