ゲーム業界には、コタク(Kotaku)やIGNといった、老舗とも呼べるメディアが存在するが、一方で、メインストリームのメディアもゲームやeスポーツ報道に参戦している。その代表例が、あのワシントン・ポスト(The Washington Post)が2019年10月に立ち上げたランチャー(Launcher)だ。
長年、ゲームはエンターテインメント業界の日陰者だった。しかしその流れは変わり、特にこの10年でゲームの地位は一気に向上したといえるだろう。それに伴い、ゲームを取り巻く報道のあり方も大きく変わりつつある。
ゲーム業界には、Kotaku(コタク)やIGNといった、老舗とも呼べるニッチなメディアが存在するが、一方で、メインストリームのメディアもゲームやeスポーツ報道に参戦している。その代表例が、あのワシントン・ポスト(The Washington Post)が2019年10月に立ち上げたランチャー(Launcher)だ。
ランチャーのコンテンツは、コンソール機のタイトルのレビューや、ゲーム攻略のヒントだけにとどまらない。ゲーム業界の裏側や文化、eスポーツの大会、ときにはゲームのなかで結婚式を行うカップルについてのニュースを報じるなど、ひと味違うコンテンツを配信するメディアとして、知名度を高めている。また、同メディアの読者は、ワシントン・ポストの一般的な読者ではなく、コアなゲーマーが中心だ。今回、米DIGIDAYはポッドキャスト企画として、編集者のマイク・ヒューム氏に、ランチャーが扱うコンテンツや、Appleとエピック・ゲームズ(Epic Games)の法廷闘争に至るまでを訊いた。
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「ランチャーは、決して『ついにあのメインストリームのワシントン・ポストが到来。ゲーマーたちよ、喜べ!』というような上から目線のメディアではない。我々は、ゲーマーの信頼を自らの手で勝ち取りたいと考えている。それが立ち上げ当初からの、変わらぬ目標だ」とヒューム氏は語る。
本記事では、インタビューのハイライトをお伝えする。なお、内容を明確にするため若干の編集を加えている。
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ゲームのオーディエンスは、一般のオーディエンスと変わらない
「ワシントン・ポストについても感じることだが、正直、メインストリームのメディアによるゲーム報道のスタンスは誤っている。彼らはまるで、アマゾンの奥地にいる未開民族や先住民族を報じる外国人レポーターのようだ。それを見るたびに思う。『おいおい、それは違うだろう』と。ゲーマーは別に異質な存在ではなく、ただ『ゲームが好きな人』、それだけのことだ。医者のゲーマーもいる。弁護士のゲーマーもいる。政治家のゲーマーもいる。ワシントン・ポストの記者のなかにだってゲーマーはいる」。
ゲームとひと口にいっても、その報道対象範囲は広く、かつ深い
「我々は現在、記事に合わせてアプローチを変えるというやり方を試している。たとえば、ゲームソフト業界の超大手、アクティビジョン・ブリザード(Activision Blizzard)が運営するeスポーツリーグがある。『そのリーグに、プロサッカークラブのオーナーが何億円もの投資をした』という記事を書くとしよう。これは一般人も興味を惹かれる内容だろう。だから、一般人向けに『eスポーツとはゲームの大会で、運営しているのは……』といったところからはじめる。一方我々は、eスポーツ大会でチート(ゲームを有利に進めるため、ゲーム制作者の意図しない動きをさせる不正行為。10代の若者のあいだで広がっている)と見なされることが多い、エイムアシスト(aim assist)についての特集も載せる。こうした記事では、熱心なゲーマーに直接語りかけるように書く。また、ゲームイベントに参加している選手にインタビューを行い、独自の意見を訊く。さらには科学者にも、『これは技術的に見てもチートなのか?』といった質問をぶつける。これらは非常に貴重な記事になる。しかし、たとえば私の母親などは絶対に読まないような記事になる」。
ゲーム記事の読者は、とにかく「動画好き」
「ゲーム業界のオーディエンスは、とにかく動画が好きだ。だから、どうすればそのニーズに応えられるか、そしていかにオリジナリティを出せるかが勝負になる。我々がYouTubeで毎週生放送している『ランチャーライブ(Launcher Live)』も、このニーズを満たすためのもので、実際に良い結果が出ている。ゲーム業界の有名人や、コアなゲームファンのあいだで人気のあるゲストを招いて放送している。こうした取り組みを、今後も進めていきたい」。
[原文:How The Washington Post’s Launcher covers gaming and esports inside a mainstream publication]
TIM PETERSON(翻訳:SI Japan、編集:村上莞)