BuzzFeed創業者兼CEO、ジョナ・ペレッティ氏は、話題になるニュース配信について、単にビジネスの拡大を狙っているだけではなく、世間に与えるインパクトについて考えていると主張する。いまもっとも注目度の高いメディアは、その運営方法をもとにパブリッシャーが心に留めるべき見識を紹介する。
本当に意味のある視聴測定の指標とは、また、誰がニュースを作っていくのか等、業界側の人間だけでなく、ニュース消費するオーディエンス側にも問題意識を提起している。
「BuzzFeed」は2015年11月、月間のコンテンツ視聴数が50億ビューに達したことを、同社創業者兼CEOのジョナ・ペレッティ氏が「BuzzFeed blog」にて明らかにした。これは「BuzzFeed」のWebサイトとアプリ、そしてソーシャルチャンネルを合わせたトータルの数字だ。好き嫌いはあろうが、いずれにせよ、パブリッシャーたちにとって無視できないメディアであるのは間違いない。
「BuzzFeed」の成功は、もっともユーザーに開かれたプラットフォームの活用を見分けてきたことだろう。2015年5月、「BuzzFeed」はFacebookへのビデオ配信を開始した。アナリティクス企業タビューラー・ラボ(Tubular Labs)によると、現在、Facebookにおける「BuzzFeed」のビデオ投稿の平均視聴数は、280万回/日となっている。タビューラー・ラボが集計するFacebookでもっとも視聴されたクリエイター・リストで、「BuzzFeed」が1位になることもしばしばあるという。
2015年11月12日、ロンドンで代理店マインドシェア(Mindshare)が主催したイベント「ハドル」。そこで「BuzzFeed」創業者兼CEOのジョナ・ペレッティ氏(TOP画像)は、いままで「BuzzFeed」運営から学んできたことを、ほかのパブリッシャーのためにシェアすることを考えていると語った。
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ペレッティ氏は、単にビジネスの拡大を狙っているだけではなく、世間に与える「インパクト」について考えていると主張。今回は、「BuzzFeed」がこれまで得てきた見識を、パブリッシャー向けに紹介する。
いまなお確たる測定手段はない
インプレッションやCPM、CTR、ソーシャルでのシェアやメディアの使用時間すらも、完璧な測定手段ではないとペレッティ氏は語る。「我々がもっとも気にかけているのは、ユーザーへのインパクトだ」。
世間になんらかの行動を喚起するようなニュースについてレポートしたとき、その与えるインパクトで「BuzzFeed」の右にでるメディアはないだろう。たとえば2014年、「BuzzFeed ニュース」では、とある教師の生徒に対する淫行を暴露するニュースを発信した。最終的にこのニュースは、犯罪捜査にまで発展する。
「このニュースにおける広告的価値を測定するのは難しいが、発信することに意味がある」とペレッティ氏。続けて「我々は記事が配信された後、世間にどんなインパクトを与えたのか、多大な時間を使ってフォローアップする調査を行っている。マニュアルのため時間はかかるが、だからこそ、より効果的な測定方法を見つけることもできる。そのおかげで、さらにインパクトを与えるニュースのパターンを掴むこともあるのだ」と話した。
読者は何を「ニュース」にすべきか発信すべし
「BuzzFeed」のニュースの大半は、結婚の平等性や、大学キャンパスでの性的暴行など、ほかのパブリッシャーが取材しないようなトピックスに力を入れている。オーディエンスは、何をニュースとして発信されるべきか、もっと声を上げて主張すべきだという。「オーディエンスとレポーターとの対話は、今後増えるだろう」と、ペレッティ氏は予測する。
さらに「向こう3年から5年以内に、既存のトラディッショナルメディアが道徳的優位性をもっているのは当たり前という感覚や、200年の老舗報道機関の編集者が、語るべきニュースについて報道するというスタンスは、世間からなくなるだろう。このような流れが、今後さらに重要になりつつある。ますます報道機関が世間から批判されることになるだろうが、良い傾向だと思う」と、同氏は述べた。
アドネットワークは読者のことなど考えていない
「パブリッシャーのサイトを儲けさせてくれる人たちは、パブリッシャーのオーディエンスについては考えていない。そこには異様なズレが残るのだ」とペレッティ氏。サードパーティのアドネットワークを使うと、悲惨な体験を招いてしまう。モバイルだと特にそうだ。そして、そのような悲惨な体験が、ユーザーをアドブロックに走らせる要因となるのだろう。
広告業界には言葉を巡る問題がある
「コンテンツ」という言葉を心から愛している人などいない。なぜなら広告業界には語源を巡る問題があるからだと、ペレッティ氏は指摘する。
「広告は観るだけの価値があるべきであり、無理に観ることを強いるべきではない。我々はそこから話しはじめなければならない。『バイラル』というワードも、まるで「観なければならない」とユーザーへプレッシャーを与えるような言葉にしてしまった。そしていま、『コンテンツ』というワードも同じ運命を辿ろうとしている」と、広告業界がもっとも敏感な問題についても同氏が言及したことは、今後大きな意味があるだろう。
Lucinda Southern(原文 / 訳:南如水)
Photo by Max Morse(CreativeCommon)