あらためて「短尺動画」に賭ける、ディスカバリー系列企業:その戦略と展望

フードネットワーク(Food Network)やトラベルチャンネル(Travel Channel)をはじめ、かつてスクリップスネットワークインタラクティブ(Scripps Networks Interactive)の系列会社だったその他の企業が、テレビを含む複数のプラットフォーム向けのデジタル動画シリーズ作品の制作に注力している

これらの系列会社が制作する短尺番組の実に85%もが、クロスプラットフォームプロジェクトとして考えられたものだ。かつてスクリップスの系列会社だった企業は、合併を経て現在ではディスカバリー(Discovery)の系列会社となり、直近四半期にデジタルライフスタイルスタジオ(Digital Lifestyle Studios)を通して35本のデジタル動画シリーズ作品を配信した。デジタルライフスタイルスタジオは、フードネットワークやHGTV、トラベルチャンネル、若者向け料理Webサイトであるジーニアスキッチン(Genius Kitchen)やスプーンユニバーシティ(Spoon University)などのデジタル系列会社から構成されている。

同社は番組を広く配信する前にソーシャルプラットフォームまたは同社の所有するWebサイト、アプリ上で先行配信する傾向がある。たとえば、HGTVの「ザ・ファインド&ザ・フィックス(The Find & The Fix)」は、Facebook Watch上で先行配信されたが、現在はHGTV.comでもオンエアされており、これからまもなくさまざまな媒体で配信されていくことになる。Snapchat(スナップチャット)のディスカバー(Discover)上で配信されているフードネットワークの番組「トリート・ユアセルフ・ウィズ・スカイラー(Treat Yourself with Skyler)」などの約10%の番組は、ソーシャルプラットフォーム専用に制作されたものだ。残る5%はWebサイトやアプリ向けとなる。

短尺動画の原点に立ち返る

デジタルライフスタイルスタジオのゼネラルマネージャーであるビッキ・ニール氏によれば、新しいプロジェクトを検討するときに必ずしもそれがどこで配信されるのかを把握しているわけではないという。番組戦略は、たとえば、プラットフォームでフォロー数の多いセレブやインフルエンサーの影響力を利用するのか、あるいはどのような種類の番組やどういった部分に同社のオーディエンスは興味を持つのかといったようなことが記載された、全体の構成を示した資料の形で知らされることが多い。

また、クロスプラットフォームを利用する方法をとれば、ディスカバリーの系列会社はひとつのプラットフォームに過度に頼る必要がなくなる。特に、ディスカバリーの系列会社サイドでコントロールできないムラやアルゴリズムのあるプラットフォームについては、それがいえる。加えて、パブリッシャーは自社の所有するWebサイトやアプリを活用した方が、先行配信を自由にできるため、番組の配信がずっと容易になる(一方で、Facebookはかなりの動画広告収益を多くのパブリッシャーに還元する取り組みを依然として行っている)。この方法を用いたことで、短尺動画をデジタル企業の収益の一部に変えることができるようになってきたと、ディスカバリーは発表している。

「長い目で見て、当社は、消費者が当社のすべてのブランドに接することができるあらゆる場所で、弊社のすべてのブランドに触れるエコシステムやブランド体験の構築を考えている最中だ」と、ニール氏は言う。「ソーシャルメディアは食のカテゴリにおいても大きな影響力を持っているが、自社が消費者に接することのできる唯一の場所はソーシャルメディアだけだと限定的に考えて、それだけを消費者と事業の唯一の接点にしてしまうのは、長い目で見ると危険だからだ」。

フードネットワークやHGTV、その他のライフスタイルブランドは、短尺または中尺の番組が優勢な時期にFacebookのニュースフィードを賑わしていた短尺のスタンドアローン型ソーシャル動画の制作に立ち返ったのだと、ニール氏は言う。こういう番組制作配信の多くにはまだまだ将来性があり、企業は番組をプラットフォーム上にいつどのようにして配信するか、その予定を柔軟に決定することができる。

テレビ配信とブランデッド動画

デジタルライフスタイルスタジオはデジタル番組をテレビに配信する試みも行っている。当初フードネットワークのデジタルプラットフォーム向けに制作された「チョップド(Chopped)」のアフターショーは現在、同社のリニアネットワーク上でオンエアされている。2017年の第4四半期において、ホリデー・ベーキング・チャンピオンシップ(Holiday Baking Championship)のコマーシャルでは、フードネットワークは、調理手順を紹介する動画「ハンズ・アンド・パンズ(Hands-and-Pans)」を数種類放送した。

フードネットワークやトラベルチャンネル、その他のライフスタイルブランドは、状況的に適切だと判断した場合、パブリッシャー視点の動画やスポンサード動画をしばしばテレビに配信しているとニール氏は言う(フードネットワークのWebサイト上では、ソーシャルメディア向けの、これらと同一のレシピ動画も閲覧できる)。

これらのソーシャルメディアとテレビ向けのビデオのなかには、主に熊の形をしたクッキーを作る動画を配信するピルズベリー(Pillsbury)のような広告主とブランドとして協力して制作したものもある。

「広告主は(フードネットワークとの)連携を重視しており、フードネットワークと協力してコンテンツを作り上げたいと思っている」と、北米マインドシェア(Mindshare North America)でクロスプラットフォーム投資担当の常務を務めるマット・ディナースタイン氏は言う。「ソーシャルネットワーク上であれ、異なるオーディエンスがいるところでオンエアされているのであれ、コンテンツが配信されるところであれば、あらゆるところででそれは起きている」。

Facebookと今後の目標

Facebook、そして、特にディスカバリーが合計で23本の番組(そのうちいくつかはFacebookが資金提供している)を配信しているWatchは、現在も試験的な場所として残っていると、ニール氏は言う。FacebookがWatchを最終的に閲覧するサイトにできるかはまだわからないし、ディスカバリーはここにおいてはそれほど収益を上げているわけではないともニール氏は打ち明ける。しかし、デジタルライフスタイルスタジオはWatchを利用して番組を試し、他のプラットフォームにも響く番組を収益が得られる可能性の高いところに持っていくことができる。

「メディアがいまから3年後にたどり着く場所を完璧に言い当てることのできる人がいたなら、私たちはとっくに引退していただろう」と、ニール氏は締めくくる。「我々の目標は、何度も賭けをして、消費者のすべてを理解することにある。そして、試験を繰り返してより深く理解し、ほかのプラットフォームでももっと試してみることだ」。

Sahil Patel(原文 / 訳:Conyac