英国の全国紙グループである「トリニティー・ミラー(Trinity Mirror)」は、プログラマティック取引による売上が多く、現在、デジタル広告売上の40%(約3000万ポンド、約40億円)を占めている。しかし、これに満足してはいない。
「トリニティー・ミラー」は現在、ディスプレイ、動画、モバイルのすべてで、プログラマティックによる収益を増大させ、同時に、FacebookやGoogleといったプラットフォームからのプログラマティックによるマネタイズのあり方についても主導権を維持したいと考えている。その取り組みのため、同紙は社内再編を実施し、20名からなる一元化されたプログラマティックチームを結成した。
英国の全国紙グループである「トリニティー・ミラー(Trinity Mirror)」は、プログラマティック取引による売上が多く、現在、デジタル広告売上の40%(約3000万ポンド、約40億円)を占めている。しかし、これに満足してはいない。
「トリニティー・ミラー」は現在、ディスプレイ、動画、モバイルのすべてで、プログラマティックによる収益を増大させ、同時に、FacebookやGoogleといったプラットフォームからのプログラマティックによるマネタイズのあり方についても主導権を維持したいと考えている。その取り組みのため、同紙は社内再編を実施し、20名からなる一元化されたプログラマティックチームを結成した。
ビデオオンデマンド、データ、アドテク、セールスといった各分野の専門家たちをプログラマティックの責任者として束ねるのは、2015年11月に同社が地方紙ローカル・ワールド(Local World)を2億2000万ポンド(約3兆円)で買収した際に社員として加わった、元Google社員のアミア・マリク氏。このチームが今後、コマーシャル部門全体に影響を与えていく。
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マリク氏は次のように述べている。
「『トリニティー・ミラー』には協力しあう文化があり、我々はプログラマティックに関わるスタッフに関しては境界線を設けていない。これは、コンテンツスタジオ『インベンション(Invention)』であろうとデジタル部門や印刷営業部門であろうと関係なく、広告戦略全体に影響する。我々が優先するのは、FacebookやGoogleあるいはニューズUK(News UK)やメールオンライン(MailOnline)のようなパートナーとの協力においても、単独においても、収益を押し上げ、マネタイズの主導権を放さないことだ」。
これまでのところ、この方針は順調に進んでいる。マリク氏によると、動画だけでもプログラマティック広告の収益が2桁ベースから100%増加し、順調に推移しているという。全体だと41%の増加だ。ヘッダー入札の利用でディスプレイ広告のプログラマティックによる収益が17%増大、またFacebookのインスタント記事への新たな注力によって、同プラットフォーム経由のプログラマティック広告売上が30%増大した。
「トリニティー・ミラー」はどのようにしてこれを成し遂げたのか、その内訳を紹介する。
インスタント記事とAMPのプログラマティックによるマネタイズ
Facebookのインスタント記事やGoogleのAMPを通して、パブリッシャーが大きな収益を得られるとは、まだ証明されていない。しかし、マリク氏はプログラマティックによってそれが可能だと確信している。
これまでのところ、インスタント記事は主に冒険的な施策として、パブリッシャー側には認識されており、「トリニティー・ミラー」も数本アップロードしている程度だ。これらは、かつて同紙のプロダクトチームが担当していたが、現在はプログラマティックチームが担当している。インスタント記事とAMPをチェックし、どこで収益を得られるかを特定する専任のプログラマティックメディアアナリストを雇っているという。
「インスタント記事のトラフィックの変化に対応する人材が欲しい。提供される広告表示をチェックすることで、ディスプレイ広告のFacebook収益がすでに30%改善している。いまは、これを常時分析する専任者を必要としている」。
GoogleのAMPは、ほかのメディアプラットフォームよりもオープンであり、パブリッシャーはそこで得られる売上のすべてを自分のものにすることができるほか、アウトストリームのような動画形式を利用することができる。この点で優先度が高いとマリク氏は付け加えた。
プログラマティックデータを活用したリードジェネレーション
アドテク分野にはダイレクトレスポンス広告だけでなく、ブランドのキャンペーン予算をいかに多く獲得するかというテーマがある。「トリニティー・ミラー」は、プログラマティックデータから得られるインサイトを、リードジェネレーション(将来顧客になりそうなユーザーへのマーケティング活動)に活用することでこれを追求。プログラマティックキャンペーンから収集したターゲットオーディエンスに関する貴重なインサイトをブランドに提供することで、より大規模な、より一体化した、ブランド提携やデータ提携に結びつけられるのだ。
すでに同社は、ネスレ(Nestlé)とそのエージェンシーであるゼニスオプティメディア(ZenithOptimedia)と協力して、これを追求している。かつてネスレとゼニスは、「トリニティー・ミラー」のインベントリ(広告在庫)を、アドエクスチェンジを介して購入していた。つまり、ネスレのようなブランドが自社のインベントリに姿を現していることが見えていたのだ。それは、「トリニティー・ミラー」のオーディエンスがネスレの何らかのキャンペーンの基準条件を満たしているという証拠だと言える。
「トリニティー・ミラー」はこれを活用してネスレにアプローチ。より密接なデータパートナーシップを提案した。目標は、ネスレがさまざまなプラットフォームで同じ個人を繰り返しターゲティングしてしまうのを防止することだ。「彼らは現在、我々のデータをYouTubeの広告購入の強化に活用している。シングルカスタマービューのアプローチだ。これにより、ユーザーへの『2度づけ』(重複)がなくなる」と、マリク氏は語った。
この契約によって動画については収益が2桁ベースから100%増加したとマリク氏。「データの関係があるため、我々はテレビ放送のレートで支払いを受けていた。現在、ゼニスはトリニティーの資産全体に対する支払いを4倍にして、2度づけを避けるために我々がもつ大規模なオーディエンスを、オフサイトで購入する際のインテリジェンスレイヤーとして活用している」と語る。
「トリニティー・ミラー」のDMPと広告主のDSP(このケースではGoogleの「DoubleClick Bid Manager」)の結びつきに依存しているため、サービスの製品化やパッケージ化はまだされていない。しかし、この分野は、ほかのエージェンシーグループとも推進していきたいと考えている。
ヘッダー入札は絆創膏にすぎない
ヘッダー入札という方法は、アドサーバーを呼び出す前に、インベントリを複数のアドエクスチェンジに同時に提供できることから(また、昔からあるウォーターフォールという手法よりも洗練されているように見えることもあって)、収益を増やす方法としてパブリッシャーに注目されている。しかし、マリク氏は、「ヘッダー入札は、プログマティックによって生じた売上の痛手に対する絆創膏にすぎない。しかし、それによってたくさんのお金を稼ぐことができる」と述べた。
「トリニティー・ミラー」はヘッダー入札を積極的に活用してきた。2年前にAmazonのヘッダー入札ツールの利用を開始したほか、イーベイ(eBay)のツールも使ってきた。現在は、新たに「オープンX(OpenX)」と連携し、ほかのパートナーも活用している。これまでのところ、ディスプレイ広告全体でヘッダー入札によるプログラマティックの収益が17%増加した。「彼らと一緒にヘッダー入札に取り組んでいるのだから、Facebookがヘッダー入札に興味をもっていることを私は知っている。刺激的だ」と、マリク氏は語った。
Jessica Davies (原文 / 訳:ガリレオ)