今年のサイバーウィークは、デジタルパブリッシャーであるコンデナスト(Condé Nast)のテクノロジーメディア、Wired(ワイアード)のアフィリエイトeコマース事業にとって実り多きものになることは、以前から予想されていた。だがその追い風はそれに留まらず、同誌のサブスクリプション事業も大いに後押ししている。
ブラックフライデーとサイバーマンデー(今年はサイバーウィークに拡大)がデジタルパブリッシャー、コンデナスト(Condé Nast)のテクノロジーメディア、Wired(ワイアード)のアフィリエイトeコマース事業にとって実り多きものになることは、以前から予想されていた。だがその追い風はそれに留まらず、同誌のサブスクリプション事業も大いに後押ししている。
読者にさまざまな商品を紹介し、オンライン購入を促すことで収益増を実現するだけでなく、Wiredは読者にサブスクリプションも売り込むことで、彼らの消費傾向も確実にマネタイズしている。
「今年は、目標としていたトラフィック数の達成に加えて」、サブスクリプション収益増を「最重要課題のひとつに掲げた」と、Wiredのサイトディレクター、スコット・ローゼンフィールド氏は語る。
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結果、去るサイバーマンデーとブラックフライデーはそれぞれ今年2番目と3番目に多いサブスクリプション申込者数を獲得し、両日ともに11月の1日平均数の約3倍を記録した。今年最大の申込者数があったのは1月2日で、これは新型コロナ禍による需要急増の始まりと、電子機器見本市CESによるコンバージョン増が重なった結果だと、同社広報は言う。
「Wiredには多くのビジネスモデルがあり、状況に応じて、取捨選択や併用が求められる。アフィリエイト収益も得ているが、ペイウォールの成長にも努めており、有料コンテンツであるそうした記事が我々のサブスクリプションモデルに寄与している」と、ローゼンフィールド氏は語る。
アクセス解析ツール、アドビ・アナリティクス(Adobe Analytics)によれば、米消費者が今年のサイバーマンデー(11月30日)に費やした金額はオンラインだけで108億ドル(約1.1兆円)超に上り、前年比15%増を記録した。また、コンデナストをはじめ、いくつかのパブリッシャーをクライアントに持つコマースコンテンツマネタイゼーションプラットフォーム、スキムリンクス(Skimlinks)の発表によると、今年のブラックフライデーのトラフィックは前年を60%上回り、アフィリエイトリンクのクリック数も500万回を超えた。
コマース関連記事は「壁の外」へ
Wiredのアフィリエイトコンテンツ(お買い得情報、ギフトガイド、商品レビューなど)は、同誌デジタルペイウォールの外にある。つまり、たとえ記事の閲覧数が上限に達しても、これらのページにはアクセスできる。さらに、そうした読者/訪問者にサブスクリプション(初年度の購読料金は5ドル[約518円])を薦めるべく、同誌はこれらのeコマースページにディスプレイ広告を出し、記事ページのなかでコンテクスチュアルマーケティングを実施するなど、さまざまに手を尽くした。
「読者の反応がとりわけ良い、適切な類の記事を軸にすれば、さまざまな販促展開が可能となる」とローゼンフィールド氏。「ペイウォールという高い壁の向こう側に記事を並べるだけでは、サブスクリプションの促進は望めない」。
今年前半、Wiredの収益の20%はアフィリエイトやサブスクリプション、ライセンシングなど、非広告関連によるものだった。それが現在は、同誌広報によると、サブスクリプション/アフィリエイト収益が全体の約30%を占めている。しかも、同誌のアフィリエイト事業収益は、2018年以来毎年倍増している。
「今年、とりわけ第4四半期に大きな成功を収められたのは、アフィリエイトチームを強化し、必要なインフラを築き、すべての駒を然るべき場所に配し、今期に向けて準備万端整えておいたからに尽きる」と、ローゼンフィールド氏は語る。
アフィリエイトチームを強化の結果
同誌のアフィリエイトコンテンツチームは昨年、人員拡充を最優先課題とし、商品レビューチームを9名、ギアチーム(ニュース&分析)を3名に増員した。また、商品レビューは最大のトランザクション創出源ではないものの(お買い得方法とギフトガイドが首位の座にある)、ローゼンフィールド氏いわく、レビューはレコメンデーション(商品推薦)の信憑性を高める役を果たしており、それがひいては読者の信頼獲得につながるという。
「Wiredがたとえば、とあるジョギングシューズを薦めているのは、スタッフが実際に試し履きをしたからにほかならない」。ただ単に割安だからリストに載せているわけではないと、ローゼンフィールド氏は言いきる。
今年のブラックフライデーおよびサイバーマンデーにおけるWired.comへのトラフィックは、いずれも昨年同日に比べて180%以上増加した。なかでも訪問者数がもっとも多かった記事は、お買い得情報を提供するアブソリュート・ベスト・ディールズ(Absolute Best Deals)であり、1日のクリック数は180万回に達したと、ローゼンフィールド氏は語る。サイバーウィーク中におけるページビュー数は総計で300万を越えた。コンデナストのメディアキットによれば、Wiredの月間ユニーク読者/訪問者は約1270万人であり、つまり、ひとつの投稿が同誌サイトの月間トラフィックのほぼ4分の1を獲得した計算になる。
アブソリュート・ベスト・ディールズはまた、読者/訪問者をサブスクリプションに移行させるコンバージョン率においても、同誌コンテンツのなかで1、2を争う高い数字を残したと、氏は言い添える。
サブスクとの併売は「至極当然」
ブラックフライデーおよびサイバーマンデーコンテンツを利用して同時にサブスクリプションも販売するのは「至極当然の戦略」だと、コマースコンサルティング会社ロックウォーター(Rockwater)の創業者クリス・アーウィン氏は断言し、その理由について、オーディエンスを考え得るすべての方法でマネタイズするのが基本だからだと説明する。パブリッシャーのコマースまたはコンテンツチャンネルへの訪問者数が急増したのなら、そのオーディエンスを同社の他事業分野に誘うのも、サブスクリプションを介してそのオーディエンスに対するエンゲージおよびマネタイズに努めるのも、その急増を利用して広告販売を狙うのも、きわめて理に適っていると、氏は語る。
アーウィン氏いわく、「どのパブリッシャーも生き残るには、自社ネットワークのなかでオーディエンスを可能な限り拡大する[必要がある]。それこそがサステナビリティへの道だ。実現するにはそれしかない」。
[原文:How Wired leveraged Cyber Week readers to increase subscription revenue]
KAYLEIGH BARBER(翻訳:SI Japan、編集:長田真)
Illustration by IVY LIU