トムソンロイター(Thomson Reuters)が2019年10月に買収し、傘下に組み入れたロイターイベンツ(Reuters Events)現在、対面型イベントを復活させながら、2022年に向けた戦略の練り直しに取り組んでいる。
トムソンロイター(Thomson Reuters)が2019年10月に買収し、傘下に組み入れたロイターイベンツ(Reuters Events)は昨年、世界が新型コロナウイルス禍に見舞われると、ほかの多くのパブリッシャーのリアルライフ(IRL:in real lifeの略)事業と同様に、イベントのバーチャル化を余儀なくされた。そして現在、同社は対面型のイベントを復活させながら、2022年に向けた戦略の練り直しに取り組んでいる。
イベント事業の責任者を務めるマイク・セッターズ氏によると、ハイブリッド型イベントの存続はすでに「確定事項」だという。特に、同社の目玉イベントでもあるネクスト(Next)、インパクト(Impact)、モメンタム(Momentum)は、旅行先としての魅力も兼ね備えた、いわゆる「デスティネーションイベント」で、来年のラインナップ入りが確実視されている。
イベントの開催国や開催都市の住人には、会場に直接足を運んでもらうことが重要だが、これら「デスティネーションイベント」は、本来世界中のオーディエンスにアピールすることを意図しており、「バーチャルな要素を残すのに適している」とセッターズ氏は説明する。ただし、2022年に向けたバーチャル、ハイブリッド、対面型の組み合わせ方については、いまだ「模索中」とのことだ。
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ロイターイベンツには現在、約150人のスタッフが在籍している。同社はもともと、FCビジネスインテリジェンス(FC Business Intelligence:FCBI)という創業30年の非公開企業だった。それを2019年10月にトムソンロイターが買収し、社名変更を行った。これはロイターにとっては実に10年ぶりの企業買収だったという。現在はロイターニュース部門の統轄下で、主に製薬、エネルギー、自動車、テクノロジー業界向けのイベントを開催している。
ネットワーキングへの繰越需要
エクスペリエンシャルエージェンシーのホークアイで、最高経営責任者(CEO)を務めるW・ジョー・デミエロ氏は、「2022年に向け、ハイブリッドとバーチャルの両面で、クライアントのイベントへの関心が高まっている」と話す。
実際、同社におけるこの種のイベントの売上高も、ロイターイベンツと同じく前年比で増加しているという。デミエロ氏によると、背景にあるのは交流やネットワーキングに対する繰越需要だ。とりわけ、対面とハイブリッドの接触機会に関しては、どの業界でもこの繰越需要が大きな後押しとなっている。数社のクライアントが「完全バーチャルにこだわる」一方で、ホークアイのクライアントが計画するイベントは、その大半がハイブリッドだという。
バーチャルイベントの開催で十分な実績を上げているロイターは、対面型のイベントが復活しても、バーチャル要素の維持という趨勢から大きく外れることはないだろう。
この2年間で開催されたイベントは140以上
ロイターイベンツはこの2年間で、140以上のイベントを開催した。なお参加者は、延べ40万人を超えるとセッターズ氏は述べている。具体的な売上高は明かされなかったが、イベント収入は少なくとも前年と比べて100%増加しており、これは主に、バーチャルイベント(同氏は複数日にわたる集会と定義している)、およびウェビナーなどのデジタルコンテンツのスポンサーシップ収入の増加によるものだ。実際、過去2年間で500社以上の新規スポンサーを獲得した実績を背景に、ひとつのイベントで100万ドル(約1億1400万円)以上の売上をたたき出したケースもあったという。
ロイターイベンツが開催するバーチャルイベントは一部入場無料だが、10月にヒューストンで開催した対面イベントを含め、2021年に同社が開催したイベントの7割は、有料開催だった(ロイターは有料参加者数やチケット収入を公表していない)。
なお、2022年に開催されるすべての対面型イベントには、有料チケットの要素が含まれる予定だという。
10月にヒューストンで開催されたイベントは、ダウンストリーム(Downstream)という、石油・ガス業界向けのイベントだった。4日間のバーチャルイベントに加え、オフラインでの展示会とカンファレンスが2日にわたって開催された。バーチャルでは5000人が登録し、リアルの会場には1500人以上が足を運んだという。一方、同じく10月に開催された気候変動に関するバーチャルイベント、インパクト(Impact)には、2万6000人が参加した。さらに、12月1日から3日間開催されたバーチャルイベント、ネクスト(NEXT)に関しては、12月2日現在で3万3000人の参加登録があった。
「ダウンストリームの成功で確信した。健康と安全のガイドラインを厳守すれば、対面イベントの復活は可能だ」とセッターズ氏は話す。ダウンストリームでは、ワクチン接種証明書の提示を義務づけ、会場では新型コロナウイルスの迅速検査を実施し、マスクの着用も奨励した。なお、次に控えている対面イベントは、来年3月にボストンで開催される「2022年USオフショアウィンド(US Offshore Wind 2022)」だ。
オミクロン変異株の影響
ただ、オミクロン変異株がこれらの計画に水を差す可能性は否定できない(この最新の変異株の影響はいまだ不明だ)。「オミクロン株については、今後の動向を注視している」とセッターズ氏は話す。それでも、代替案は単純明快だ。「コロナ禍のせいで、現在のプランが中断を余儀なくされるなら、バーチャル開催に切り替えるだけだ」。
[原文:How Reuters Events maintains a role for virtual as it returns to in-person events]
SARA GUAGLIONE(翻訳:英じゅんこ、編集:村上莞)