ハフィントンポストは、無報酬の寄稿者ネットワーク拡大を謳った、プラットフォーム戦略の変更により、ブロガーの反発に直面している。彼らが問題としているのは、自分の投稿に目をとめてもらうために、自分自身でプロモーションしなければならないことだ。「無報酬なのにもっと働かされるようになる」と、とあるブロガーは訴える。
ハフィントン・ポストは、無報酬の寄稿者ネットワーク拡大を謳った、プラットフォーム戦略の変更により、ブロガーの反発に直面している。
昨年から、寄稿者数を10万人から100万人に拡大すると標榜するハフィントン・ポスト。その高い目標を達成するために、同サイトはアテナ(Athena)と名づけられた、新しいCMS(コンテンツ管理システム)を導入した。これにより寄稿者は、ハフィントン・ポストにコンテンツを直接公開し、従来の検査プロセスを回避することが可能になる。
多くのブロガーが問題と感じるのは、自分の投稿に目をとめてもらうために、自身でプロモーションしなければならないことだ。「最終的にブロガーたちは、新しいハフィントン・ポストプラットフォームによって、無報酬なのにもっと働かされるようになる」と、グロースマーケターとして自らをピッチしているブロガーのアニー・シンガー氏は書いている。
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別のブロガーで、リレーションシップ、女性問題、その他の話題について執筆しているミッシェル・ザンダー氏は、かつてはハフィントン・ポストで頻繁に取り上げてもらっていた。それに関連して露出が増え、信頼も得ていたという。「アテナの稼働以来、投稿を取り上げてもらうことがより困難になったことは間違いない」と、彼女は語る。同氏は、ハフィントン・ポストの寄稿者を辞めるつもりはないが、ユアタンゴ(YourTango)、サロン(Salon)、ステップパレントマガジン(Stepparent Magazine)などのサイトに比重を移していくという。
ソーシャルへ移行するため
ハフィントン・ポストは、デジタル時代に急速に成長する手法として、無報酬の寄稿者モデルの確立に一役買い、膨大なオーディエンス構築を助けた。その寄稿者ネットワークは、月間7500万人強といわれるハフィントン・ポストのオーディエンスの約15%を供給しているという(米国:コムストア)。
しかし、規模に基づいたモデルを追求することでトラフィック増加を助ける業務がおざなりになる。というのも、フォーブス(Forbes)、ソートカタログ(Thought Catalog)、ミディアム(Medium)といったほかのメディア企業がそのプラットフォームパブリッシングモデルをすぐに模倣する一方で、別のデジタルパブリッシャーは、そのトラフィックとソーシャルグロースハッキング術に目を向けるようになっていたのだ。
ハフィントン・ポストのエグゼクティブ・コントリビューター・エディターであるブライアン・メイジャー氏は、寄稿者プロセスの刷新は、寄稿者の「体験を合理化、モダナイズ」する目的があるという。よりさまざまな人の声を拾いあげるために、プラットフォームを開放し、これらの記事のトラフィック主要ソースとして、ソーシャルへの移行を狙っている。ハフィントン・ポストは「過去1年間に数万人の新規寄稿者を招き」、アクティブな寄稿者数と公開された記事の合計数は、その改革が行われてから対前月比で堅実に成長していると、メイジャー氏は語る。しかし、彼は具体的には何も述べなかった。
無報酬に憤るブロガーたち
だが、ルールの変更に対する多くのブロガー、つまりはじめから無報酬ということに不満をもっていた人間の賛同は得られていない。その多くは、同社が面倒な仕事を彼らに押しつけるための方策と受けとめている。ある者はほかの配信手段に目を向けたり、そこでの記事公開をやめてしまっている。
「ブロガーの反応はさまざまだが、私が感じている全体的な雰囲気は怒りに満ちている」と、ママブロガーのキャンディス・ヒダルゴ氏はいう。「この変更の前でさえ、無報酬であることから、ハフィントン・ポストのために記事を書く『意味がある』のかどうかについて、ブログコミュニティでは意見の対立があった。だから、どの投稿が特集されるかについて、彼らがより選択的になっているいま、多くのブロガーはそれに完全に背を向けてしまったのだ」。
匿名を条件に話をしてくれた別のブロガーは、露出とトラフィックの時代に終わりがくることを恐れながら、新しいシステムへの不満を露わにした。寄稿者が投稿に目を向けてもらうための努力をしなければならないだけでなく、このブロガーの投稿は注目されるようになるまで検索結果にも表示さなかった。つまり、ほかの貴重なトラフィックソースが断たれてしまったと、このブロガーは不平を漏らしている。
「私はしばしば、フィーチャード・ブロガーに選ばれてきて、それは幸運だった。素晴らしいことだ」と、この人物は述べる。読者が、無報酬で貢献している人間を、報酬を得ているスタッフと混同する可能性がある同サイトで、コンテンツの表示方法から寄稿者は恩恵を得ていたといった。「人は誰がスタッフなのか、誰が誰なのか分からず、それは隠されている」。
寄稿者が露出を増やすには、自身のソーシャルフォロワー向けに自分の投稿を宣伝することが唯一の方法になっていると、このブロガーはいう。しかし、自分のサイトにトラフィックを呼び戻すことにこだわる多くの寄稿者にとって、それは、彼らのフォロワーに対して、同じコンテンツを二度宣伝することを意味する。一度は自分の個人的なソーシャルサイトで、そしてもう一度はハフィントン・ポストに。「投稿が人の目に触れるようにする方法が、自分のソーシャルページだけである場合、その効果は非常に限られている。我々のような無力な人間には、悪戦苦闘を強いられる」。
発想を変えて賢く利用
しかしヒダルゴ氏は、ブロガーたちはあまり早々にあきらめるべきではないという。ハフィントン・ポストは読者たちの信頼を失っていないので、そこに掲載することは名誉の印であることには変わりがない。マーケティングに精通しているブロガーにとって変化は歓迎するべきことであり、彼らが必要とするライティングスキルを磨く手段になる。
シンガー氏はハフィントン・ポストへの記事公開を止めていないが、より戦略的に、自身の最新コンテンツをそこに投稿し、それを書き直すために利用している。「自分のコンテンツが新たなオーディエンスに到達したり、フォローを推奨するバックリンクを生み出すことは、もはや保証されていない」と、彼女は語る。「しかし、ブランドの手が及ばない、ニッチコンテンツにとって、商用ではないプラットフォームとして依然として力をもっているのだ」。