アトランティック(The Atlantic)が毎年9月に開催するフェスティバルは、同社の年間イベント収入の約3分の1を占める、ブランド最大の年次イベントだ。同社は、今年はバーチャルで開催されることになっているこのフェスティバルに、100万人が参加することを期待している。
アトランティック(The Atlantic)が毎年9月に開催するフェスティバルは、同社の年間イベント収入の約3分の1を占めるブランド最大の年次イベントであると、最高執行責任者(COO)、アリテ・ワイラー氏はいう。
現在アトランティックでは、コンテンツ、オーディエンス、売上の面で遅れをとらないよう、ほかの多くの企業にならってフェスティバルをバーチャル化している。しかし、同社のイベントチームは2カ月前と比べ80%も縮小した。
これにより、フェスティバルの企画数は減少することになる。残り少ないイベントチームは、社内の他部署に頼りつつ、4日間のイベントをやり遂げなくてはならない。また、アトランティックの野心的な目標を達成するためには、インターネット上でフェスティバルを広く宣伝する必要がある。これまで、通常の対面イベントとして開催された際、来場者数は2000人程度だった。しかし、アトランティックはそれをはるかに上回る100万人が、今年のフェスティバルに参加することを期待している。
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今年の目標は大規模化
リアルのアトランティックフェスティバルは、3日間にわたり開催され、メインステージのコンテンツを毎日4~5時間提供していた。今年は「メインステージ」の内容が変更され、9月21日から24日までの4日間、夜の時間帯に90分番組として同社のサイトやほかのプラットフォームで、オーディエンス向けにライブストリーミングで実施する形式になった。また、期間中は小規模フォーラムやパネルも開催される。
これまでのアトランティックフェスティバルは、会場のスペースの制約により参加者が2000~3000人に限られていた。今年の目標はさらなる大規模化だ。
開催まで2カ月を切るなか、同社は雑誌媒体に複数の自社広告を掲載。ワイラー氏によると、今後は担当チームがSNSでプロモーション投稿を実施するほか、自社や提携他社のメーリングリスト登録者への、メール配信通知も実施していくという。
バーチャルイベントの可能性
アトランティックはこれまで、企業全体の売上のうち、20%をイベントから獲得しており、その大部分はスポンサードによるものだった。しかし、今年開催されるのはバーチャルイベントのみであるため、イベント由来の売上は全体の5~10%にとどまる見込みだという。
また、同社は5月のレイオフで、イベントチームの大部分を解雇し、全従業員の17%にあたる68人の人員削減を実施。イベント担当部署である、アトランティックライブ(Atlantic Live)は50人から10人に縮小されたという。
残る10人は、社内エージェンシーのリシンク(Re:Think)などの他部署とこれまで以上に緊密に連携し、クリエイティブや動画、制作スキルを活かしている。また、イベント開催にはバーチャルイベントのプラットフォームベンダー、テーム(Tame)を利用しているという。
「我々は、バーチャルイベントの可能性を注視している。場合によっては再びチームを拡大し、より多くのスタッフを投入する可能性もある」と、ワイラー氏は話す。
今年のアトランティックフェスティバルは、オーディエンスの拡大を目的に無料で公開され、スポンサー9社からの協賛でマネタイズを行う。昨年のイベントには計16社のスポンサーがついていた。ワイラー氏は、イベント制作費の削減に伴い、スポンサー料は年々少しずつ下がっていると補足したが、具体的な金額については明言を避けた。
成功の鍵はインタラクティビティ
アトランティックは昨年、100回以上イベントを開催している。2020年に関しては、バーチャルイベントに切り替えてからも開催は20回を数え、いずれは週に1回のペースでバーチャルイベントを開催することを見込んでいると、同氏は述べる。いくつかのバーチャルイベントはスポンサー付きで開催されたものの、それ以外は編集部の予算のみで制作されたという。
これまでに開催されたバーチャルイベントは、対面で開催した場合の5~10倍の参加者を集めている。会場の規模にもよるが、リアルのフォーラム型イベントの場合、参加者は50~150人程度であるのに対し、バーチャルイベントでは平均で750~1000人が参加登録を行ったと、ワイラー氏は述べる。
「インタラクティビティを多く盛り込むほど、より効果的で優れたイベントになる」と、イベントマーケティングプラットフォームのスプラッシュ(Splash)でCEOを務めるベン・ハインドマン氏はいう。しかし、アトランティックが開催を目指しているような大規模イベントでは、求められるようなネットワーキングや、インタラクティビティを実現するのは不可能だろうとも指摘した。
こうした課題を払拭し目標を達成するため、今年のアトランティックフェスティバルでは、日中の時間帯に小規模なブレイクアウトセッション(分科会)や、20人規模のラウンドテーブルも開催し、参加者が登壇者や編集者と直接話す機会を設ける予定だと、ワイラー氏は述べた。
[原文:How The Atlantic is moving its biggest festival online]
KAYLEIGH BARBER(翻訳:的場知之/ガリレオ、編集:Kan Murakami)