2015年初頭、ニュースメディア「NowThis」はPCサイトを閉鎖し、各プラットフォームをベースにした、分散型コンテンツ戦略を実施した。各プラットフォームの仕様に合わせた動画コンテンツ作りでオーディエンスの心をつかむ。
異なる複数のプラットフォームで展開されるのは、それぞれの特性に合わせた短尺の動画ニュースがメイン。いまだにモバイルサイトとアプリは残してあるものの、Facebook、Twitter、インスタグラム、Tumblr、Snapchatなどに、1日あたり50本から60本のニュースコンテンツを「直接」配信している。アメリカでの同性婚合法化のニュースを例に、「NowThis」の新しい試みを紹介する。
2015年初頭、ニュースメディア「NowThis」は、前代未聞の施策を試みた。PCサイトを閉鎖し、各プラットフォームをベースにした、分散型コンテンツ戦略を実施したのだ。
異なる複数のプラットフォームで展開されるのは、それぞれの特性に合わせた短尺の動画ニュースがメイン。いまだにモバイルサイトとアプリは残してあるものの、Facebook、Twitter、インスタグラム、Tumblr、Snapchatなどに、1日あたり50本から60本のニュースコンテンツを「直接」配信している。
同社の運営戦略とパートナーシップ部門の上席部長であるエイサン・ステファノポウロス氏によれば、「NowThis」は「製作した1本の動画を、インスタグラム用に15秒へ再編集したり、Vine投稿向けに6秒へカットするようなことはしない」という。「あえて各プラットフォームに合わせた、最適な見栄えのビデオニュースを製作し、それぞれ独自に配信している」。
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実際に、この戦略はうまく行っているようだ。2014年の夏、「NowThis」はすべてのプラットフォームを通じて、平均で約100万人/月程度のオーディエンスを保有していたが、2015年7月にその数は、4億2000万人まで膨れ上がっている。
ステファノポウロス氏は今回、#LoveWinsという複数のプラットフォームで大々的に取り上げた、同性婚が合法化されたことに対する、アメリカのキャンペーンのニュースが、「NowThis」の各SNSアカウントで、どのように配信されたかを教えてくれた。
「NowThis」のFacebookアカウントのファンは、現在140万人。「NowThis」の最大かつ、もっともエンゲージメントの高いプラットフォームだ。7月には、ビデオマーケティングプラットフォーム企業チュバラー・ラボ(Tubular Labs)の動画アナリストが、「NowThis」を「BuzzFeed Video」と「BuzzFeed Food」に次いで、「Facebookでもっとも閲覧されている動画パブリッシャー」第3位にランク付けした。実質上ニュースジャンルのトップである。
「NowThis」の#LoveWinsのニュースは、再生開始時にはミュート(消音)状態となっている、Facebookの自動動画再生に対応してある。ステファノポウロス氏は「視覚的にニュースを消費でき、かつ躍動感がある。私たちが制作するニュースビデオのすべては、フルスクリーンや音声をオンにしなくとも理解できるようになっているのだ」と語る。Facebookに投稿する動画は、通常30秒から45秒の間だが、#LoveWinsのビデオは31秒。シェアを促すように感情的なトーンを表現している。
Same-sex marriage is now legal in all 50 states
Posted by NowThis on Friday, June 26, 2015
現在、同性結婚は50の州で法的に認められている
2015年6月26日(金)にNowThisにより投稿
37万人のフォロワーがいる、「NowThis」のTwitterアカウント。ここには古くからのオーディエンスも多く含まれるという。Twitterは、速報やイベントニュースに最適で、リアルタイム配信が目的のため、1日に30回ほどの投稿を行っている。なお、Twitterにおける#LoveWinsの報道は、1分半という「NowThis」にしては尺の長いニュースビデオが投稿された。ビデオの内容は、騒いでいる人たちが判決についての感想を直接カメラに話しているもの。さらにこのビデオは、「ペリスコープ(Periscope)」というライブ動画配信プラットフォームでもストリーミングされた。
We talked to people celebrating outside Stonewall yesterday: http://t.co/vEKCNZNtZs
— NowThis (@nowthisnews) 2015, 6月 28
ストーンウォールで祝っている人たちに話を聞いた。
Vine
Vineでは、6秒間のビデオが基本ミュート状態でループされるため、物事を素早く伝えなくてはならない。「クリエイターは時間内で物事を伝えるために、より一層の想像力を求められる」と、ステファノポウロス氏は話す。「NowThis」の動画は独創性とユーモアに重点が置かれていることは確かだ。これが34万3000人のフォロワーを魅きつけた戦略である。最高裁判所が判決を出した後、「NowThis」は大勢の人が祝う様子と、アメリカ全州の地図と組み合わせた、カラフルなショートビデオをVineに投稿した。
「インスタグラムはもともと写真を投稿するために作られたものなので、動画を投稿するには難しいプラットフォームだ」と、ステファノポウロス氏。「NowThis」には短い動画制作のノウハウはあるものの、インスタグラムは15秒も尺があるため、その仕様に合わせた#LoveWinsの投稿は、頭を悩ませたようだった。
また、ニュースを投稿するには、インスタグラムはあまり最適なプラットフォームではない可能性があるという。そのため、「NowThis」がインスタグラムに投稿する数は、他のプラットフォームと比べて、もっとも少ない。これは物議をかもすかもしれない動画でフィードを埋め尽くし、15万8000人のフォロワーに嫌悪感を抱かせる危険を防ぐためだという。インスタグラムに適したコンテンツは、サイエンス、テクノロジー、また技術的な進歩に関するトピックだと、ステファノポウロス氏は話す。
5対4の判決で、アメリカ合衆国での同性結婚は認められた #pride NowThisにより写真を投稿(@nowthisnews) 2015年6月26日 7:11AM
Snapchat
フォロワー数を明確にしないものの、SnapchatのアカウントはFacebookに次いで、もっとも成長が見られるプラットフォームだと、ステファノポウロス氏は話す。「Snapchatユーザー向けのコンテンツを製作する機会を手にした。しかし、タテ型動画と絵を描く機能に関して、従来のフォーマットとまったく異なるプラットフォームだ」と述べている。最近のSnapchatのニュースでは、12の写真でイランの政策を説明した動画がもっとも多くのフィードバックを獲得した。同氏は「私たちが目指しているものは、そのプラットフォームにもっとも適したコンテンツを製作し続けることだ」と、あくまでコンテンツ作りの重要性を強調した。
Rachel Raudenbush(原文/訳:小嶋太一郎)
Image from NowThis Facebook