[ DIGIDAY+ 限定記事 ]英国紙「タイムズ・オブ・ロンドン(The Times of London:以下、タイムズ)」はこの1年、何が読者を動かすのかを把握するためコンテンツを詳しく調査してきた。その結果を受けて、ニュース編集室が依頼すべきコンテンツについて理解を深めたことが、習慣的な読者の増加ひいては購読や継続の推進につながっている。
[ DIGIDAY+ 限定記事 ]英国紙「タイムズ・オブ・ロンドン(The Times of London:以下、タイムズ)」はこの1年、何が読者を動かすのかを把握するためコンテンツを詳しく調査してきた。その結果を受けて、ニュース編集室が依頼すべきコンテンツについて理解を深めたことが、習慣的な読者の増加、ひいては購読や継続の推進につながっている。
エンゲージを示す10の指標
タイムズを出版するニューズUK(News UK)によると、タイムズと「サンデー・タイムズ(The Sunday Times)」は、デジタルのみの有料購読が1年で19%増加し、30万件に到達した。また、記事を週に2本読める登録アクセスが、2018年4月の300万件から500万件に増加した。こうした増加の大部分は、読者にもっとも響くコンテンツを広く調査し、コンテンツ依頼のスマート化を進めたことによるものだ。
タイムズは2018年6月、フリーランサー8人とタギング技術を駆使して3カ月をかけ、過去17カ月の記事からセクションあたり1000本の記事をセグメント化した。コンテンツのトーン、見出しの種類、記事の形式、地理などを基準に、16通りのメタデータで各記事にタグをつけ、ページビュー、ページ滞在時間、コメントの有無、保存、共有、登録読者か購読読者かなど、エンゲージメントを示す10の指標に対する見取り図を作った。そしてこの情報を、コンテンツ戦略の策定に使っている。
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たとえば、新たな内容や独占的な内容がないニュースは伸び悩むとわかったことから、タイムズはこの数カ月、オンラインの「国内ニュース(Home News)」セクションで公開する記事を15%減らしている。その結果、国内ニュースセクションは滞在時間が増加。具体的には、タイムズのスマホアプリ読者が国内ニュースセクションに使う1日の平均時間が、前年比25%増の28分になったと同社は報告している。タイムズは2016年3月に速報ニュースのサイクルをやめて、1日3回更新するエディションベースのモデルにしている。
ニューズUKのオーディエンス責任者であるタネス・エバンズ氏は、「業界はネット活用の指標を確立するという難題に取り組んでいる」と語る。「『特集が効果的だ』というような大まかな話はあるが、ニュース編集の役には立たない。ニュース担当者のため、そして広く会社のために、実際のデータを手に入れて知見を得ようと試みた」と同氏は述べた。
コメントキュレーションチーム
タイムズで読者定着の重要な手段になっているのはコメント欄で、特にジャーナリストと読者がやり取りすると効果がある。ただ、これはリソースを必要とする。5名からなるコメントキュレーションチームは、コンテンツの調査によって、コメント欄でより多くの議論を生み出すために注目すべきタイプの記事を優先しやすくなった。独占記事、事例研究、コラム、それにオピニオン記事であることが多い。コメントキュレーションチームは議論を活発に保つ。そして、記事がコメント欄で話題になれば書いたジャーナリストに知らせ、ためらいがちな読者には投票で参加を促す。エバンズ氏によると、平均的なコメント数は記事の種類によるという。
コメントする購読者がコメントしない購読者の3倍、記事を読んでいることをタイムズは発見した。積極的にコメントする人とコメントを読んで価値を得ている人を合わせると、購読者の65%とかなりの割合になる。しかし、コメントが増えることと交流が活発になることはイコールではない。各記事、最初5個のコメントは滞在時間に大きな効果があり、その後も50個までは効果があるが、50個以降は滞在時間が徐々に減りはじめるのだと、エバンズ氏は補足した。
「量よりも質に力を入れるようになった」と、エバンズ氏は話す。「何百、何千という数になると、滞在時間への効果はないに等しいようなものになる」。
人工知能のレコメンドツール
エバンズ氏は具体的な数字明らかにできなかったが、「ジェイムズ」と名付けた人工知能のコンテンツレコメンドツールによって解約率が半分になったことをタイムズは6月に明らかにしている。
ソーシャルチームは以降、Facebookにおける記事のプロモーションについて、参照トラフィックの促進に有効なトーンや見出しに基づき、いっそう戦略的になった。エバンズ氏はそれまで、見るからに人々を引き込むような見出しなら参照トラフィックが増えるだろうと間違って思い込んでいた。
「このことから、我々のFacebookの読者は、ほかのFacebookの読者とは違うことがわかる。業界調査を適用するのは魅力的かもしれないが、クリックベイトは我々のところでは食い付きがよくなかった」と、エバンズ氏はいう。さらに、引用を含めた見だしがFacebookからの参照トラフィックには効果的だと同氏は続けた。ここで断っておくと、Facebookは「煽り」があからさまな記事の取り締まりを約束している。
紙版のオーディエンスは別
タイムズは、プリント版のオーディエンスとは別だと考えているデジタル版のオーディエンスに価値を提供するため、タックスヘイブンに移っている人のリストを暴露した記事のような独占記事については、プリント版より先に、通勤者を狙って午後5時にネットで公開するようになってきている。
新しいオーディエンスを迎え入れていることもあり、エバンズ氏のチームは当面、読者がコンテンツでどのようなやり取りをするのかを引き続きモニタリングしていく。
Lucinda Southern (原文 / 訳:ガリレオ)