モバイルゲームは世界のeスポーツ市場で成長し続けている分野であり、eスポーツ会社のESLゲーミング(ESL Gaming)はそれに応じて競技ゲームへのアプローチを修正している。2021年、ESLはモバイル・デバイスがもっとも人気のあるゲーム機器である未来に備えて、モバイルeスポーツ分野を拡大した。
モバイルゲームは世界のeスポーツ市場で成長し続けている分野であり、eスポーツ会社のESLゲーミング(ESL Gaming)はそれに応じて競技ゲームへのアプローチを修正している。2021年、ESLはモバイル・デバイスがもっとも人気のあるゲーム機器である未来に備えて、モバイルeスポーツ分野を拡大した。
2000年に電子スポーツリーグ(ESL:Electronic Sports League)として設立されたESLは、現存する最大かつ最古のeスポーツイベント会社のひとつだ。同社はインテル・エクストリーム・マスターズ(Intel Extreme Masters)のようなロングランのトーナメント事業と、カウンターストライク:グローバル・オフェンシブ(Counter-Strike: Global Offensive)のような著名なeスポーツのための「プロツアー(Pro Tour)」リーグの両方を運営している。
同社は2017年にゲーム「クラッシュ・ロワイヤル(Clash Royale)」で初のモバイルeスポーツイベントを複数開催したが、これらのイベント自体はゲームの開発元であるスーパーセル(Supercell)のもので、ESLではなかった。しかしこれらのモバイル用、初期トーナメントイベントが成功したことは、ESLによる自らのモバイルゲーミング運営に向けて拍車をかけた。ESLのプロダクトマネージメント部門ディレクターであるオリバー・マックスフィールド氏は次のように述べている。「2019年の初めに、我々はAT&T協賛でESLモバイルオープン(ESL Mobile Open)を北米でローンチした。それ以来、我々はヨーロッパ、北米、アジア全域でモバイルアプリをローンチしてきた。モバイルeスポーツを世界規模で増やすことが狙いだ」。
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「ゼロからヒーロー」のフレームワーク
これに2年間取り組んできた今、ESLは現在7つのモバイルゲームのための競技イベントを行っている。ブロスタ(Brawl Stars)、クラッシュ・オブ・クラン(Clash of Clans)、リーグ・オブ・レジェンド:ワイルドリフト(Wild Rift)、アスファルト9(Asphalt 9:Legends)、PUBGモバイル(PUBG Mobile)、クラッシュ・ロワイヤル(Clash Royale)、レジェンド・オブ・ルーンテラ(Legends of Runeterra)がその7つだ。しかし、同社はこれらすべてのモバイルイベントをESLモバイル(ESL Mobile)の傘下に統合している。これに対しゲームコンソールとPCのイベントは、独自のトーナメントとインフラストラクチャで別々のゲーム部門として運営されている。ESLモバイルによる、このように分割・合理化されたアプローチは、モバイルeスポーツの分野に不慣れな潜在的ブランドパートナーを念頭に置いている。「当面はモバイルeスポーツを独自のものとして分類する必要がある」とマックスフィールド氏は言う。
このモバイルイベント統合アプローチは、ESLのモバイルeスポーツフレームワークがまだ具体化していないことも一因だ。同社の長期計画は、モバイルイベントを「ゼロからヒーローまでのピラミッド」にまとめることだ、とESLゲーミングのモバイル担当ゼネラルマネージャーのケビン・ローゼンブラット氏は言った。同社が抱える幅広いユーザーベースはカジュアルプレイヤー(「オープンレイヤー」と呼ばれる)で成り立っており、彼らはより小さなベースである、一流プロプレイヤーのトップ層への仲間入りを目指して競い合っている「チャレンジャー」と呼ばれる熟練したプレイヤーたちを支える形だ。ローゼンブラット氏は「(ピラミッドの)頂点に立つのが、我々が運営しているゲームのなかで最高のプレイヤーだ」と述べた。
前述の「ゼロからヒーロー」のフレームワークは、ESLのコンソールとPC向けにすでに存在しているが、ゲームスキルを生業にできるほどのレベルの最上位プロ・モバイルプレイヤーの数はまだまだ少ない。近い将来、ESLはこの層のモバイルプレイヤーのためのリーグを立ち上げ、優秀なモバイルプレイヤーが自分の能力を収益化する機会を増やし、ほかのeスポーツ組織にもこれらのプレイヤーたちを招待したくなるインセンティブを増やそうとしている。スクウェア・エニックス(Square Enix)のモバイル部門責任者、パトリック・ノード氏は「人々がゲーム関連の競争を作り上げるとき、ゲームはeスポーツになる」と語る。「そして、モバイルの成長はますますそこに到達しつつある」。
「そのうち、モバイル以外に何もなくなる」
結局のところ、PCやコンソールeスポーツのトッププレイヤーたちが似たようなモバイルタイトルへと移るのは時間の問題で、それによってエリート・モバイルプレイヤーのリーグを成り立たせるのに必要な人々の関心と業界の活発さが生み出されるだろう、とローゼンブラッド氏は語った。「ここまではゆっくりとしたペースだったが、リーグ・オブ・レジェンド:ワイルドリフトはいずれ大成功するだろう」とローゼンブラットは付け加えた。「しかし、適切なインフラストラクチャと基盤を最初に導入する必要がある」。
どれだけ時間がかかっても、ESLは、スマートフォンやほかのモバイルデバイスのコンピューティングパワーの増加の結果、モバイルeスポーツの成長は必然だと見ている。eスポーツ業界が2022年に向けて動いているなか、チーム、イベント主催者、ブランドはともにこの分野への関与を強化し続けている。マックスフィールド氏は、「西洋では、PCやノートパソコンのような大きなハードウェアを所有することから、誰しもが離れつつあると思う」と語り、アジアでは同様の変化がすでに起きていると指摘した。「これが最終的に、それでもいまだPCおよびコンソール指向のままである欧米諸国を、スマートフォン(モバイル)へと駆り立てることになるだろう。なぜなら、それ以外に何もなくなるからだ」。
[原文:How ESL is bringing its tried-and-true esports event framework to the mobile space]
ALEXANDER LEE(翻訳:塚本 紺、編集:長田真)