従来の広告事業のままでは、収益を確保することが難しくなってきたため、多くのパブリッシャーはイベント事業を新たな財源にしようとしている。しかし、当然のことながら、イベント事業に多くのパブリッシャーが参入してくれば、利益を生み続けることは難しい。
これが経済ニュース情報配信サービスの「ブルームバーグメディア」が直面している現実であり、同社のイベント事業を担当する「ブルームバーグライブ」に危機感を与える状況だ。そこで同社は、2015年初頭、老舗経済誌「フォーチューン」からステファニー・メタ氏を編集者として引きぬいた。そのうえで、大規模なイベントの開催を14回から7回にスケールダウンするという新たな計画を発表。これは、同様にイベントの数を減らした新興経済サイト「ビジネスインサイダー」が採った戦略と似ている。
従来の広告事業のままでは、収益を確保することが難しくなってきたため、多くのパブリッシャーはイベント事業を新たな財源にしようとしている。しかし、当然のことながら、イベント事業に多くのパブリッシャーが参入してくれば、利益を生み続けることは難しい。
これが経済ニュース情報配信サービスの「ブルームバーグメディア」が直面している現実であり、同社のイベント事業を担当する「ブルームバーグライブ」に危機感を与える状況だ。そこで同社は、2015年初頭、老舗経済誌「フォーチュン」からステファニー・メタ氏を編集者として引きぬいた。そのうえで、大規模なイベントの開催を14回から7回にスケールダウンするという新たな計画を発表。これは、同様にイベントの数を減らした新興経済サイト「ビジネスインサイダー」が採った戦略と似ている。
一方で、ほかのパブリッシャーたちは正反対の道を進んでおり、老舗総合誌「アトランティック」の場合、2014年に100以上のイベントを開催した。ブルームバーグは、数は少なくても、大きなイベントを催し続けることで、イベントに参加するジャーナリストたちだけでなく、潜在的なスポンサー企業にとっても意義があるものになると考えている。
Advertisement
よりブランドの注目を集めるイベントとは
たとえば、2015年10月6日にニューヨークとロンドン、香港の3都市で開催されるイベント「Bloomberg Markets Most Influential Summit」。これは、国際的なイベントに関わりたいスポンサーを魅了する、ブルームバーグお得意の手法だ。また、去る6月15日から16日にかけて開催された「Bloomberg Technology Conference」というイベントでは、Yahoo!のCEOマリッサ・メイヤー氏を壇上に立たせ、イベントの充実化を図った。ジャーナリストたちはこのイベントの最中、将来の記事のためのネタ集めを行っていたという。
「このようなイベントは、我々がどのようにジャーナリストの時間と能力を活用し、双方にとってベストな場を提供しているかを物語る」と、メタ氏は語る。また、メリットを最大限に引き出すためにイベントのテーマを厳選。今後開催されないことが決まった、最高財務責任者向けやスポーツビジネスに関するテーマのイベントについて、同氏は「インパクトがなく、印象にも残らない」と、慎重だ。
経済ニュース情報配信サービスを行う大企業のブルームバーグは、イベントで企業ブランドの向上を目指す。そして、最終的に購読数を増やすことが目的だ。
イベント事業で変化したブルームバーグ
ほかにも、イベント事業がブルームバーグに与えた変化は多い。同社のイベント事業は、ブルームバーグのジャーナリズムの延長だと見られている。
たとえば以前は、営業部門に対してのみ実施されていた、イベント担当チームによる開催結果報告。それが現在は、編集部門に対しても行われるようになったという。さらに、編集部がイベントのプログラムに携わるなど、部門間を超えた連携が実現した。ブルームバーグでイベントの司会を務めるジャーナリストは、討論者と事前に内容に関する下準備を行うことが義務付けられているという。それに対して、メタ氏は「自社のコンテンツの魅力を最大限に引き出すための変化だ」と、自負している。
ブルームバーグがイベントで注目を得るために行う手法は徹底している。招待客をイベント開場に実際に招くのは、主催者側にとっては容易なことではない。そこで、ブルームバーグはイベントをより魅力的にかつ参加しやすくするため、ステージ上での討論会の時間を短縮し、ブルームバーグの3大イベントの1つである「Bloomberg: The Year Ahead」をほぼオフレコのクローズドのイベントにした。これにより、イベントの参加者同士のネットワーキングを積極的に促すことを目論んだ。これはほかのパブリッシャーたちが開催しているイベント事業とは一線を画す試みであるだろう。
オフレコのイベントに記者が参加するのはあり?
オフレコにすることで、よりニュース価値の高い情報が得られると、アメリカンプレス研究所執行役員トム・ローゼンスティール氏は話す。しかし、オフレコで集めた情報はジャーナリストにとっては慎重に扱うべき代物だ。
著名人とジャーナリストが参加するオフレコイベントを長年開催していて、癒着を疑われた「アトランティック」。それに、企業のロビイストや議員たちに高額な参加料を請求するオフレコイベント開催しようとした「ワシントン・ポスト」。これらが以前、他メディアから追及を受けた経緯もある。一方、ブルームバーグは自社のオフレコイベントは、単に参加者たちの情報交換の場に過ぎず、ジャーナリストのための情報源作りではないことを強調している。
ブルームバーグのイベントの価値とは
しかし、このようなイベントで最終的にブルームバーグの利益につながるのか疑問だと、ローゼンスティール氏は話す。「オフレコイベントで、ジャーナリストが記事にできないのに、これがどうジャーナリズムなのか?」と同氏は疑問を呈した。
ブルームバーグの女性広報担当は、このイベントは型破りであることを認識しているが、目的は出席する役員たちの間で率直な意見交換をしてもらうことだという。「将来的に、部長以上のクラスのビジネスマン同士が、安心して今後のビジネスについて話せる環境を提供するために、イベントのフォーマットを試しているところだ」と、メタ氏は話した。
Lucia Moses(原文 / 訳:小嶋太一郎)
Photo by Thinkstock / Getty Images