仏紙「リベラシオン」は訪問数を基にペイウォール料金を測る料金体系を採用した。10日のあいだに7回以上サイトへ訪問するユーザーは、購読者登録をする必要がある。購読者の平均的な1回あたりのセッション時間は11分50秒。登録していない人(フリーローダー)の場合、その時間は3分11秒まで低下するという。
フランスの日刊紙「リベラシオン」は、ロイヤリティの高い読者向けに、訪問数をもとにした料金体系のぺイウォール方式ビジネスモデルを採用した。同パブリッシャーによる報告では、この取り組みは功を奏しているという。
7月以降、同ニュースサイトのユーザーが、10日のあいだに7回以上訪問すると、購読者登録を勧めるメッセージが表示されるようになったという。購読者は複数の記事閲覧が可能なので、より長い時間サイトに滞在できる。平均的な購読者の1回のセッション時間は11分50秒だ。登録をしていない人でも記事は読めるが、ほかの記事は読めないので、その時間は3分11秒まで低下する。
数年前、コムスコア(comScore)が発表したフランスの新聞社カテゴリーで7位にランクされた「リベラシオン」は、新聞紙が発行されてから48時間に限り、購読者は印刷版の内容を閲覧可能なペイウォール制を売りとして強く押し出した。
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それ以来、同社は読者に対する正しいビジネスモデルを試行錯誤している。読者の大半はフリーローダー、つまりコンテンツをタダ見するユーザーたちだ。彼らはペイウォールに囲われたコンテンツを読めないため、すぐにサイトから離脱してしまう。
米DIGIDAY主催のパブリッシングサミットにおける、ペイウォールとオフサイトの新しいマネタイズに関する講演に先立って、「リベラシオン」デジタル部門の担当者、グザビエ・グランジェ氏に話を聞いた。
――このモデルを採用した理由は?
通常、パブリッシャーは記事数に対してメーター課金制を採用している。たとえば、「ル・パリジャン(Le Parisien )」と「レキップ(L’Équipe)」だ。2大紙の「ル・フィガロ(Le Figaro)」と「ル・モンド(Le Monde)」は厳しいぺイウォールシステムを採用している。新しいことに挑戦しようとしているのだ。
いまやニュースはどこでからでも入手できる。だから、記事数ではなく訪問数、つまり、読者のロイヤルティに基づいたペイウォール方式を取ることに決めた。要するに10日ごとに7回の訪問をする人、かれらは毎日フリーペーパーを同じように読まないだろう。携帯端末の場合、モバイル経由の読者はより頻繁に訪問するが、1回のセッションの時間は短くなるため訪問数は14回ほどとなるだろう。
しかし、ほとんどのユーザーはロイヤルティリーダーではない。だからこそ、記事数ではなく、訪問数をもとにペイウォールの料金を測る方法を採用した。

10日間で7回の訪問の後、同パブリッシャーは支払いを要求する。
――ここでの狙いは?
目標は、1週間に7回以上コンテンツを読むためにサイトを訪問してくれる、我々のもっともロイヤルな読者をターゲットにすることだ。アナリティクスを見ると、読者の2%がこのロイヤルリーダーだ。それは、1カ月26万4000名の読者にのぼる。我々の目標は、これらのロイヤルリーダーのうち、0.1%を購読者にコンバージョンすることだ。
――新方式はうまくいっているのか?
過去3カ月間、ひと月につき約300名が新規購読者として登録した。26万4000名の0.1%は260だから、我々の目標を少し上回っている。それは、大きな数字ではない、だが現実的な数字だ。現在デジタル版に限定した購読者は1万人いる。そのうちの10%がペイウォール購読者だ。
――移り気な読者に毎月のトラフィックは左右されないのか?
購読者に対する我々のコミットメントのひとつは、彼らに広告を表示しないというものだ。これについては、人々が離れていくことを少し懸念し、広告の閲覧数である100万のページビュー数を失うリスクがあると見積もっていた。
しかし、何も結果は変わらなかった。我々から離れていく広告主もいなかったし、オーディエンスもそれは同じで、毎月のトラフィック数も下がっていない。そして、購読者からの収益は50%、約1万ユーロ(約114万円)増えている。
現在、オーディエンスの5%が有料購読者で、90%がそうではない人々だ。そして、そのなかの30%のオーディエンスがアドブロックをしている。広告収入は依然としてもっとも重要であり、この30%は購読料収入以上の金額に相当する。
――以前、「インスタント記事」の閲覧時間が、モバイルサイト記事より3割アップしたというが、どのような影響を受けているのか?
我々は依然として、これに非常に満足している。現在、「インスタント記事」の閲覧時間は、モバイルサイトの閲覧時間の2倍だ。Googleアナリティクスによると、平均でモバイルサイトは2分20秒なのに対して、「インスタント記事」は4分48秒となっている。
依然として、読み込みは早く、邪魔もなく、広告の質も良い。「インスタント記事」では、Facebookに留まりたいと望む、ロイヤルでエンゲージメントの高いユーザーをターゲットとしている。一方、我々のモバイルサイトの直帰率は、はるかに高い。
この取り組みで、収益も上がっている。Facebookは我々のために広告を販売してくれる。誰も彼らより上手くFacebook広告を販売することはできない。
2月、CPMは1.30ドル(約132円)だった。この夏に、こちらは3.40ドル(約346円)に上り、現在2.10ドル(約214円)に下がった。これは、約1万ユーロ(約114万円)の利益を上げ、8月に「インスタント記事」の収益が2倍になったことを意味する。自社のモバイルサイトのCPMは1ドル(約101円)以下だ。
――Facebookでの好調は一時的なものかもという懸念は?
我々はFacebook上でより多くのフォロワー数を獲得し、現在10%増となった。そして、より信頼できるエンゲージメントも得ている。アナリティクスに改善の必要があることは確かだ。しかし、ルールが変われば、我々も変わる必要があるのだ。
LucindaSouthern(原文 / 訳:Conyac)