SNS 活用で 有料登録者数 を増やす、エコノミスト の手腕

英経済誌エコノミスト(The Economist)はこの半年間、人々を自社サイトに戻して有料登録させることをソーシャルメディア戦略の柱にしてきたが、その努力が実を結びつつある。

ソーシャルメディアから、人々が登録(register:月5記事までの利用)して最終的に有料登録(subscribe:無制限の利用)できる自社のページにトラフィックを戻そうと、ソーシャルメディア戦略を変更して以来、エコノミストでは、ソーシャルメディアのプラットフォームから流入する月間参照トラフィックが180%増加した。現在、サイトへのトラフィックの約3分の1は、ソーシャルプラットフォームから流入していると、エコノミストのソーシャル担当責任者を務めるケビン・ヤング氏は語ったが、それによって誘導されている有料登録者数について具体的な数字は明らかにしようとしなかった。

こうした焦点の変更は、消えつつあるサードパーティのサイト追跡用Cookieや厳格化するプライバシー規制、GoogleやFacebookの多数のログインオーディエンスによる脅威により打撃を受ける、流動的で不安定なデジタル広告市場よりも、一定の直接的な読者収益を好むパブリッシャーが増えているなかで行われる。パブリッシャーは現在、核となる戦略的目標に達するためにあらゆる手を尽くしている。常にコンテンツが有料であるため、かなり以前に中心となる支持層が変わったエコノミストの場合、成長の維持とつなぎ止めが課題だ。

参照トラフィックのこうした増加は主に、チーム規模の拡大やコンテンツのアウトプット、サブスクリプションを念頭にした、ソーシャルプラットフォームに人気コンテンツを再掲載させる方法に対して、よりきめ細かいアプローチを採っていることの成果だ。以前は、サイトへの多くの訪問を促すコンテンツに集中するのではなく、ソーシャルメディアで共有するコンテンツを増やすというのが、エコノミストのアプローチだった。

「ニュース編集室全体のコンテンツと人材により、ソーシャルメディア上で自社のジャーナリズムをよりよく示し、さらに完全に統合されたデジタル戦略に移行するのが目標だった」と、ヤング氏は語る。

もっとできることはあった

エコノミストは、編集者ごとに異なるプラットフォームに公開するのではなく、ソーシャル担当編集者10人全員を結集してすべてのプラットフォームで活動させてきた。別の部員10人が、さらに広範な権限によりソーシャルに投稿している。

各プラットフォームのオーディエンスに合わせたコンテンツの制作は、これまでも推奨されてきたアプローチだったが、それぞれのプラットフォームに公開されるコンテンツを差別化するために、エコノミストにできることはもっとあった。データやグラフィック、写真、動画、ラジオを担当する各部門にまたがって働くチームが、協力して、より特化されたコンテンツを制作している。そのひとつの結果が、インスタグラムのストーリー(Instagram Stories)に公開している「ウィークエンド・リーズ(Weekend Reads)」だ。ウィークエンド・リーズは、4月にスタートし、画像やイラスト、グラフィック、オーディオグラム、スライドショーを用いて、毎週日曜日にもっとも適した記事6本を紹介して、リピート訪問を促している。

「インスタグラムストーリーの、すぐに反応が飛び交う性質やレギュラー枠は、リピート訪問を促し、フォロワーのあいだでロイヤルティを確立するのに向いている」とヤング氏はいう。

エコノミストは、たとえば、その週のもっとも重要な記事5本と特定のトピックを深く掘り下げた記事をそれぞれ扱う「リーダー(Leaders)」と「ブリーフィング(Briefings)」のセクションなど、パフォーマンスが良いコンテンツをさらに注視している。「気候問題」のブリーフィングは、過去半年間にデジタル版からもっとも多くのサブスクリプションをもたらした。

「こういったデータは、どの記事をもう一度公開するか、または、ソーシャルへの公開スケジュールを立てる際に回転率を上げるかといった決定を下すのに役立つ可能性がある」と、ヤング氏は語る。

インスタグラムに注力

エコノミストのフォロワー数がソーシャルプラットフォームのなかでもっとも少ない440万人であるインスタグラムは、これまでも主要な焦点だった。エコノミストは、4月にインスタグラムへの投稿を本格的に増やしはじめた。ソーシャルブレード(SocialBlade)のデータによれば、3月には週に4本ほどだった投稿数は、9月から週に50本前後になっている。これが、この半年間で100万人以上のフォロワー増加につながっており、10月にははじめて、インスタグラムのアカウントに流入した月間参照トラフィックがLinkedIn(リンクトイン)を上回った。

クラウドタングル(CrowdTangle)のデータによると、予想されることだが、フォロワー数が増えたことにより、エンゲージメント率(投稿に「いいね!」やコメントをしたユーザーの割合)は、2018年12月の0.52%から2019年10月の0.28%まで下がっている。ソーシャルベイカーズ(SocialBakers)によれば、「いいね!」とコメントが13万4000件寄せられ、エンゲージメントがもっとも高かったエコノミストの投稿は、今年の野生動物のおもしろ写真コンテスト「コメディー・ワイルドライフ・フォトグラフィー・アワード(Comedy Wildlife Photography Award)」を選ぶコンテストだった。

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出典:エコノミストのインスタグラム。2019年度コメディー・ワイルドライフ・フォトグラフィー ・アワードへの応募作品

フォロワーやエンゲージメント率のような、どちらかというとソフト面を扱う指標は、ロイヤルティにおける適した代替指標にできるが、結局のところ、有料登録できるサイトに人々を誘導するのが最終目標だ。

最強のセールスポイント

これまで、エコノミストのアプローチは、ソーシャルで共有するコンテンツを増やしてユーザーを活気づけるというもので、ジャーナリズムが最強のセールスポイントだと確信していたものだった。出版部数監査局(Audit Bureau of Circulations)によると、エコノミストのデジタル版と印刷版の契約者数は160万人で、そのうち79万人はデジタル版の契約を結んでいる。より競争の激しいサブスクリプション分野では、ソーシャルメディア向けコンテンツがより戦略的な役割を果たし、有料登録を促している。エコノミストも、Googleのデジタル・ニュース・イニシアティブ(Digital News Initiative)が出資するプロジェクトの一環で、YouTubeを利用して契約者を誘導している。このプロジェクトでは、動画内のストーリーが人々をエコノミストに移動させ、有料登録してさらに視聴できるようになっている。

Lucinda Southern(原文 / 訳:ガリレオ)