ワシントン・ポスト(The Washington Post)は、サードパーティCookieが終焉したあとの計画を立てており、このデジタル追跡ツールの消滅をチャンスと捉えている。同社のコマーシャル担当バイスプレジデント、ジャロッド・ディッカー氏は「現在の仕組みが理想的だと考える人は多くないと思う」と話す。
ワシントン・ポスト(The Washington Post)は、サードパーティCookieが終焉したあとの計画を立てており、このデジタル追跡ツールの消滅をチャンスと捉えている。パブリッシャーにとって、迫り来るサードパーティCookieの死はリセットの好機であり、いまこそ代替案を用意し、オーディエンスを定義し、コンテンツ戦略を作成するときだ。
ワシントン・ポストのコマーシャル担当バイスプレジデント、ジャロッド・ディッカー氏は「現在の仕組みが理想的だと考える人は多くないと思う」と話す。サードパーティCookieは「ユーザーにとって理想的なものではない。顧客体験にとっても同様だ。詐欺が存在し、アトリビューションや追跡に限界がある」。
サードパーティCookieの消滅はパブリッシャーにとって、ゼロからスタートし、プライバシーが核となる新しいデジタル広告メディアエコシステムを構築する機会だと、ディッカー氏は述べている。既存のシステムを修正し、プライバシー関連規則に準拠させる必要はない。
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「既存のシステムを維持することは不可能だと思う」と、ディッカー氏は話す。プライバシー関連の規則や命令を追加する政府が増えれば、「いま繰り返し行われていることはすべて、修正せざるを得なくなるはずだ」。
業界リーダーが特定テーマの実務的なチュートリアルを提供するDigiday+トークス(Digiday+ Talks)では、ディッカー氏が、パブリッシャーがサードパーティCookieの消滅前に用意すべき戦略について語っている。
01:私たちが学んだこと
サードパーティCookieなしでオーディエンスを定義する
サードパーティCookieがなくなれば必然的に、ファーストパーティデータの重要性が高まるが、ファーストパーティデータは決して完璧な代替案ではない。オーディエンスが保護され、ファーストパーティデータのやりとりに参加できるよう、いくつかの段階を踏む必要がある。
「ファーストパーティデータは未来であり、そこに注力すべきだというのはとても簡単だ」と、ディッカー氏は話す。「しかし、消費者がサイトや製品を利用する代わりにデータを提供するという真の価値交換がなければ、ファーストパーティデータは無価値で、消費者にとっても有益でなく、結局、停滞することになる」。
- サードパーティCookieのもっとも大きな価値のひとつは、ユーザーがウェブ上をどのように移動しているかを理解し、ユーザーに合わせた体験を提供できることだが、今後はこの価値がなくなる。ディッカー氏によれば、今後はブラウザが仲介役を果たし、ブラウザごとに異なるルールを持つことになるという。
- パブリッシャーはユーザーに自分のデータを管理する手段を提供しなければならない。その意図は、データ収集プロセスに透明性をもたらし、ユーザーのプライバシーを尊重することだ。ユーザーが喜んでデータを共有するには、自分の意思で蛇口を止めることができると感じてもらい、データ共有には見返りがあると知ってもらう必要がある。
- ディッカー氏によれば、ワシントン・ポストのチームは現在の状況をリセットボタンを押すチャンスと捉えている。特に、GoogleとFacebookの広告経済に支配されてきたパブリッシャーのエコシステムでは、一からやり直し、多様なデジタル通貨の価値を示す絶好の機会だと、ディッカー氏は述べている。パブリッシャーにとっては、自前のプラットフォームで行うデータ収集にも同等の価値があると証明するチャンスだ。
コンテンツは新しい通貨
