メディアの新しい収益アプローチ:同業他社へのソフトウェア販売

ブランドに広告を提供するだけでなく、クライアントへサービスも販売する、デジタルプロダクト企業のようなパブリッシャーが増えはじめている。

2019年8月上旬、インフォーメーション(The Information)は、プロダクトの中核に力を与えるニュースレターテクノロジーの販売をアクシオス(Axios)が計画していると報告した。6月に遡れば、アドバンス・ローカル(Advance Local)内でデジタルプロダクトを開発するインキュベーター、アルファ・グループ(The Alpha Group)がオーディエンス成長責任者をはじめて雇用。そして、プロジェクト・テキスト(Project Text)向けの新しいビジネスとして、レポーターがオプトイン読者に直接記事のテキストを提供できるようにするサービスを盛り上げた。その翌月、ワシントン・ポスト(Washington Post)は、クライアントが1カ月以内に、新しいウェブサイトの立ち上げ・運用を可能にする同社のコンテンツ管理システム(CMS)のライトバージョンであるページビルダーテーマ(Pagebuilder Themes)をロールアウトした。それは、ワシントン・ポストが市場に導入している、大量のプロダクトアップデートの一部だ。

しかし、消費者収益へのピボットが技術人材という頭痛の種を伴って起きているように、特に競合他社へのソフトウェアの販売は厄介だ。それは数カ月かかる可能性がある、ゆっくりと進行するプロセスであり、高度に専門的な営業担当者を要する。また、そうしたプロダクトが市場で勢いを増すなか、消費者の要求により、多くのパブリッシャーがまだ使用しているプロダクト向けのロードマップが一層複雑になっている。時間が経つにつれ、パブリッシャーは、プロダクトロードマップはクライアントのニーズによって動かすべきか、自分たち自身のニーズによって動かすべきかを考えなければならなくなるかもしれない。

「常にバランスが重要だ」と、アークパブリッシング(Arc Publishing)のプロダクト責任者、マット・モナハン氏はいう。「最初から、真のSaaS(software-as-a-service)プラットフォームの構築方法について我々はしっかりと考えなければならなかった」。

紙媒体時代との比較

紙媒体時代に遡れば、大手レガシーパブリッシャーが大きな事業を立ち上げ、制作やフルフィルメントなどのサービスを規模の小さな同業者に販売していた。今日、紙媒体が最優先事項でなくなっていても、それらのインフラストラクチャは一部のパブリッシャーにとって依然として有用だ。2019年7月、ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)は、メレディス(Meredith)のスペシャル・インタレスト・メディア(Special Interest Media)グループと提携し、一連の雑誌の特別号を配信することを発表した。

タイムズは何十年ものあいだ週刊誌を印刷している一方、米国の「ブカジン(bookazine:ムック本)」市場の40%以上を占めると主張するメレディスは、100万を超えるチェックアウトポケット(checkout pockets)をタイムズに提供しており、そこで雑誌の特別号が販売されている。

「そこに持っていくことはできるが、我々が行っている露出度を確認する手段がない。我々の配信の到達範囲を再現することは本当に困難だろう」と、メレディスのスペシャル・インタレストグループの責任者、スコット・モーティマー氏は述べた。

しかし、デジタル時代には、こうした種類の提案を提供できるパブリッシャーはごくわずかで、パブリッシャーたちが構築したプロダクトとサービスのほとんどは広告主向けだった。コンデナスト(Condé Nast)のCNXのようなクリエイティブサービスユニットは、コメディセントラル(Comedy Central)やHGTVなどの放送局向けに業務を行っており、彼らが手掛ける業務のほとんどは、大半のパブリッシャーより余裕があり資金力もあるブランドに向けたものとなっている。

枯渇する営業担当者

多くのパブリッシャーは、レガシーインフラストラクチャと変化を求める野心的計画という好ましくない組み合わせを有しており、これらの課題を理解し、彼らと適切に話すことができる営業担当者を見つけることは困難だ。成長を続けるコーラス(Chorus)を支援する営業チームのために、ボックス・メディア(Vox Media)COOであるトレイ・ブランドレット氏は、メディア企業でブランドを立ち上げた経験のある人、またはパブリッシャーのプロダクトサイドでの経験豊富な人材を探している、と述べている。

「単にソフトウェアをぶら下げて見せようとするだけではない人材を得ることを確実にしたいのであれば、初日から、それがどのように機能するかを理解している人が必要なのだ。彼らは通常、これをすでに経験している」と、ブランドレット氏は語った。

ボックス・メディアは、同社のCMS、コーラスの販売促進に約6人のチームを使っている。ブランドレット氏は、同社は2020年の採用計画を正式に策定していないが、来年中にチームの規模が約2倍になると期待している、と述べている。

内外のニーズのバランス

ただし、これらのプロダクトのさらに大きな障害は、内部と外部のニーズのバランスをとることだ。一部のパブリッシャーは、自社のニーズよりも、市場のより広範なニーズを満たすものを構築することで、これを回避している。

「広く適用可能なプロダクトを開発しようとしている」と、創設以来4つの異なるプロダクトを市場に送り出しているアルファ・グループ(Alpha Group)の創設者マイク・ドナヒュー氏はいう。「私のチームの任務と目標は既存の問題を解決することではない。市場でオープンな機会を模索しているが、それがうまく当てはまり、その組織の残された部分を補うと思えるものが見つかれば、それに越したことはない」。

Max Willens(原文 / 訳:Conyac)