「壊れた」メディアモデルに立ち向かう ハフポスト 創設者:アリアナ・ハフィントン氏のいま

「ハフィントンポスト(The Huffington Post)」の創設者アリアナ・ハフィントン氏が新たなベンチャー「スライブ・グローバル(Thrive Global)」を立ち上げて早くも3年が経とうとしている。ウェルネス分野のスタートアップとして誕生し、企業研修、ウェブサイト運営、オンラインストアでの商品販売(100ドル[約1万円]の携帯電話用ベッド型ステーションなど)を手がけてきた同社はいま、「行動変化テクノロジー企業」を名乗っている。

スライブ・グローバルの目下の収益は、企業の従業員をより健康的な習慣に導くオンラインレッスンとパーソナライズアプリによるものが大部分を占める。同社はこれまでに6500万ドル(約70億円)を超える資金を調達しており、2020年には収益を倍に増やす計画だ。2018年から2019年にかけても収益の倍増を目指し、2019年の第3四半期で目標を突破したという。

ハフィントン氏とスライブ・グローバルは、それ以上の財務状況を明らかにしなかったが、「黒字化への道筋がはっきり見えている」状況だと、ハフィントン氏は述べている。スライブ・グローバルの従業員数は前年比で61%増え、世界5カ所のオフィスに100人以上が所属する。またスライブによると、顧客数は80社を超え、バンク・オブ・アメリカ(Bank of America)、マイクロソフト(Microsoft)、プロクター&ギャンブル(Procter & Gamble)などが名を連ねるという。

スライブの戦略に関してだけでなく、ハフィントン氏は広くメディア業界についても語ってくれた。「古いモデルはもう壊れている」として、企業は統合やレイオフを背景に「通常と異なる多様化の試み」に走るだろうと、ハフィントン氏は話す。2017年にハフィントンポストから媒体名を変更した「ハフポスト(HuffPost)」を所有するベライゾン・メディア(Verizon Media)は、同資産の売却を模索していると報じられるが、「ベライゾンは非常に素晴らしくて協力的なオーナーだ」と、ハフィントン氏は評する。

以下にお届けするインタビューは、読みやすさを考慮して多少編集を加えている。

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──現在、いくつかの事業部門を抱えている。それぞれがもたらす、収益の比率は?

3年前は、収益の大半を企業クライアントやワークショップ、それに我々が「28日間チャレンジ」と呼んでいる、従業員の行動のある側面、たとえば睡眠や、テクノロジーとの付き合い方、感謝の気持ち、マインドフルネスを向上させる取り組みが占めていた。我々は収集したすべてのデータを活用し、ワークショップを実験室代わりに使って、行動変化のためのプロダクトを構築した。それはプラットフォームとして構築され、多くのバックエンドAPIを備えるため、企業は従業員のストレス解消、燃え尽き回避、生産性向上(を助ける)ものを何でもプラグインすることが可能だ。収益の大半をワークショップが占めていたのが、収益の大半がプラットフォームになりつつある。目標は、億単位の人にまで対象を拡大することだ。

──収益モデルの仕組みは?

完全にSaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)で、ユーザー単位、月単位(の料金)となっていて、リアルのワークショップはあくまで付け足しにすぎない。我々は、(クライアントが)従業員のためにやっていることを、人材の獲得と引き留めのためのマーケティングツールとして、また単純に、自分たちの取り組みを誇る材料として活用することを手助けしている。たとえば我々は、デロイト(Deloitte)および同社の米国法人でチーフ・ウェルビーイング・オフィサーを務めるジェン・フィッシャー氏とともに、当社のメディアプラットフォーム上に新たなセクションを立ち上げた。フィッシャー氏は現在、当社のワークライフインテグレーション担当編集主幹を務めている。

──この3年で実際のビジネスはどの程度成長したのか?

我々は当初からの出資者にも、新規の出資者にも、我々が黒字化と成長へ向けた明確なロードマップをもっていることを示している。我々は年ごとに劇的な成長を遂げている。2020年には収益を倍増させることを目指しており、そのロードマップに基づいて採用を行っている。当社のプロダクトおよびエンジニアリングチームは劇的に拡大した。

──eコマース事業はいまも継続しているか?

していない。行動変化テクノロジーのプロダクトに集中したかったため、eコマースから完全に手を引くことを我々は決断した。2、3年後には、eコマースが事業の一角を占めるようになると見ているが、いまは絶対にそのときではない。唯一残したプロダクトが、携帯電話のベッド型ステーションだ。Amazonで格安で販売していて、大した利益にはならない。同製品は、あくまで人々にこのささやかな儀式を通じて、携帯電話をベッドのそばに置いて眠らないという、小さいながらも非常に重要なステップを実行してもらうことを目的にしている。

──(メディア)分野には、統合やレイオフ、多くの困難という巨大な波が起こっている。メディア業界は今後どうなっていくと思うか? またどの企業が勝つだろうか?

古いモデルが壊れて機能しないことは明らかなので、この先数年間は、通常とはかなり異なる多様化の試みを目にすることになるだろう。そのため我々は、プラットフォームとして存在するというモデルをスライブに取り入れ、そこで人々がさまざまなトピックごとにコミュニティを築けるようにした。現在、スライブに記事を書いている人は4万人を超えていて、そのモデルとなったのはハフポストだ。私が2016年、立ち上げから11年後にハフポストを離れたとき、ハフポストには10万人の寄稿者がいた。

──ユーザー生成コンテンツ(UGC)にはリスクが伴い、審査と監視が必要だ。スライブでいまのところ(オープンマーケットプレイスにおける)広告という道を選んでいないのはそれも理由のひとつ?

我々のロードマップにはないものだ。その道を選択することはないだろう。

──SaaS企業の素晴らしいところは、メディア企業と比べて、またおそらくはウェルネス企業と比べても、何倍もの価値をつけてもらえることだ。株式公開へ向けて何か大きな目標は設定しているか?

まだしていない。手元現金と収益の面で、我々は非常に良い状態にある。したがって今後、成長を加速させるためシリーズC(の資金調達ラウンド)を行うとなれば、IPOと戦略的な身売りのいずれに進むか検討することになるだろう。現時点で我々は成長にとても集中していて、黒字化への道筋がはっきりと見えている。実際のところ、成長と黒字化のロードマップを上回る見込みだ。

──あなたがいまもハフポストの事情にかなり詳しいことは明らかだ。ベライゾンが資産の売却を模索していると報じられているが、ハフポストの事業展開について、いまもどの程度知っているのか。ベライゾンから離れたほうが価値が増す可能性は? もしいまもハフポストの指揮を執っていたら、どうしていたか?

ベライゾンは非常に素晴らしくて協力的なオーナーだと思う。リディア(・ポルグリーン氏、ハフポストの編集長)と話したが、彼女も同じことを言っていた。彼らが今後どうするつもりか、私は何も知らない。

Lara O’Reilly(原文 / 訳:ガリレオ)