Vice Mediaはいま、ブランデッドコンテンツの効果を広告主に証明し、そのおかげで、広告主がリーチしようとしているオーディエンスに対する理解が深まることを知ってほしいと考えている。そのために、大手市場調査会社カンター(Kantar)と提携し、調査を目的としたふたつのプロジェクトに取り組んでいる。
Vice Mediaは、広告エージェンシー的な取り組みを大規模に行うメディア帝国だ。ニューヨークのブルックリンに本拠を置く同社は、長年に渡ってブランドと緊密に連携し、ブランドをクールにアピールしている。また、自社ブランドをクールなコンテンツのなかで宣伝している。
そのViceがいま、こうしたブランデッドコンテンツの効果を広告主に証明したいと考えている。また、ブランデッドコンテンツのおかげで、広告主がリーチしようとしているオーディエンスに対する理解が深まることを知ってほしいと考えているのだ。このためにViceは、世界最大の広告企業WPPが所有する大手市場調査会社カンター(Kantar)と提携し、調査を目的としたふたつのプロジェクトに取り組んでいる。
そのひとつが、カンターの子会社ライトスピード(Lightspeed)との提携から生まれた「Viceボイス(Vice Voices)」だ。Viceボイスでは、Viceのサイトを訪れる3万人のユーザーに対して、Viceやその広告パートナーがオーディエンス調査や行動調査を実施できる。ふたつ目は、カンターが所有する市場調査会社ミルウォードブラウン(Millward Brown)との提携によって開発された製品だ。Viceや広告クライアントはこの製品を使って、オーディエンスによるブランデッドコンテンツの利用状況や広告キャンペーンの全体的な効果を測定できる。
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Viceの最高メディア責任者、オリバー・ラウブシャー氏によれば、「ブランド調査を行ってほしいというクライアント要望が増えている」という。「このプロジェクトは、サードパーティの力を借りてブランデッドコンテンツをより正確に評価するための最初のステップだ」と、ラウブシャー氏は説明した。
収益の大半を生み出した
Viceのビジネスのなかで、ブランデッドコンテンツのような広告エージェンシー的な仕事は、大きな割合を占めている。だが、広告主がブランデッドコンテンツの効果に疑問を持ちはじめるようになったいま、ブランデッドコンテンツには厳しい目が注がれている。ラウブシャー氏は、Viceがカスタムコンテンツキャンペーンから上げている収益を明らかにしていないものの、ウォールストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal)の記事によれば、Viceの2016年の収益の大半がこの手のキャンペーンによってもたらされた可能性があるという。
Viceが最近手がけたブランデッドコンテンツキャンペーンには、映画『キングコング:髑髏(ドクロ)島の巨神』を宣伝するためにワーナー・ブラザーズ(Warner Bros.)が制作した動画付きコンテンツ「カルチャー・オブ・コング(Culture of Kong)」や、ナイキ(Nike)向けに制作した20分の短編ドキュメンタリー映画『SBダンクの15年』(15 Years of SB Dunk)がある。
Viceボイスを使った調査やミルウォードブラウンとの共同調査を監督しているのは、2名の専従チームだ。チームリーダーは、Viceのインサイト担当バイスプレジデント、ジュリー・アービット氏で、さらに2名のスタッフが加わる計画だという。今後はこのチームが中心となって毎日調査を行うが、必要があれば、ほかの部署のスタッフを連れてくることもあるという(カンターも、Viceのオフィスにチームを派遣して、この共同調査を支援している)。
はるかに進んだ取り組み
ニューヨーク・タイムズ(New York Times)やコンデナスト(Condé Nast)といった旧来のメディアも、オーディエンスや広告効果のデータを詳しく理解できる機能を以前から広告主に提供している。だが、このようなツールの提供では、多くの競合デジタルメディアと比べて、Viceははるかに先に進んでいると、エージェンシーのMECウェイブメーカー(MEC Wavemaker)でソーシャル担当責任者を務めるノア・マリン氏は指摘する。
「しばらく前から大きく進化しているプラットフォームと比べれば、ツールはそれほど進化しているわけではない」とマリン氏はいう。「だがViceは、多くのデジタルファースト企業が取り組みはじめたことをすでに行っている。(広告主に対して)コンテンツの配信に関する話をするだけでなく、コンテンツのもたらす影響について話せる段階にまで達しているのだ」。
ViceはViceボイスを、調査や計画立案のツールとして重要な役割を果たせるものにしたいと考えている。またViceボイスを、Viceのオーディエンスに対し、コンテンツに対する意見や自分の関心事を伝えたり、ほかのユーザーがどのような反応をしているのかを確かめたりできるツールとして宣伝している。
Viceはまず、総勢3万人のユーザーグループを活用して、複数の調査を毎週行う計画だ。また、来年にはユーザー数を2倍にし、Viceとカンターが海外市場にこの製品を売り込む予定だという。「我々にとっても、我々のクライアントにとっても、いまの時代を生きる人々にリーチするもうひとつの手段が得られるツールなのだ」と、アービット氏は語った。
広告主の信用と安全
広告効果を高めることは、Viceにとって最優先事項のひとつだ。2016年には、押し付けがましい広告を排除する狙いでサイトのリニューアルを実施。その結果、ユーザーがViceの広告を見る時間がリニューアル前の2倍に増えたという。また、技術的ノウハウを蓄積したり、速度の遅いベンダーを拒否したりすることで、Viceはこの6カ月間で、ページの読み込みにかかる平均時間を半分に、また、広告の読み込みにかかる時間を約80%減らすことに成功した。
2017年の業界イベント「デジタルコンテンツ・ニューフロンツ(Digital Content NewFronts)」では、広告主の信用と安全がメインテーマとなったが、このテーマはViceにも共通する。Viceは、自社のオンラインコンテンツを詳しく調査するために、広告分析を手がけるグレープショット(Grapeshot)と提携することを発表。その目的は、クライアントの広告メッセージが、そのクライアントの好まないコンテンツの近くに表示されないようにすることだ。
「こうした調査ができる製品を利用することで、より詳しくかつ正確な測定をしたいと考えている」と、ラウブシャー氏は語った。
Sahil Patel(原文 / 訳:ガリレオ)
Image via Vice