17カ国展開するハフポストは、各国の連携をさらに緊密にしようとしている。これは簡単な課題ではない。ハフポストは世界展開のために、一部現地の組織と提携しているからだ。そこで、ポリティコ・ヨーロッパ(Politico Europe)の編集者でニューヨーク在住のルイーズ・ロウ氏を国際ディレクターとして採用した。
ハフィントン・ポスト(以下、ハフポスト)は、より統合された世界的なニュースルームになるというミッションを、1歩先に進めた。
17のエディションで展開しているハフポストは、世界的な関心の集まる記事については、各ニュースルームをさらに緊密に連携させようとしている。そこで、この編集方針を実施するにあたって、ポリティコ・ヨーロッパ(Politico Europe)の編集者でニューヨーク在住のルイーズ・ロウ氏を国際ディレクターとして採用した。これは簡単な課題ではない。ハフポストは世界展開のために、現地の組織と提携を重ねているからだ。
世界的な移民の危機、テクノロジーの変化による雇用の変質、民族ナショナリズムの台頭、気候変動といったニュースはいずれも、ハフポストが地域を超えて協力を強め、編集に取り組みたいと考えているニュース分野だ。
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グローバル展開の課題
その規模の大きさにもかかわらず、ハフポストはすべてのパブリッシャーと同じようなビジネスモデルの圧力に直面しており、編集による報道の差別化は維持しなければならない。ハフポストの編集長、リディア・ポルグリーン氏は、「従来からある大きな出版社から新しいデジタルの新興企業に来た人はみんな、デジタル広告の価格が下降を続けるなかで、ジャーナリズムを支える方法を見つけようと懸命だ。だから、報道のインパクトと充実度を高める必要がある」と語った。
ハフポストは世界中に広く展開しているが、その一部は現地のパブリッシャーとの提携によるものだ。フランス(ル・モンド[Le Monde])、スペイン(プリサ[PRISA])、日本(朝日新聞)は、そうしたモデルとなっている一方、ハフポストUK、ハフポスト・カナダ、そしてハフポスト・ブラジルは、ハフポストの完全子会社だ。
「我々は(各ニュースルームを)さらに一体化したいが、その際、各市場に特有の現地の感覚を失いたくはない。直面している大きな課題のひとつに、ジャーナリズムの言葉とスタイルが市場ごとに違うことがある」とポルグリーン氏は言う。非英語の10のエディションと同じように、英語の各エディションについてもこれが言える。「英国のジャーナリズムには米国の我々が使わない、守りたい言い回しがある」と同氏は語った。
ロウ氏に期待される仕事
ロウ氏は5月30日に就任し、6月には自分の直属となる各国エディションの編集長17人と会う。就任後は、どんな記事が掲載されているのかを常に把握しておくため、各エディションの編集者たちと定期的に話をしていく。また、非英語版からの高速翻訳のシステムも準備されることになっている。たとえば韓国の日刊紙であるハンギョレ(Hankyoreh)と提携している韓国版に重要な記事があれば、米国の通信社の記事に頼ることなく、韓国版に掲載された詳細な編集コンテンツを米国版で利用できるというわけだ。
ハフポストのすべてのジャーナリストから集めたリソースをプールして必要な分析を提供し、動画記事でもテキスト記事でもまとまりのあるグローバルな記事を作るのが狙いだ。そのうえで、それぞれの市場にもっとも適した現地の感覚と観点を加えて、各国のエディションにカスタマイズする。
「大事なのは世界中のオーディエンスに届けるジャーナリズムの質の向上だ」と、ポルグリーン氏は言う。ロウ氏はデンマーク人で、英語以外にドイツ語など複数の言語に精通している。ポルグリーン氏は、ロウ氏について、「ルイーズが編集にもたらすリーダーシップによって、より野心的なプロジェクトを実施できるだろう。世界に広がる民族ナショナリズムの状況について詳しく知りたければ、ルイーズが、たとえばオーストラリア、日本、インドの編集者たちと密接に連絡を取り、それぞれの状況と体験を活かした記事を依頼する。それを受けた各ジャーナリストが、共同でそれに取り組む」と語る。
ハフポストのめざす未来
ベライゾン(Verizon)の傘下に入ったことで、モバイルなどの分野で新しい配信手法が出てくるだろう。ハフポストはそれを各国のエディションに利用できる。しかし、その詳細はまだ明らかになっていない。ポルグリーン氏は、「通信事業者とコンテンツ企業の関係としては面白いものであり、コンテンツ配信の新しい方法が見つかるだろう。AOLと米ヤフーというプラットフォームの力が加わることで、メディア有数の配信力がすぐに手に入る」と語った。
創設者のアリアナ・ハフィントン氏のリーダーシップの下では、2010年代の終わりまでにハフポストを50カ国に拡大することをめざしていた。そのハフィントン氏は昨年、会社を去った。ポルグリーン氏は、世界進出は続けるが、量ではなく質が戦略の土台になるように、ゆっくりと着実に進めていくと語った。
新しいフォーマットや製品の実験は、さまざまな期待とプレッシャーが渦巻く米国の本体よりも、各国の小さなチームの方がやりやすいことが多い。ハフポストは現在、これを活かして強みにすることをめざしている。たとえば、モバイル製品の展開は韓国と日本が米国より進んでおり、動画の実験はドイツがリードしている。また、気候変動に関するマルチメディア報道はオーストラリアがリードしているが、ポルグリーン氏はより統一的なニュースルームの仕組みをこれに活用したいと考えている。
「市場によってノウハウは異なるので、イノベーションは至るところで生まれるという考え方を受け入れ、素晴らしいアイデアとイノベーションは本体の専売品だと決めてかからないことが重要だ」と、ポルグリーン氏は言う。「各エディションが独自の個性と文化を持ち、米国と似たり寄ったりの表現にならないように促している」。
Jessica Davies (原文 / 訳:ガリレオ)