Facebookが「インスタント記事」をローンチして10カ月ほどが経過した。当初は限られたパブリッシャーのみが対象だったが、2016年4月にはすべてのパブリッシャーに解放される。
Facebookのモバイルアプリで読み込みに時間がかかるウェブページの問題解決のために開発された「インスタント記事」。だが、その一方でコンテンツ提供者が、自社サイトへの流入や一部収益化を諦めなければならないことが問題視されている。
とはいえ、どのプラットフォームもそうであるように、パブリッシャーそれぞれの事業モデルや目的によって、Facebookの価値は異なるだろう。「インスタント記事」がローンチしてもうすぐ1年になり、100社以上のパブリッシャーが参入しているのだ。複数の企業からは明るい兆しが見えるといった意見もあるが、オーディエンス計測や収益化の方法はいまだ解決できていない。以下、各社の取り組みをご紹介する。
Facebookが「インスタント記事」をローンチして10カ月ほどが経過した。当初は限られたパブリッシャーのみが対象だったが、2016年4月にはすべてのパブリッシャーに解放される。
Facebookのモバイルアプリで読み込みに時間がかかるウェブページの問題解決のために開発された「インスタント記事」。だが、その一方でコンテンツ提供者が、自社サイトへの流入や一部収益化を諦めなければならないことが問題視されている。
とはいえ、どのプラットフォームもそうであるように、パブリッシャーそれぞれの事業モデルや目的によって、Facebookの価値は異なるだろう。「インスタント記事」がローンチしてもうすぐ1年になり、100社以上のパブリッシャーが参入しているのだ。複数の企業からは明るい兆しが見えるといった意見もあるが、オーディエンス計測や収益化の方法はいまだ解決できていない。以下、各社の取り組みをご紹介する。
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「ワシントン・ポスト(The Washington Post)」
2015年9月以降、「ワシントン・ポスト」はすべての記事を「インスタント記事」に配信している。記事のロード時間を速め、オーディエンスに美しい記事を届けるための決断だ。
モバイル商品を統括するジュリア・バイザー氏は、利用開始してから1週間以内で結果が出たという。Facebookフィードに直接投稿していたときよりも再訪数が大幅に増えたのだそうだ。この結果に対し、同氏は「コンテンツ内容の充実と、ロード時間を待たせなくなったことの相乗効果」だと分析している。
「インスタント記事」が自社サイトへの流入を促しているかどうかはわからないが、同紙の事業モデルにおいて一番の目的は購読契約を結ぶことだ。しかし、オーナーであるジェフ・ベゾス氏には豊富な財力があるため、多くの新しいことができるのだろう。
「スレート(Slate)」
政治や文化を取り扱うオンラインメディア「スレート(Slate)」も、製作する記事の約70%を「インスタント記事」に配信している。新聞雑誌連盟を通じて供給された記事やネイティブアド、特定のインタラクティブ形式の記事などは、Facebookの方針にそぐわないため除外されている。
「インスタント記事」を利用する目的は、ロイヤリティの高いオーディエンスを開拓し、ロード時間短縮で快適なウェブ体験を提供することだと、同社副会長のダン・チェック氏は話す。「ワシントン・ポスト」と同様に、「スレート」も「インスタント記事」を利用したおかげでエンゲージメント率が上がっている。実際にFacebook自身も、同サービスをローンチ後、訪問数を25%ほど上昇させた。
チェック氏は、「我々は人々が望む、速くて綺麗な読書体験を提供しなくてはならない。そうすることで、人々がコンテンツに集まり、それに費やす時間も増える。また、コンテンツを共有してもらうことで、その友人にも同じ体験を届けられる。だから、私たちはコンテンツの数を増やす」とコメントした。
その一方、ほかのパブリッシャーと同様に「スレート」は、「インスタント記事」へのブランデッドコンテンツ配信と、定期購読者の増加を望んでいる。同社の事業モデルでは、「インスタント記事」への配信と定期購読の両方がカギとなるからだ。「最終的には、ネイティブアドへの対応をしてもらいたい」と、チェック氏は話した。
「リトルシングス(LittleThings)」
楽しく、軽めのトピックを提供するライフスタイルメディア「リトルシングス(LittleThings)」では、長編コンテンツをすべて「インスタント記事」へ投稿。毎日約50本のコンテンツを製作しているが、その3分の1程度が「インスタント記事」へ配信される。
これは、Facebookが「インスタント記事」内に、これまでよりも多くの広告を掲載することをパブリッシャーに許可したからだ。長編コンテンツを投稿することによって、より多くの広告も同時に配信できると、「リトルシングス」の共同設立者、ジョー・スパイザー氏は語る。
また、長編コンテンツを配信することで、「リトルシングス」が運営する独自モバイルサイトと匹敵するほどの利益を得られるとも、スパイザー氏はコメント。昔のFacebook記事と比べ、コンテンツの共有率が「インスタント記事」では15%も増えているという。より多くの利益を生む可能性を秘めているのだろうか。
「収益化の観点から見て、『インスタント記事』はうまく機能している」と、スパイザー氏。「なにかを諦めた感じがあるが、同時にエンゲージメントも得ている」。
また、「リトルシングス」はページビューをあまり気にしていない。昔ほど重要視されなくなったためだ。さらに、FacebookがcomScore(コムスコア)によるトラフィック分析を認めたため、「インスタント記事」のトラフィックも、自らのサイトトラフィックとして計測できるようにもなっている。
とはいうものの、「リトルシングス」はプログラマティック広告に頼りきっているため、ネイティブアドや動画広告に頼っているパブリッシャーよりも、「インスタント記事」での広告料がモバイルサイトと同等になりやすい。ネイティブアドと動画広告は、スパイザー氏がFacebookに対応してもらいたいと考えている分野だ。
「アトランティック(The Atlantic)」
創刊150年を超える老舗週刊誌「アトランティック」の戦略は、できるだけ多くのコンテンツを「インスタント記事」に配信すること。そのため、全体の約85%の記事を配信している。この戦略の思惑は、多くのオーディエンスに配信すれば、そのなかから定期的な読者に(もちろん、購読者にも)なってもらえる可能性が増えるというところにあるのだ。
「インスタント記事」で、これまでよりも速いロード時間の読書エクスペリエンスを提供できるが、ネイティブアドなどを配信できないというトレードオフもあると、デジタル部門を統括するキンバリー・ラウ氏は話す。「我々のデジタル収益の60%以上がスポンサードコンテンツになるため、それをネイティブに配信し、閲覧を促す能力があるプラットフォームが重要になる」とラウ氏は述べた。
「ミック(Mic)」
ミレニアル世代を対象としたオンラインメディア「Mic」は、2015年の12月に最高戦略責任者となるコリー・ハイク氏を雇い入れ、「ワシントン・ポスト」と同様にすべての記事を「インスタント記事」に配信している(ハイク氏によると、雇われたときにはすでにこの方針で動いていたという)。
ハイク氏は、その「すべてを賭ける」方針や、「大規模に行わないとプラットフォームの本当の価値はわからない」という考え方は、「Mic」に合っていると話す。Facebookがパブリッシャーへの広告枠を大幅に増やし、収益化を容易にさせたことに対し、ハイク氏は「私たちは『インスタント記事』を完璧に収益化し、管理できている」と自信をもっている。
どのようにうまくいっているのだろうか? ハイク氏は「インスタント記事」がどう読者に影響を与えているかは話してくれなかったが、「もし『インスタント記事』を信頼していなかったら、私たちはいまここにいない」と、コメントしてくれた。
Lucia Moses(原文 / 訳:BIG ROMAN)
Image via 米DIGIDAY