eスポーツは10億ドル(約1138億円)規模の世界的な産業に成長している。メディアが持続可能なビジネスモデルを模索するなか、サブスクリプション(定額制)と少額決済を利用して、スポンサーシップと広告を組み合わせたビジネスモデルを展開しているeスポーツのやり方から学ぶのも悪くないだろう。
eスポーツは10億ドル(約1138億円)規模の世界的な産業に成長している。
メディアが持続可能なビジネスモデルを模索するなか、サブスクリプション(定額制)と少額決済を利用して、スポンサーシップと広告を組み合わせたビジネスモデルを展開しているeスポーツのやり方から学ぶのも悪くないだろう。
eスポーツは2017年に2億6000万人のビュワー獲得が期待されているが、このオーディエンス規模を効果的にマネタイズすることは難しい。現在はスポンサーシップがその収益の大部分を占める。リーグ・オブ・レジェンズやエレクトリック・スポーツリーグなどのリーグは、ミレニアル世代の男性へのリーチに必死なインテル(Intel)やコムキャスト(Comcast)などのスポンサーシップに依存している。しかし、多様化への動きは見られている。
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手っ取り早い課金配信
「スポンサーシップも落ち着きを見せているため、スポンサーが自分たちの金が何に使われるのかといった、より核心をつく質問をするようになると、eスポーツ関連企業は資金源を多様化しはじめるだろう」と、スポーツおよびエンターテインメントエージェンシー、シナジー(Synergy)のデジタルマネージャー、クリスチャン・ベイカー氏はいう。「もっとも開かれた方法は、ペイ・パー・ビュー(PPV)の放送モデルだ。eスポーツはこれまでいつも無料放送されている。しかし、これを実施するには、テレビでは機能しないため、オンラインで機能するサブスクリプションモデルを構築しなければらないという課題がある」。
リーグ・オブ・レジェンズのデベロッパーであるライアットゲームズ(Riot Games:米ゲーム会社)のMLBアドバンストメディア(Major League Baseball Advanced Media)のテック部門に対する取引額は、2億ドル(約228億円)に上る。その内容は、今後2年以上に渡って、配信権の売却を行うというもの。MLBアドバンストメディアのアプリにおける、ビューワーの課金から、より多くの収益をあげることが期待される。
ゲーマーに課金してもらうことが課題となっており、企業は付加価値の提示が必要になるだろう。サブスクリプションモデルを実装することは必然的にオーディエンスの減少につながり、やがてスポンサーシップにも影響してくるため、不安定な綱渡りのような作業だ。
チリも積る小額決済
eスポーツには健全な小額決済もあり、M&C サーチ(M&C Saatchi)のエンターテイメント部門責任者、ジョディ・フルガール氏は次のように指摘する。「CS:GO(Counter-Strike: Global Offensive)のような大人気ゲームは、ゲームにおける自分のギアをパーソナライズできるスキンをベースにした課金モデルを運用している」。
今年のはじめ、DOTA 2の世界選手権に勝利したウィングス・ゲーミング(Wings Gaming)は、賞金総額2000万ドル(約23億円)以上のなかから910万ドル(約10億円)の優勝賞金を獲得した。「小額決済を通して、DOTA 2コミュニティでその賞金総額の大半が提供されたことは、その金額をさらに印象強いものにしている」と、フルガール氏は述べる。
Amazon所有のライブ配信ゲームプラットフォーム「トゥイッチ(Twitch)」では、ビューワーは「Cheers(応援)」を追加することで、チャンネルやストリーマーへの支持を示す。ビュワーは石のようなアイコンの仮想通貨「bit」を購入し、支持するプレイヤーに送信する。「トゥイッチ」によると、1回で使う「bit」が多いほど、その効果も絶大になるそうだ。「bit」は100個で1.40米ドル(約160円)で、ユーザーは1度に最大で1万個のビットを送信可能。これは、プラットフォームのサブスクリプション機能に似ている。
広告モデルも有効
中国は、特にビューワーと配信業者とのあいだでライブ配信を通じて、この手のソーシャルインタラクションを収益化する技術が進んでおり、それがプラットフォームと共有されている。巨額の資金がからんでおり、クレディット・スイス(Credit Suisse:スイス本社の世界最大の金融コングロマリット)の報告によれば、中国のライブ配信業界は2017年までに50億ドル(約5716億円)に達すると予測されている。
「我々には少額寄付の文化はないが、似たような現象がeスポーツに現れるだろう」と、エンダーズ・アナリシス(Enders Analysis)のアナリスト、マティ・リチュネン氏はいう。
「eスポーツのライブ放送は、放送プログラムに組み込む形で、広告の時間を前もって設定することができるのに対し、ほかのライブ放送はこのような広告の時間を前もって設定することには適していない」とつけ加えている。
また、「リーグは広告、スポンサーシップ、小額決済、そしてソーシャルエンゲージメントの収益化の利点を取り入れることが可能だ。たとえば、トーナメントの最中、オーディエンスがプロプレイヤーとの対戦に対価を支払うことが可能だ」と話した。
Lucinda Southern(原文 / 訳:Conyac)
Image via Getty Images