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バーチャルCESにおける、パブリッシャーの売り込み戦略:「予定表を白紙にさせるのは、賢明ではない」

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コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)は言うまでもなく、電子機器の業界向け見本市だが、メディア企業にとっての主役は長らく、電子機器製品/サービスではなく、いわばマラソンセールスミーティングとなっている

だが、今年の3日間にわたる「談笑会」は1月第3週、初めてバーチャルでの開催となった。各パブリッシャーのセールスチームはそのため、1年の行方を左右するこの重要な会に例年と同様の爪痕を残すべく、各々戦略を練っていた。

すべてがオンラインで行なわれる今年、パーティやホテルのロビーにおける偶然の出会いは望めない反面、効率性の大幅な向上が予想される。

CNETは例年の倍の集客

たとえば、CNETの営業チームは自宅から参加する人々全員をターゲットにし、過去最高の人数をCESクライアントミーティングに招いている――ミーティング参加予定人数はこれまでの2倍近いと、CNETメディア(CNET Media)のチーフレベニューオフィサー、ケイティ・キューリック氏は断言する。氏によれば、1対1のミーティングもないことはないが、CNETが予定している50のミーティングの多くは、大人数で行なわれるという。

「これまで、マーケティングチームの全員参加は叶わなかった」とキューリック氏。「しかし、我々が主催する今回のミーティングでは、さまざまなマーケター部隊が一堂に会することになる」。

クライアントを呼び込むため、パブリッシャー勢がかつて多用したエンターテインメント重視策を採るところもある。「2020年は、いわゆる雑談の機会が著しく減少したわけだが、そのおかげで、余計な諸々をかなりの部分、排除できた」と、ジフ・メディア・グループ(Ziff Media Group)のセールス/マーケティングソリューションSVP、エヴァ・スミス氏は言う。「決定的な数字を示すExcel[スプレッドシート]を見せながらのビデオ通話は、極めて効率の良い、新たな形のカクテルパーティにほかならない」。

メディアリンクも熱意は衰えず

この先、対面会合が安全となったあとも、こうしたバーチャル代替案は残るのか? それは何とも言えないが、少なくともいま現在、人々にCES不参加を思いとどまらせる、という目的は果たせているようだ。

「予定表を白紙にさせるのは、賢明ではない」と、メディアリンク(MediaLink)創業者マイケル・カッサン氏は言う。

カッサン氏によると、今回、メディアリンクだけで「数百の」イベントをクライアントに向けて用意している。昨年に同社が主催したミーティングは約1000回に上り、数自体は減っているものの、このイベントに賭ける同社の思いは変わらないという。今回初めて、同社はオフィシャルプログラマーとして、C Space(シー・スペース)と題されたイベントのひとつを主催する。同社はさらに、アイハートメディア(iHeartMedia)と共同でネットワークパーティを開催する予定で、SpatialWebを利用したネットワーク機能を提供するだけでなく、人気アーティストのビリー・アイリッシュ氏とデュア・リパ氏も登場させる。

「メディアリンクの力を総動員する」とカッサン氏。「これまでとは、見かけも雰囲気もまったく違うものにする」。

新機軸を伝えるコンデナスト

また、このイベントでは例年、いくつか大きな契約が締結されるが、多くのパブリッシャーの場合、主な目的は参加者のエデュケーションにある。つまり、その主眼はCESを利用してクライアントに新たな物の見方を伝えることにあり、今年はバーチャルイベントという性格上、そして消費者行動の変容に対するマーケターの関心の高まりを受けて、この戦略をなおいっそう押し進める模様だ。

「今回のイベントは、今年の方向性を決め、準備を整えるための一手段とする」と、コンデナスト(Condé Nast)のカルチャー部門のマーケティング部を率いるアリス・マッコーン氏は言う。

コンデナストは例年、ワイアード(Wired)の本社を雑談の場や、WIRED(ワイアード)誌および姉妹ブランドの別の側面を見せるための、いわばクラブハウスとして使っていたが、今年はバーチャルプログラムをふたつ主催し、同社の一流エディターによる、スラック(Slack)のCEOスチュアート・バターフィールド氏や元米国防長官アッシュ・カーター氏といった著名人へのインタビューを配信する。

コンデナストが招待した顧客や関係者を含め、約1300人が参加申込を済ませており、これは2020年にワイアード本社で開催したプログラムへの参加者とほぼ同数だと、マッコーン氏は言う。

また、バーチャルイベントとは別に、パブリッシャー勢は新たな収益機会も探ることになる。大半のパブリッシャーが長年重用していたCESショーフロアツアーの代わりに、多くは今年、特定のテーマを深く掘り下げる、いわゆる「ディープダイブ(Deep Dive)」を実施し、5Gの一般化や自動運転車といった話題について一流エディターに議論させる。これらにはスポンサーが付いており、多くのパブリッシャーが昨年のイベントで手にした額と少なくとも同程度の収益を見込んでいる。ワイアードも然りであり、今年のCESにおけるスポンサー料は昨年の収益と同等になるという。さらに、CNETの場合は730%増に上ると、キューリック氏は語る。

M&Aへの影響はなさそう

CESの陰で、人員採用を計画しているところもある。テックブランドのインヴァース(Inverse)とインプット(Input)を有するバッスル・デジタル・グループ(Bustle Digital Group)はCESの翌週、インプット編集長ジョシュア・トポルスキー氏とインターネット・オブ・シングス・コンソーティウム(Internet of Things Consortium)CEOグレッグ・カーン氏による、招待者限定のパネルディスカッションを開催する。

一方、こうしたバーチャルミーティングで締結される契約の数/規模が過去のそれと肩を並べるものになるのかは、結果を見るまではわからない。ただ、少なくともM&Aに関しては、CESのバーチャル化がネガティブな影響を及ぼすことはないだろうと、識者らは言う。

「2020年上半期では、当初に冷え込みは見られたものの、Zoomオンリーの“モダリティ(Modality:様式)”がM&Aの妨げとなったというデータは、まったくもって存在しない。大いに注目すべき点だ」と、投資銀行JEGIのビジネスデベロプメント部門長デヴィッド・クラーク氏はeメールで回答した。「現在市場で動いている、ほかのより強力な勢力――なかでも、巨額のプライベートエクイティ(未公開株式)『ドライパウダー(Dry Powder:手元資金)』――の存在に鑑み、2021はM&Aの非常に盛んな1年になると、我々は見ている」。

[原文:‘Never smart to let things fall off people’s calendars’ How publishers are selling during a virtual CES

MAX WILLENS(翻訳:SI Japan、編集:長田真)