全米広告主協会(Association of National Advertisers、以下ANA)は、ようやく公表したメディアの透明性に関するレポートのなかで、メディア業界が透明性を欠いている原因の多くは業界の複雑な構造にあるとし、そのために悪い慣習が覆い隠されていると述べた。
ところが、米ネット広告業界団体であるインタラクティブ広告協議会(IAB)のCEO、ランドール・ローゼンバーグ氏は、そうした構造になった責任の大半はクライアント自身にあると考えている。テクノロジーに対する専門知識を高め、エージェンシーやアドテクプロバイダーなどすべてのパートナーを管理するのは広告主の責任だ、というのが同氏の見方だ。
全米広告主協会(Association of National Advertisers、以下ANA)は、ようやく公表したメディアの透明性に関するレポートのなかで、メディア業界が透明性を欠いている原因の多くは業界の複雑な構造にあるとし、そのために悪い慣習が覆い隠されていると述べた。
ところが、米ネット広告業界団体であるインタラクティブ広告協議会(IAB)のCEO、ランドール・ローゼンバーグ氏は、そうした構造になった責任の大半はクライアント自身にあると考えている。テクノロジーに対する専門知識を高め、エージェンシーやアドテクプロバイダーなどすべてのパートナーを管理するのは広告主の責任だ、というのが同氏の見方だ。
「この件に関して広告主は、ベンダーや、『ベンダーのベンダー』の役割を把握する責任を意図的に矮小化しているか、低価格を追求するなかで次第に責任逃れすることになってきたかのどちらかだ」とローゼンバーグ氏は、米DIGIDAYが8月5日(米国時間)に公開したポッドキャストのエピソードで語った。
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実際のところ、現在のメディアの世界は複雑化しており、テレビの広告枠を購入すれば簡単にオーディエンスにリーチできた時代に戻ることはない。いまや、テクノロジーを使いこなすことは広告の仕事の一部であり、そうした取り組みをマーケターがアウトソースすることはできないのだ。
「問題はまず、メジャーブランドのマーケターが、上級レベルのテクノロジーの専門家を社内で育てることに乗り気でないことにある。彼らからの後押しが不可欠だ」と、ローゼンバーグ氏は語る。
ポッドキャストのインタビューの抜粋を以下にまとめた。わかりやすくするため、テキストには補足説明等を加えてある。
デジタルメディアのオープン性の良いこと悪いこと
インターネット広告業界が登場したのは、オープンなインターネットがあったからこそだ。このオープン性のおかげで、誰もが店舗を開き、メディア企業を立ち上げ、オーディエンスにリーチできた。だが、オープンなシステムは、多くのマイナス面ももたらした。詐欺、ウイルス、悪意をもった人たちだ。そうした状況を考えれば、広告費が少数のトッププレイヤーに集まる傾向が見られるのも当然だと指摘する。
「中間点に戻る現象が現在起こっている」とローゼンバーグ氏。「少数のプレイヤーへの依存が見られる理由のひとつは、彼らが安全な選択肢を求めていることにある。かつてはIBMの広告を買っていれば誰も解雇されることはなかった。いまは、GoogleやFacebookの広告を買っていれば誰も解雇されないはずだ」。
だがそれは、現在の状況が永遠に続くことを意味しない。何といっても、1950年代には3大テレビ局がテレビ広告を事実上100%握っていたが、そうした状況はすでにない。「メディアの歴史を見れば、集中化が進む傾向がある」とローゼンバーグCEOはいう。「だが、歴史が示しているように、政府やテクノロジーは、そうした状況を変えて寡占状態をひっくり返すことができる。寡占状態というのは少し大げさに言い立てられ、誇張されているということだ」。
パブリッシャーはGoogleやFacebookに対抗できる力がある
新たなデジタル広告支出の4分の3が、GoogleとFacebookに吸い上げられていると、現在よく話題になる。だが、同氏は消費者に関する大量のデータをうまく活用すれば、パブリッシャーたちは「残り物を奪い合う状況」から逃れられるという。パブリッシャーがデータをめぐる競争で太刀打ちできないとする考え方は、「バカげている」と断言する。
「インターネットで運営されているサービスはどれも、自社のオーディエンスに関する相当な量のデータをサイトから得ている。これは、1985年の独立系雑誌出版社が、タイム(Time Inc.)やハースト・マガジンズ(Hearst Magazines)、コンデナスト(Condé Nast)などに対抗できたのと、同じ状況だ」。
アドブロックソフトウェアの業者は「泥棒」同然
ローゼンバーグ氏は、広告に関して広告主とパブリッシャーは、いまよりもっとUXに注力する必要があると述べる一方で、営利目的のアドブロックソフトウェアメーカーのことは忌み嫌う。アドブロック業者を、「卑しい人種」や「不当利得者」というような言葉で声高に非難している。こうした激しい言葉遣いは、一部の人たちには過激すぎる印象を与えているが、ローゼンバーグ氏は口撃を緩めるつもりはない。
「彼らは泥棒だ。正当な商取引で発生した費用を流用することを狙って、営利目的のビジネスを作り出すというのは、定義からいっても完全な泥棒だ。法的な判断は裁判所に任せるしかないが、道徳的かつ倫理的な観点から彼らは常軌を逸しており、身動きが取れないようにしなければならない。ドイツやイスラエルにいる、悪意をもった愚かな皮肉屋が、パブリッシャーから金を盗み取ろうとしているというだけの話だ」。
アドブロックユーザーのブロックは「効果的」?
IABはアドブロック対策について、ふたつの手段でアプローチすることをパブリッシャーに求めている。ひとつは「ディール(DEAL)」と呼ばれるもので、アドブロックを利用しているビジターの数を調べたうえで、彼らに対してアドブロックを無効にしなければアクセスを制限すると伝えること。
もうひとつはユーザー体験の質を高めることで、できるだけ動作が軽く、押し付けがましくない広告に取り組むということだ。ローゼンバーグ氏によれば、「ディール」の基準は厳しいが、見込みは大いにあるという。アドブロック利用者にその機能を無効にしてもらえる確率は40~60%あるそうだ。
「アドブロックソフトウェアを利用する一部の強硬な消費者は、どのような状況でもアドブロックを無効にしない傾向がある。彼らはほかのメディアにとってもリーチが難しいオーディエンスでもあり、つまり若者であることが多い」と、ローゼンバーグ氏。
パブリッシャーはUXの質の低さを他社のせいにはできない
パブリッシャーは、彼らが直面している問題があまりに多すぎて、もはや制御不能だと考えるかもしれない。収益をなんとかあげていくために、デジタル広告は第三者を頼らないといけないからだ。だが、これは言い訳に過ぎないと同氏はいう。パブリッシャーはサイトで管理している広告だけでなく、サプライヤーの提供する広告の改善についての責任もあると、ローゼンバーグ氏は確信している。
「パブリッシャーには、自社と契約するサプライヤーに対して責任がある。業界全体でそれを解決していくべきだ」。
Brian Morrissey(原文 / 訳:ガリレオ)