「タイムズ(The Times)」と「ザ・サン(The Sun)」を所有する英ニュースUK(News UK)は、プログラマティック、動画、モバイル、そしてブランドコンテンツと、4つのコア分野で強力な販売競争力を有するため、両メディアのデジタルコマーシャルチームを再編成した。
「タイムズ(The Times)」と「サン(The Sun)」を所有するニュースUK(News UK)は、両メディアのデジタルコマーシャルチームを再編成した。プログラマティック、動画、モバイル、そしてブランドコンテンツと、4つのコア分野で強力な販売競争力を有するためだ。
3カ月ほど前に変革の一環として、同社初のプログラマティック担当トップに、イアン・ホッキング氏を迎え入れた。元イーベイ(eBay)でプログラマティックセールスチーフを努めた同氏。その使命は、ヘッダー入札をはじめとするプログラマティック全般や、「タイムズ」のログインデータを使ったアドターゲティングといった、幅広いデータターゲティングの機会をすべてのセールススタッフに徹底させることだ。
これは「サン」にすれば、既存読者や新規潜在顧客へのターゲティング能力を拡大することにつながる。それは、まさに関連企業であるニュースコープ(News Corp)やアンルーリー(Unruly:動画アドネットワーク企業)から無料提供される資産以上のものといえるだろう。
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「我々に必要なのは、ほかのパブリッシャーのコピーキャットにならないデータソリューションだ」と話すのは、ニュースUKでデジタル戦略セールスおよびパートナーシップの担当ディレクターを務めるオリバー・ルイス氏。「我々は、独自の強みを活かしていかなければならない」と、彼は加えた。
「タイムズ」は宝の山
2010年以降、「タイムズ」は強固なペイウォールを維持しており、これはデータの金脈といえる。しかし、現在に至るまで、この見識をコマーシャル部門と共有する機会が最大限活かされてはいなかった。それが変わろうとしている。
同パブリッシャーによると、「タイムズ」と「サンデータイムズ」には、紙媒体とデジタル版有料会員合わせて40万2000人の読者がおり、またタブレットアプリの契約者も10万人弱いるという。多くの人がデバイスを超えて単一のユーザーIDを利用している。
「『タイムズ』は上質なファーストパーティーデータの宝庫だ」とルイス氏。「我々はプログラマティックターゲティングを可能にする豊富なセグメント分類法をもっている。クロスデバイスのグラフは必要ない。単一IDログインを採用しているので、我々は多様なデバイスに対して一度にクリエイティブを提供できる。上質なクロスデバイス販売が可能となるのだ」。
データ活用が広まる
さらにルイス氏によると、同社はオープンWeb上でオーディエンスの位置認証手段(類似品ではない)の開発にも興味を示しており、2017年さらに探索を深めていくという。
また、各メディアをまたいだ消費動向をもとに、読者のコンテンツ消費データのマッピングを行う。これはアフィリエイトプログラムと、たとえば「タイムズクラブ」などの会員特典や読者がクリックした広告、そしてニュースレターのエンゲージメントによって追跡される。
タブロイド紙の「サン」での戦略は異なる。同メディアでは課金制(ペイウォール)を中止したからだ。昨年の1年間をかけて、同サイトのトラフィックは課金制実施前のレベルにまで回復。インターネット調査企業のコムスコア(comScore)によると、いまでは月間2100万人のユニークユーザーを抱える(うち1800万人はモバイル)。
異なる「サン」の戦略
「サン」のコマーシャルチームはアンルーリーチームと連携をとり、オーディエンスを拡大する方法を探っていく。また、課金制を実施していた時期の読者データが大量に残っているため、今後のプロセスをサポートする情報源となるだろう。これは広告主向けに、オープンエクスチェンジでプログラマティックなターゲティングをするために、より多くのデータを公開していくということではない。むしろ、データはエージェンシーとの直接的なデジタルアド取引を保証するのに使われ、のちにプログラム処理される。
つまりは、在庫予約型固定単価取引(オートメイティッドギャンティード)として知られるメソッドだ。これらのパッケージは両メディア共通のコマーシャルチームによって本格的に売り出される。このプランは3カ月ごとに新しいデータや動画、モバイル主導の製品を市場に出していく予定だ。
「エージェンシーが直接的な出費をプログラマティックバイイングのルートへと移行しているのを見聞きしている。我々もそれに備えないといけない。2017年、我々にとって真の好機となるのは、クライアントを在庫予約型固定単価取引(オートメーティッドギャンティード)へと移していくことだ」とルイス氏は話す。
バイヤーからは好印象
来るべき変革はバイヤーの興味を掻き立てている。コミュニケーションマーケティングを手掛けるマインドシェア(Mindshare)のデジタルパブリッシング部門、アフィニティ(Affinity)でチーフを務めるシャーロット・タイス氏は、パブリッシャーというのは歴史的にも「悪名高い秘密主義」であったので、ニュースUKによるデータ公開はエージェンシーに歓迎されるだろうと話した。
一般的に、広告主にとって動画は最大の好機と考えられているため、アンルーリーとの統合が風向きを変えるだろう、と彼女は加えた。「アンルーリーによって彼ら新聞社は現代化される。アンルーリーとニュースUKブランドが統合する道を探るのは良いことになるはずだ」。