CNNインターナショナルはデジタル広告の進化に取り組んできた。目標はバナー広告のクリックベースから離れてブランデッドコンテンツによる収益を増強することで、最終的にはメディアパートナーとして広告主に広告を通してマーケティングのインサイトも提供できるようになることだ。
CNNインターナショナルの社内クリエイティブエージェンシー、CNNクリエイト(CNN Create)によると、ブランデッドコンテンツを取り込んだ事業は、全収益の54%となっている。CNNクリエイトは現在20人の正社員を抱えており、彼らは通常のビデオ制作、CNNの自らのチャンネル内で公開される編集映像、そしてFacebookやSnapchat上での360度動画といったオフサイトのコンテンツまで幅広く制作を担当。
創立9年のエージェンシーが今年に入ってより生産性を高めた要因として、最新式のデータモニターサービスがある。「エイム」と呼ばれるこのサービスは7ヶ月前にローンチされ、いまでは全クライアントのオンサイト、オフサイト両方のキャンペーンで活用されている。
CNNインターナショナルはデジタル広告の進化に取り組んできた。目標はバナー広告のクリックベースから離れて、ブランデッドコンテンツによる収益を増強することだ。そして、その最終目標は、メディアパートナーとして広告主に広告を通して、マーケティングのインサイトも提供できるようになることである。
この戦略は成果を見せている。CNNインターナショナルの社内クリエイティブエージェンシー、CNNクリエイト(CNN Create)によると、いまや全体の収益のうち54%に、ブランデッドコンテンツが絡んでいるという。
現在、20人の正社員を抱えている、CNNクリエイト。彼らは、CNNの自らのチャンネル内で公開される編集映像、そしてFacebook上での360度動画やSnapchat(スナップチャット)といったオフサイトのコンテンツまで、幅広く制作を担当している。
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創立9年目のエージェンシーが、2016年に入ってより生産性を高めた要因として、最新式のデータモニターサービスが挙げられる。「エイム(AIM)」と呼ばれるこのサービスは、7カ月前にローンチされ、いまでは全クライアントのオンサイト・オフサイト両方のキャンペーンで活用されているのだ。
真に有意義なインサイト
「エイム」はデータをトラッキングして、各キャンペーンに最適なオーディエンスを特定し、それを情報として提供することで、ブランデッドコンテンツ制作に応用できる。公開されたキャンペーンはモニターされ、必要であればCNNのプラットフォーム内外両方で、クリエイティブをダイナミックに配信調整することが可能だ。
また、クリックスルー(CTR)といった単純な指標を越えた、より深い指標を提供してくれる。記事の滞在時間、回遊率、エンゲージメント、購買意欲といった細かいデータを組み合わせることで、ブランドにとって真に有意義なインサイトとなるという。
インターネットセキュリティー会社であるビットディフェンダー(Bitdefender)は、「エイム」を利用しているクライアントのひとつだ。彼らは現在、IoTにおけるサイバーセキュリティに関する脅威について、広く知ってもらうためのキャンペーンを行っている。CNNMoneyのビデオシリーズ「アンハッカブル(UNHACKABLE)」は、ビットディフェンダーの協賛によって制作され、ブランデッドコンテンツと幅広いデジタル広告フォーマットが組み込まれた。
「エイム」の投資対効果は従来よりも良くなっていて、広告主による購入も増えたというのは、CNNインターナショナルコマーシャルのデータデジタル収益のディレクター、ロブ・ブラッドリー氏だ。収益を見ると、前年同期比において現時点(2016年8月)で数百万ドルを越えているという。しかも、これは「エイム」だけによる直接の利益を表したものだ。全体的には「エイム」が導入されて以来、収益は二桁単位で増加を見せているという。
増える競合にどう対抗するか
「エイム」のようなサービスに対してニーズがあるのは明らかだ。FacebookやGoogleといったテック界の巨人たちが広告費のパイの大部分を奪っていくなかで、伝統的なパブリッシャーたちが競わなければいけない相手は過去数年で大きく増えた。ちなみにFacebookは、2016年6月までの3カ月だけで、62億ドル(約6200億円)の広告を売り上げたと先日発表している。
ブラッドリー氏は、バナー広告よりも優れたクリエイティブを用い、かつ洗練されたデータ先導の広告販売、そしてCTRといった大雑把な計測方法以上のレポートの提供ができなければ、パブリッシャーたちは暗礁に乗り上げてしまうだろうと指摘する。
「西ヨーロッパのグローバルビジネス、特にロンドンにおけるビジネスでは賢いデータ戦略をもっていなければ、エージェンシーに話を聞いてもらうことすらできない。以前であれば、我々の競争相手は数社の大手放送局だった。それがいまでは、Facebook、Google、BuzzFeed、Quartzなど、非常に幅のある、約40もの鋭く洗練された競合他社を意識しなければならない。誰もが思いつかなかったような賢い何かを提供できない限り(エージェンシーとの)会話は、はじまりすらしない」と、ブラッドリー氏は説明した。
収益方法はたくさんある
最近の例として、2カ月前に行ったアジアの航空会社のキャンペーンでは、CNNインターナショナルによって提供されたレポート情報が、その航空会社のマーケティング戦略に大きな影響を与えたという。このスポンサードコンテンツキャンペーンは、CNNの国内・国外両方のチャンネルを使って、北米で配信された。そして「エイム」を導入した結果、CNNはキャンペーンのオーディエンスの多くが子持ちであるというデータを得たのである。
「我々はそれをブランドにもち帰って伝えたところ、なんと彼らは子ども向けのキャンペーンを検討していたが、それが賢い選択かどうか決めかねていたところだった。また、これによって、北米の子持ちの家族はアジアのある地域に旅行することに興味があるということに確信をもった。こういった類のインサイトには価値がある。ただプラットフォームやメディアのオーナーであるというだけではなく、そういった情報も提供できるリサーチ会社のような存在も担っているということだ」。
パブリッシャーがスタンダードな広告を越えて、収益を生む方法はたくさんあるとブラッドリー氏は信じている。彼のチームは最近、アジアで「#バナーを超えて(#beyondthebanner)」キャンペーンを行った。「我々にはソーシャルだけでなく、バーチャルリアリティ、チャット、メッセンジャー、ボットという選択肢もある。自分たちのチャンネルや、ブランドのチャンネルを作るチャンスが存在している」。
それを達成するためには、営業チームがクリエイティブよりの発想をもつ必要があると、ブラッドリー氏。営業と広告オペレーションで11人が新しく雇われ、また「コマーシャルプロダクトマネジャー」という新しい役職が、同氏の下、CNNインターナショナルに加えられた。
「データはもはやひとつの部門ではなくなった。社内で数人だけがDMPを理解できていればいいという考えは通用しない。DMPは謎につつまれた宇宙船のようなものではないし、人々が自分の仕事に価値があることを示すために秘密にしておかなければいけないようなものでもない。マーケティング、セールス、オペレーションから分析まで、あらゆる部門のスタッフがデータに触れないと最大限の収益を引き出すことはできないのだ」。
Jessica Davies(原文 / 訳:塚本 紺)