狙いはバイラル現象を生み出すことだった。
「バイラル」という言葉の定義は曖昧だ。しかし、「GQ」のデジタルおよびソーシャルプラットフォームにとって、キム・カーダシアンのグラビア特集は、間違いなくバイラル現象となった。セレブであり、社交人であり、ビジネスウーマンでもあるキムの今回の起用によって、「GQ」の歴史上、もっともトラフィックを集めた2日間を創出できたのだ。
米DIGIDAYは、「GQ」編集長のジム・ネルソン氏に取材して、今回の特集記事に対するデジタル戦略や、このコンテンツがいかに「GQ」のデジタル上の数字に影響を与えたか、そして紙媒体とデジタルが一緒に取り組む理由について聴いてきた。
狙いはバイラル現象を生み出すことだった。
「バイラル」という言葉の定義は曖昧だ。しかし、「GQ」のデジタルおよびソーシャルプラットフォームにとって、キム・カーダシアンのグラビア特集は、間違いなくバイラル現象となった。セレブであり、社交人であり、ビジネスウーマンでもあるキムの今回の起用によって、「GQ」の歴史上、もっともトラフィックを集めた2日間を創出できたのだ。
記事が公開された2016年6月16日には100万ユニークビューを獲得。そして、その後36時間かけて、さらに200万ビューを達成することになる。さらに、これによって6月は、サイト上における紙媒体の購読売上が今年最高となった(数字は公開していない)。
Advertisement
「GQ」編集長であるジム・ネルソン氏は次のように語る。「キムのソーシャルメディアでの存在感を考慮すると、正しく撮影し、正しくローンチすれば、バイラル現象を生み出せると我々は分かっていた。そしてそれが起きたんだ」。
すべてのタイミングが合致した特集
カーダシアンの生活はすでにあらゆるソーシャルプラットフォームで拡散されている(彼女のTwitterのフォロワー数は4630万人、インスタグラムに至っては7540万人だ)が、それでも、元「Gawker」のライターであるケイティ・ウィーバー氏によって執筆された記事、そしてマート・アラス氏とマーカス・ピゴット氏によって撮影された写真と表紙は、人々にツイートされシェアされた。写真では裸のカーダシアンがきわどく絶妙に、レザージャケットを握っている様子が写っている。
今回の企画により、「GQ」のソーシャルプラットフォームは、カーダシアンのコンテンツで溢れかえった。インスタグラムからFacebookにいたるまで、何日にもわたってそれが続いた。記事を伝える「GQ」の最初のツイートは640回リツイートされ、1400回以上「いいね!」を獲得。インスタグラムでの最初のポストでは、2万1600もの「いいね!」を獲得した。
追加の写真を時間をかけて少しずつ公開し、「GQ」は継続して特集記事とカーダシアンのソーシャル上の存在感を最大限活用した。短いビデオも公開したが、そこではカーダシアンが彼女のインスタグラムコンテンツについて説明したり、彼女の絵文字アプリである「キモジ(Kimojis)」を紹介している。また最初のコンテンツ配信から約2週間経ってから、Snapchat(スナップチャット)を使ってカーダシアンが参加したパーティの舞台裏映像を届けている。
カーダシアンの写真と記事に対するソーシャル上での反応は、どこかで見たことがあると感じる人も多いだろう。2014年のペーパーマガジン(Paper Magazine)に掲載された彼女の見開き写真だ。「インターネットを壊す」という目標を掲げて撮影されたこのグラビアでカーダシアンは、裸になり全身にオイルが塗られていた。これは20万回もツイートされるという大騒ぎをネット上に作り出した。
米DIGIDAYは、「GQ」編集長のジム・ネルソン氏に取材して、今回の特集記事に対するデジタル戦略や、このコンテンツがいかに「GQ」のデジタル上の数字に影響を与えたか、そして紙媒体とデジタルが一緒に取り組む理由について聴いてきた。回答は編集されてある。
なぜキム・カーダシアンなのか?
我々は「愛、セックスそして狂気」という特別特集の10周年版を計画していた。そのときに「このコンセプトぐらい存在感の大きな女性は誰がいるだろうか? 女性の美しさと、我々がもつカルチャーの立ち位置の両方を象徴してくれるような女性」を考えたところ、答えはひとりしかいなかった。それがキムだ。
写真撮影のアイデアは何だったのか?
マートとマーカスとコラボレーションをしたい、とは思っていた。ヘルムート・ニュートンのビンテージ撮影みたいにしたかったし、キムを60年代や70年代のクラシック映画に出てくるような「雌狐」風に撮りたかった。ジーナ・ロロブリジーダの現代版のようにね。
デジタルは今回の特集にどんな影響を与えた?
いまはただカバーストーリーやファッション撮影のプランニングだけではなくて、タレントと交渉をしたり、ビデオやSnapchat、インスタグラム、Twitterなど、複数のWebポストについてもプランニングをしていかなければならない点だろう。
つまりマルチプラットフォームなアプローチ?
異なるプラットフォームにおいて異なる役目をもつコンテンツを作ったり発明するだけではなく、個々のストーリーやビデオやポストに対して迅速かつ賢くある必要がある。何かをローンチするときに正しい方法で正しいタイミングで行うこと、それからポストすることが目的ではなく、エンゲージメントをちゃんと最大化すること。
今回の特集に関してのインスタグラム戦略とは?
画像の数、そしてそれらのクオリティのおかげで、我々はインスタグラム戦略をさらに深化させることができた。数時間ごとに新しい画像を公開する大計画を実践し、それぞれがwebサイトに人々を呼び寄せる強い呼びかけとして機能させることができた。インスタグラムからのリファラーの流入は36万だった。インスタグラムはほかのプラットフォームにトラフィックを流出しないことは、誰に聞いても同意する共通理解だが、今回の特集ではじめてトラフィック元としてFacebookを追い抜く勢いにまで達した。
デジタル勃興のなかで、紙媒体の雑誌は今後も存在し続けると思うか?
今後もかなり長く存在し続けると思う。いつも私が話すのは、紙媒体はより紙らしさを求めないといけない。紙の手に触れたときの感覚やラグジュアリー感にもっと投資すべきだ。そのためには、紙やサイズを安くしてはいけない。可能ならもっと向上させるべき。雑誌の美しさと、それを読むという体験がなによりも大事だ。業界全体は、その点に十分な注意を払っているとは思えない。
そうなるとすごくお金がかかりそうだが?
雑誌の価格はもっと高く設定される必要があると思っている。紙であるという特性に消費者がもっとお金を払うべきだ。実際、データは消費者も価値に見合った価格であれば払うことを示している。雑誌の価格を上げることはパブリッシャーにとって公平なだけでなく、紙雑誌がその値段を払う価値のある贅沢品であるというシグナルを送ることにもなる。
デジタルと紙は一緒に今後も進化し続けると?
デジタルで上手くいくことをデジタルでやって、紙で上手くいくことを紙でやる。もしも見た目がすごく美しい、複雑な、紙向けにデザインされたパッケージがWebで上手く使えないのであればWeb媒体では使わなければいい。
Jemma Brackebush(原文 / 訳:塚本 紺)