英タブロイド紙のサン(The Sun)が運営するゲームサイト、ドリームチーム(Dream Team)は、これまでリテンション問題に苦しんできた。これに対処するため、ドリームチームは昨夏からニュースレターやYouTubeで新コンテンツとなるシリーズ番組を制作しており、そして、いまこの取り組みが結実しつつある。
英タブロイド紙のザ・サン(The Sun)が運営するドリームチーム(Dream Team)は、これまでリテンションの問題に苦しんできた。ドリームチームは無料のゲームサイトで、ユーザーは実在のサッカー選手のデータを用いて、自分好みのクラブを運営をシミュレーションして遊ぶことができる。
同サイトで遊ぶには登録する必要があるが、前年度のオーディエンスの3分の2の登録者にあたる、およそ100万人を毎年獲得し続けなければならない有様だった。オーディエンスの再獲得は、ただ無駄というだけでなく、オーディエンスの維持以上にコストがかかる。
解約の問題に対処するため、ドリームチームは昨夏からニュースレターやYouTubeで新コンテンツとなるシリーズ番組を制作しており、そして、いまこの取り組みが結実しつつある。ドリームチームは昨年のカスタマーのうち68%を引き留めることに成功した。これはリテンション率にして前年度から21%増だ。さらに同サイトはブランデッドコンテンツの新クライアントも獲得している(サンは、2019年度の正確な加入者数については情報提供を拒否している)。
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ドリームチームには、サイトとソーシャルプラットフォーム上でサッカー動画コンテンツを配信する、およそ10人体制のチームを抱えている。チューブラーラボ(Tubular Labs)のデータによれば、以前は5000万回だった動画再生数が、7月には1億回を超えた。コンテンツおよびコミュニティ担当リーダーのエドワード・ベアリーマン氏は、ニュースUK(News UK)に対し、Facebookとインスタグラム(Instagram)は新規オーディエンスを獲得するには適したファネルだが、同チームは既存のファンベース向けの取り組みを強化する必要があったと語っている。
「コンテンツに対してフランチャイズのアプローチを強化している」と、同氏は明かす。「デジタルコンテンツ分野において、オーディエンスの獲得は容易な一方で、ロイヤルティとリテンションに苦しむブランドは多い」。
ユーザー調査を行った結果
ドリームチームがオーディエンスへ調査を行った結果、普通のサッカーニュースよりもサッカークラブ運営シミュレーションのコンテンツのほうが需要が高いことが判明した。それを受けてドリームチームは、2018年8月の欧州サッカーシーズン開幕からコンテンツ開発編集者のジミー・ロイド氏らの考案したニュースレターの「ドリームチーム・コーチ(Dream Team “Coach”)」を発行している。執筆するのはサッカー専門家のニック・エリオット氏だ。毎週木曜日に発行される同ニュースレターでは、より臨場感を出すための取り組みとして、どの選手がその週末に調子が良いかといったヒントを記載しており、登録者はこれを参考に自分のチームの選手を入れ替えることができる。
ベアリーマン氏によると、ニュースレターの登録者は100万人を突破し、開封率は15から20%となっているという。コンテンツの大半は自己完結型で、リンクや外部の記事へのクリックスルー率などは追跡していない。
「これは大きな変化で、さまざまな面で戦う必要があった。メールは決まった使い方しかせず、それに慣れてしまっているのが普通だからだ」と、ベアリーマン氏は語る。「我々はレッドボックス(Red Box: ニュースUKのサブスクタイトル、タイムズ・オブ・ロンドンが発行する政治分野のニュースレター)に着目し、オーディエンスがメールに何を求めているかを観察した。オーディエンスはプラットフォーム外の配信のように、あちこちに飛ばされるのを嫌がることが判明した」。
定期的に動画コンテンツも
ドリームチームはニュースレターの拡張コンテンツとして、2月にコーチTV(Coach TV)というYouTubeチャンネルを立ち上げ、サッカーニュースを扱う20分間の雑談動画を毎週配信している。YouTubeの各動画は2万再生ほどとなっており、昨シーズンのユニーク視聴者数は50万以上だった。ベアリーマン氏によると、ここ12カ月で視聴者のリテンション率は20%から40%に倍増しているという。昨シーズンの視聴時間は3分だったのに対し、こちらも今年のセカンドシーズンでは6分となっている。
BuzzFeedなど、シリーズ番組を作るパブリッシャーが増えている。1本きりの番組と比べて視聴者が戻ってくるためだ。こういった定期的にオーディエンスが視聴するコンテンツに対してブランドは予算を投じる。
「コーチTV」の成功を受けて、ブックメーカーのベットウェイ(Betway)はブランデッドコンテンツキャンペーンのシーズン契約を結んだ。ベットウェイはロゴの掲載だけでなく、「コーチTV」のオーディエンスに独占的なオッズやサービスを提供している。ドリームチームの登録者のうち5割がベッティングのアカウントを持っており、両者の相性は良い。このシーズン契約はサンではなく、ドリームチームとの独占契約となっており、費用は104万ポンド(約1.3億円)だ。ベアリーマン氏によると、ベットウェイへのトラフィックのコンバージョン率は2.5%で、ドリームチーム内コンテンツへのコンバージョン率と比べても遜色ない数字だという。
サブブランドの運用も好調
昨年、ドリームチーム自身もほかにサブブランドやフランチャイズで10から12のブランデッドコンテンツキャンペーンを展開した。そんなサブブランドの一例が、元イングランド代表サッカー選手のアレックス・スコット氏がほかのサッカー選手とともに出身地を訪れる番組を毎週配信しているホームタウングローリー(Hometown Glory)だ。ドリームチームは現在、消費財ブランド2社とシーズンスポンサー契約について話し合いを行っている最中だ。
また、ベアリーマン氏はほかにもフランチャイズの取り組みを進めていると明かし、次のように述べた。
「オンラインのサブブランドやフランチャイズをさらに増やし、知名度の向上と新規オーディエンスへのリーチを強化していきたい」。
Lucinda Southern(原文 / 訳:SI Japan)
Image: Dream Team via Facebook.