ドイツのメディア企業フーベルト・ブルダ・メディア(Hubert Burda Media:以下、ブルダ)は広告の選別を進め、デジタルポートフォリオの8サイトで広告インプレションを4分の1削減した。結果どうなったか。デジタル広告収益は徐々に回復し、2018年は全サイト平均で前年比38%増を記録した。
ドイツのメディア企業フーベルト・ブルダ・メディア(Hubert Burda Media:以下、ブルダ)は広告の選別を進め、デジタルポートフォリオの8サイトで広告インプレションを4分の1削減した。結果どうなったか。デジタル広告収益は徐々に回復し、2018年は全サイト平均で前年比38%増を記録した。
インターネット調査企業コムスコア(comScore)のドイツ版にあたるAGOFによると、ブルダの看板ニュースサイトであるフォーカス・オンライン(Focus Online)は月間ユーニークユーザー数が2016年に1700万人だったのが、2300万人以上に増えている。デジタル広告収益も毎年徐々に増え、2018年は前年比44%増と過去最高の伸びだった。ブルダのデジタル部門、ブルダフォワード(BurdaForward)のマネージングディレクターでCMOを務めるマーティン・ルエトゲナウ氏によると、収益の詳細な数字は明らかにしていないが、広告は収益全体の95%を占めていることから、広告収益の増加はかなりの額になるという(2019年に入っての決算はまだ発表されていないが、ブルダによると同じような成長曲線が見込まれている)。
ブルダが思い切った対応を決断したのは、アドブロックが危機的なレベルに達した2016年のことだ。調査会社eマーケター(eMarketer)によると、当時、パブリッシャーのトラフィックの広告プロック率は30%と過去最高に高まっていた。その後、広告ブロック率は横ばいになっているが(ドイツでは2017年には20%まで下がった)、失われる収益が大きいことに変わりはない。
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「リスクはわかっていた」
ルエトゲナウ氏によると、使える広告インプレッションを削減すると幹部を説得するのには時間がかかった。
「最初の反応は、収益を増やすためにもっと広告インプレッションを増やせというものだった」と、ルエトゲナウ氏はいう。「しかし、それでは広告ブロックがさらに広がることはわかっていた。袋小路だった。そこで、いまのユーザーファーストの戦略に取りかかった」。
ブルダは、画面の大部分を占めるものなど、ユーザーの邪魔になるバナー広告を外し、並行してあいまいな編集コンテンツを外した。そうした広告形式を削除しただけで、一夜にしてかなりの額の収益を失った。
「リスクがあることはわかっていた。この(広告)形式をひとつ落とすだけで、たちどころに7桁の収益が失われた」と、ルエトゲナウ氏。
「立て直し」の具体策
ブルダはまた、ユーザーがページをスクロールしはじめるまで広告がロードされないスマートな広告読み込みを導入した。これによりビューアビリティ(可視性)が上がり、広告主の関心が高まったため、ブルダは25人のブランデッドコンテンツチームを作り、ネイティブアドの企業提携を開始した。
ルエトゲナウ氏によると、収益減が3カ月続いた後、プログラマティックによる広告バイイングの平均ビッドレートを上げたり直接購入したりと、新しい仕組みに対する広告主側の反応がはじまった。ブルダフォワードの広告収益は現在、およそ60%がプログラマティックバイイングであり、その大部分がオープンエクスチェンジによるものだ。
ブルダフォワードでは現在、技術インフラを刷新してすべてのインベントリー(在庫)をひとつのアドサーバーに集めることを計画している。インベントリーに入札する広告主間の競争を促進し、デジタル広告収益をさらに増大させるのが目的だ。そのために4月、まずGoogleアドマネージャー(Google Ad Manager)からアップネクサス(AppNexus)にアドサーバーを移行させた。ルエトゲナウ氏によると、オークションに入札しているところと、あいだに入るベンダーのさらなる透明化を期待してのものだという。
CBAとの協力も奏功
Coalition for Better Ads(良い広告のための連合:CBA)は、ひどい広告に対するユーザーの反発に直接対応し、よい広告体験の基準を策定するべく2016年には設立されたグローバルな業界団体だ。ブルダはこのCBAとも密接に協力した。
「これ(このアプローチ)が機能すると思ってはいるが四半期の数字を心配するあまり大きな変更ができないパブリッシャーが多い」と、CBAのディレクターのニール・サーマン氏は語る。「ブルダは我々の基準を超えて最大限に取り入れることで、広告の改善はビジネスとして意味があるだけでなく消費者を幸せにすることを証明したのだ」
Jessica Davies (原文 / 訳:ガリレオ)