Digiday+は会員向けサービス「Digiday+ Talk」で、メディアやマーケティング業界役員にZoomで話を伺っている。今回は、以前からサブスクリプション事業を成長軌道に乗せることに成功していたトリビューン・パブリッシング(Tribune Publishing)のCMOのマーク・キャンベル氏に話を訊く。
トリビューン・パブリッシング(Tribune Publishing)は、パンデミック以前からデジタルサブスクリプション事業を成長軌道に乗せることに成功していた。だが、コロナ禍によって、同社のデジタルサブスクリプションは、さらなる伸びを見せている。
2019年、同社のデジタル版のみの登録者数は33万4000人だった。CMOのマーク・キャンベル氏によれば、これは前年度比で34%の増加だ。さらに、サブスクリプションの年間収益も約60%増となったという。
今年3月の同社のデジタルサブスクの新規登録者数は、2月と比べて293%の増加となった。Digiday+は会員向けサービス「Digiday+ Talk」で、メディアやマーケティング業界役員にZoomで話を伺っている。この最新回でキャンベル氏は、同社のペイウォールモデルとコロナウイルスの報道がこの成長を後押ししたと述べている。
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同期間で、トリビューン・パブリッシングのユニーク訪問者数は54%、ペイウォール対象コンテンツにアクセスしたユーザー数は21%増加した。このペイウォール対象コンテンツにアクセスしたユーザーのうち0.8%が登録を行った。これはコンバージョン率にして109%の増加だ。
4年前、トリビューン・パブリッシングが開発したメーター制課金技術では、公共の安全にとって極めて重要なコンテンツは、ペイウォールのカウント数には含まれるものの、未登録者でも読むことができる。そこからニュースカテゴリーの別記事にアクセスした場合はペイウォールに引っかかるという仕組みだ。フロリダ州におけるハリケーンシーズン中に活躍してきた同機能だが、コロナ禍のなかでも規模は拡大されないながらも活用は続けられている。
01:動画のポイント
サブスクを優先する戦術的変化
トリビューン・パブリッシングは3月23日、ペイウォールとメーター制課金戦略に3つの変更点を加えた。現在、同社を含め、業界全体で広告収益は減少傾向にあり、それを補填するための戦略となっている。
- 初回登録者向け割引の削除。 キャンベル氏は、サブスクリプションに初登録したカスタマー向けの割引を第2四半期に一時停止した。これによってさらに100万ドル(約1億700万円)の増収につながりうるとのことだが、それでも広告収益の減少を完全に補填するには至らない。
- より厳しいメーター制の導入。 毎月ペイウォールの制限なしに3本から5本の記事を読めるシステムから、45日間ごとに2本の記事を読めるシステムに変更した。「2カ月前よりもプログラマティック広告の料金が落ち込んだことに伴い、閲覧数の価値も下がっている。そこでメーター制をより厳しくし、インプレッションと閲覧数を犠牲にしてもコンバージョン率を上げようと試みた」とキャンベル氏は語る。「閲覧数を多少犠牲にしても学べるというのは以前と異なる点だろう」。
- サブスク価格の引き上げ。 熱心なオーディエンスは多少サブスクの価格が上がっても許容する。
パンデミックの終息後に新規登録者が解約しないよう付加価値を導入
「新規登録者のなかには、コロナウイルス関連記事にのみ興味を示す方が多い」と、キャンベル氏は語る。パンデミックに関する情報を得るために訪問したオーディエンスが多いことを考えれば当然だが、パンデミックの収束後に解約されないための対応が重要となる。
- データとアナリティクスで新規登録者層の分析を行う。 トリビューン・パブリッシングはデータチームとともに、パンデミック下の登録者層と既存の層との違いを、記事へのアクセス方法や内容をもとに把握しようと努めている。
- 提供コンテンツの幅を示す。 コロナウイルス関連の記事しか読まない読者にほかの記事を紹介するため、キャンベル氏のチームはコロナウイルス以外の人気記事をニュースレターの最後で紹介するアルゴリズムを導入した。パンデミック終息後も重要な情報を提供できるメディアであることを示すための取り組みだ。
- 付加価値の提供。 サブスクリプションで得られる機能や特典とは何だろうか? 割引プログラムや記者ごとの記事へのアクセスや追加情報などを提供すれば、読者もサブスクリプションの価値を感じられるだろう。
コロナウイルスの感染拡大による同社のサブスク戦略の変化
キャンベル氏によれば、トリビューン・パブリッシングはコロナウイルスの感染拡大後に、サブスクに関するアプローチで大きく3つの点を変えたという。
- 「以前はリスクを考えて、なかなか踏み切れなかったメーター制の設定を実験できるようになった」と、キャンベル氏は語る。パブリッシャーは、広告市場が回復するまでのあいだメーター制と閲覧数のバランスを実験的に調整し、より多くのデータを集めることも可能だ。
- 「これによって量と収益に関する昔からのバランスを作り変えられる」と、同氏は語る。新規パブリッシャーにとって、カスタマー収益を増やすか、閲覧数を増やして広告収益を増やすかというのは検討課題となっている。将来的に、このバランスはこれまで以上に注目を集めるだろう。
- 最後に、現在部門間のやりとりや連携はかつてないほど強化されている。これによって迅速な問題解決につながっている。
02:イベント動画
03:スライドを見る
画像の説明:
トリビューン・パブリッシングは米国内の9市場に展開しており、ペイウォール戦略に関する変更は各市場にまとめて適用された。
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2019年末時点で同社は33万4000人のデジタルサブスク登録者を有していた。これは前年度比で34%増。
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トリビューン・パブリッシングのメーター制課金技術により、公共の安全にとって極めて重要なコンテンツはペイウォールのカウント数には含まれるものの、未登録者でも読むことができる。
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同社のデジタルサブスクは7週連続で伸びており、パンデミックによる広告収益の減少を補填している。
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3月の同社のデジタルサブスクの新規登録者数は、2月と比べて293%増。
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サブスク事業のペイウォール戦略について同社は3つの変更を即時実行している。
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同社は紙媒体の読者に向けてデジタルサブスクをプッシュしている。
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新規登録者の解約を防ぐための同社の計画。
(原文 / 訳:SI Japan)