この新しいデジタル広告環境には、ウェブ上に表示される広告の新しい通貨は時間と関心だと考える利害関係者が数多くいる。しかし、ディッカー氏によれば、広告またはページで過ごす時間の長さがそれらへの関心の高さに比例するという仮説は、その間違いがいくつもの研究で証明されている。ディッカー氏はこれを理由に、サードパーティCookieの価値が下がったとき、コンテンツが次の通貨になると主張している。
- コンテンツはもはや単なる供給物ではない。パブリッシャーはこれまで、行動ターゲティングとサードパーティCookieを使い、コンテンツのサプライチェーン全体でユーザーをターゲティングしていた。コンテンツはいまやツールだ。「Cookieがなくなれば、コンテンツは単なる供給物を超えた意味を持つ」と、ディッカー氏は話す。
- ディッカー氏によれば、そうした考え方のひとつがコンテクスチュアルコンサンプションだという。コンテンツを新しい通貨にするための次なるステップは、行動ターゲットを決定し、ユーザーの消費ジャーニーとセッション単位のジャーニーを理解し、それらが機能すると証明できるモデルを作成することだ。
- パブリッシャーはコンテンツ企業として、ユーザーのジャーニーを追い、その周囲にそっくりなモデルを構築する機会を手にする。ブラウザの種類にかかわらず、ある匿名ユーザーがあるリファラーからサイトを訪れ、あるコンテンツをクリックすれば、パブリッシャーは関心を特定し、ブランドと共有できるとディッカー氏は説明する。ディッカー氏によれば、ここでブランドが広告を表示すれば、エンゲージメントの確率は90%に上がるという。
W3Cでのプライバシーに関する議論
ワシントン・ポストは4月、W3C(ワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアム)の正式な会員になったが、現在のところ、パブリッシャーの会員はあまり多くない。「会員資格があるかどうかを確認した方がいい。現在、ブラウザレベルのプライバシーとその影響に関する議論が活発に行われているためだ」と、ディッカー氏は話す。
- ディッカー氏によれば、ワシントン・ポストでは、W3Cへの参加と活動を継続するため、組織内のさまざまな人材をW3Cのさまざまな役割に指名しているという。「特にパブリッシャーの場合、すべての大きな会社に参加を勧めたい。自分の声が届くうえ、まさにいま、これらの議論が行われている。とても有意義だ」。
- W3Cのなかでも活発で、パブリッシャーに有益なグループは、プライバシー・インタレスト・グループ(PING)とプライバシー・コミュニティ・グループ(Privacy Community Group)。いずれもウェブ上のプライバシー改善を目指している。
- IWABGはパブリッシャーと広告主にもっとも人気がある活発なグループだと、ディッカー氏は話す。パブリッシャー、消費者、広告主の関係を管理する方法に特化しているためだ。
- ディッカー氏によれば、ペイメンツ(Payments)、WebAppSec(ウェブアプリケーションセキュリティ)、オーセンティケーション(Authentication)も、人気はそれほど高くないが注目すべきグループだという。eコマース事業を持つパブリッシャーや企業にとっては、売上のアトリビューションや支払いの合理化手段を理解することは極めて重要だ。さらに、パブリッシャーは安全なサイト間通信を維持し、サードパーティCookie後の世界で、ユーザー認証がどのように機能すべきかを考える必要がある。
02:動画
03:スライド
スライドの説明:サードパーティCookieの役割。
スライドの説明:デジタル広告エコシステムの3つの主役。
スライドの説明:3つの主役が集まる場所。ここで最善策が決定される。
スライドの説明: Googleは勢力拡大を目指している。
スライドの説明:サードパーティCookieの消滅後、ほかのブラウザにもそれぞれの役割がある。
スライドの説明: W3Cでは、未来に関する活発な議論が行われている。
スライドの説明:サードパーティCookieの消滅後、オーディエンスを正確に定義する方法。
スライドの説明:広告支出市場では今後も、GoogleとFacebookがパブリッシャーにとって最大の難敵。
スライドの説明:この環境で攻める方法と守る方法。
(原文 / 訳:ガリレオ)