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「待たされるのはかまわない」:メディア企業社員は、オフィス再開延期をどう思ってるか?

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新型コロナウイルスのデルタ型変異株が米国全土で猛威を振るい、感染者が急増していることから、8月上旬に多くのメディア企業が当初予定していたオフィス勤務の再開を延期した。

米DIGIDAYは、その件について複数のパブリッシャーの従業員7人から話を聞いたが、オフィスの再開を遅らせるという会社の決定に、彼らは必ずしも衝撃を受けていない。それどころか、匿名で取材に応じたあるNPRの従業員は、延期を決めたパブリッシャーが思いのほか少ないことに驚いていた。

まずは要点をまとめると、以下のようになる。

  1. バイアコムCBS(ViacomCBS)のボブ・バキッシュ最高経営責任者(CEO)は、スタッフに宛てた8月4日付けの社内文書を通じて、同社のオフィス勤務再開が早くても10月18日以降になることを表明した。
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  3. 8月4日、ポリティコ(Politico)は、9月7日に予定していたオフィスの再開を一時中断すると発表した。新たな再開予定日は発表されていない。
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  5. 8月3日、ワシントン・ポスト(The Washington Post)は、オフィス勤務再開の期限を9月13日から10月18日に延期すると発表した(この発表に先だつ7月27日、同紙は全従業員に対してワクチン接種の義務化を伝えている。宗教上または健康上の理由で接種を受けられない者を除き、9月13日までに接種を完了するよう通告した)。
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  7. ニューヨーク・タイムズ(The New York Times:NYT)は、オフィス勤務再開の「無期延期」を決定した。(自主的に出社したい従業員にはオフィスへの立ち入りを許可するが、ワクチン接種証明書の提示が必要となる)。
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  9. NPRはオフィス勤務再開を10月17日に先送りした。
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  11. グループナイン(Group Nine)では、従業員への出社要請は最短でも10月半ば以降で、オフィス再開の30日前までに通知するとしている。追加の準備期間が必要な従業員には、さらに60日間の猶予期間を認める予定という。

再開期日の未設定が主流

ポリティコの記者が米DIGIDAYに語ったところによると、同僚たちのあいだでは、デルタ株の感染拡大を考えれば、オフィス勤務の再開を保留するという同社の決定はおおむね妥当だと受けとめられている。また、同記者によると、ポリティコの経営陣にとっては、ハイブリッドな労働環境を整えるための時間稼ぎともなるだろうという。

ただし、このポリティコの記者は、経営陣が「年内には従業員をオフィス勤務に復帰させるだろう」と見ている。同記者はオフィスに戻る準備は「十二分にできている」と話す。「安全さえ確保されるなら、ほとんどの人がオフィス勤務の再開を歓迎している」。

もちろん、オフィス勤務の再開に賛成の者ばかりではない。NYTの編集者であるエイドリアナ・バルサモ-ガリーナ氏はこう述べている。「NYTは週3日のオフィス勤務を計画しており、実施にあたっては4週間の猶予期間を設けるという。しかしパンデミックの勃発以来、我々は新しい日常を作り上げてきた。出社中心の生活に戻すのに、4週間はあまりに短い」。

NYTの広報担当者はこうコメントしている。「コロナ禍には当初より『柔軟に』対応してきた。引き続き、あらゆる行動や決定において、従業員のニーズを常に考慮する考えだ。オフィス勤務の再開についても、『最低4週間前』には通知する。従業員とはできるだけ多くの情報を共有し、十分な準備を促したい」。

バルサモ-ガリーナ氏は、年内の強制的なオフィス復帰は、全従業員の都合に適うものではないと考えている。この1年半、従業員の私生活には、転居を含め、大きな変化があった。「1年半をかけて現在の生活を作り上げたのだから、元に戻すのにもそれなりの時間がかかる」。

ポリティコも、NYTと同様に、オフィス再開の新しい期日を設定していない。ポリティコの創業者で発行人のロバート・オールブリトン氏は、スタッフに宛てた8月4日付けの社内文書でこう述べている。「状況はいまだ流動的で、オフィス再開の新たな期日を設定することに意味があるとは思えない」。ポリティコはオフィス再開の最低30日前には従業員に通知するとしている。

ワシントン・ポストの独自路線

ワシントン・ポストは、オフィス勤務再開の計画を無期限で延期したNYTとは異なり、新たな期日を10月半ばに設定したが、このことについて、同紙のある従業員は皮肉交じりに「興味深い」と評した。この従業員は、自社の対応について、(オフィスの閉鎖から段階的な再開まで)メディア企業に見られる横並びの対応とは「明らかに一線を画する」と述べている。ポスト紙にコメントを求めたが、本稿の投稿時点で、回答は得られていない。

ポリティコの別の従業員は、オフィス再開の延期という他社の決定を見るにつけ、ポリティコでも同様の対応をしてほしいと期待していたという。この従業員は特に、デルタ株の感染拡大を懸念していた。ポリティコがオフィスの再開時にワクチン接種証明書の提示を義務化すると聞いて、心底ほっとしたという(オールブリトン氏はさきの社内文書を通じて、「8月9日以降、ポリティコのロズリンとニューヨークの両オフィスへの立ち入りには、ワクチン接種とマスクの着用を義務づける」と通告している)。

「責任ある決定だと思う」とこの従業員は述べている。「同僚たちにはすぐにでも会いたいが、まずは安全が第一だ。あと少しくらい待つのはかまわない」。

前出のワシントン・ポストの従業員は、この数週間、オフィス再開の延期はいつ発表されてもおかしくないと思っていた。この従業員によると、メディア企業の経営陣のあいだには、オフィス勤務の再開を模索する一方で、なかなか収束しないコロナ禍に、どう対処すべきか困惑する様子がうかがえるという。当面の出社頻度をどの程度に定めるか、オフィスの全面再開をいつにするかなど、明確に決めているメディア企業は多くない。それというのも、「すべての従業員がオフィスに戻りたがっているわけではない」からだという。取材に応じた従業員も、「戻りたいかと問われれば、ちょっと微妙だ」と本音をのぞかせた。

一方、労働組合の動きは

NYTでシニアアナリティクスマネジャーの肩書きを持つキャシー・ジャン氏は、「このパンデミックがある程度収束するまで」オフィス勤務の再開を延期するという決定を歓迎すると述べている。

一方、労働組合は、この問題について、パブリッシャー各社の経営陣に交渉のテーブルにつくよう強く働きかけている。たとえば、NYTをはじめ、ニューヨークマガジン(New York Magazine)、デイリービースト(The Daily Beast)、ニューヨーカー(The New Yorker)などの労働者が加盟するニュースギルド・オブ・ニューヨーク(NewsGuild of New York)は、7月31日に発した声明で次のように述べている。「オフィス勤務の再開は、現状維持に関わる問題であり、必須の交渉事案と考える。つまり、雇用者は、オフィス勤務再開の諸条件、および出社に伴う健康と安全に関する対策について、当組合と事前に交渉することなく、当組合の構成員に出社を強制することはできない」。なお、NYTの労組であるタイムズギルド(Times Guild)は、9月に予定されていたオフィス再開を取り消すというNYTの決定に、一定の役割を果たしたと主張している。

NYTのジャン氏は労使の交渉について、こう期待を述べた。「この声明を機に、NYTの同僚たちが提出した柔軟な働き方に関する提案について、経営陣が組合側と誠実に交渉してくれることを望む」。

[原文:‘I don’t mind waiting’: How employees feel about media companies’ office reopening delays

SARA GUAGLIONE(翻訳:英じゅんこ、編集:長田真)