ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)の「コンセプション(受胎;Conception)」は、母親体験をさまざまな視点で描く動画シリーズだ。1本につき4~5分で、6エピソードからなるこのシリーズ。今回、すべてを同時にサイトへ掲載した。その狙いは、ビジターに動画を連続視聴してもらうことだ。
ニューヨーク・タイムズ(The New York Times:以下、NYT)の「コンセプション(受胎;Conception)」は、母親としての体験をさまざまな視点で描く動画シリーズだ。あるエピソードでは、子どもの誕生後に性転換した父親にスポットを当てる。別のエピソードの主役は、不妊に悩む姉と、思いがけず妊娠した妹の2人だ。
1本につき4~5分の6エピソードからなるこのシリーズは、今年1月に公開された。ただし、1日1本でも週1本でもなく、NYTはすべて同時にサイトに掲載した。その狙いは、ビジターや有料購読者に、複数の動画を連続視聴してもらうことだ。
NYT動画オーディエンス成長・プログラミング責任者、フランチェスカ・バーバー氏によると、1月の「コンセプション」視聴者のうち、10%は3本以上のエピソードを一気見していた。「要するに、1セッションにつき12~15分のサイト滞在時間だ」と、同氏はいう。
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一気見戦略の狙い
NYTはシリーズものの短編動画の制作に力を入れており、視聴者にリピーターになってもらうことだけでなく、セッション時間を伸ばしてもらうことも念頭に、コンテンツのプログラミングに工夫を凝らしている。コンテンツに費やす時間が長くなれば、有料購読者になる確率も上がると見込んでいるのだ。
ネットカルチャーを掘り下げる番組、「アマンダ・ヘスのインターネット探検(Internetting with Amanda Hess)」の第2シーズンは、7月30日に最初の3エピソードがNYTサイトで同時公開された。今後数週間のうちに、3~4エピソードの同時公開があと2回控えている。
「3エピソードを一気見したユーザーは、第2弾、第3弾を楽しみにまた戻ってくると考えている」と、バーバー氏はいう。
NYTは、来年の短編動画の制作について具体的な数値目標を設定していないと、バーバー氏はいう。また、「ある歌の日記(Diary of a Song)」などいくつかの番組については、ふさわしい内容と出演者が見つかれば、不定期に制作を続ける予定だという。
YouTubeでは週1本
一気見を戦略に取り入れた背景には、NYTのサブスクリプション事業がある。NYTはサイト上では複数エピソードを同時公開しているが、もうひとつの主要な短編動画の視聴手段であるYouTubeでは、依然として週に1エピソードを配信している。今年1月の「コンセプション」でそうしたように、「アマンダ・ヘスのインターネット探検」の第2シーズンでも同じ方針をとるつもりだと、バーバー氏はいう(今秋公開予定の、母親以外にも視野を広げた「コンセプション」第2シーズンでも、同様のアプローチを採る見込みだ)。
NYTは、YouTubeをオーディエンス構築のためのプラットフォームと考えており、有料購読促進の手段とはみていない。つまり、YouTubeでNYTの動画がたくさん再生され、いずれユーザーの一部が有料購読者になってくれればいいという考えだ。
「我々の事業は有料購読者ファーストであり、我々のサイトやプラットフォームの利用者に、ほかでは手に入らないものを提供することは仕事の一部だ」と、バーバー氏は話す。「YouTubeでは週1本の戦略がうまくいっている。YouTubeのオーディエンスは幅広い。こちらにも一気見する人はいるが、むしろ毎週安定して番組を配信し、コミュニティーとつながることで、いずれオーディエンス構築につながると考えている」
Sahil Patel(原文 / 訳:ガリレオ)