米国の富裕層向け月刊紙、アーキテクチュラル・ダイジェスト(Architectural Digest)のグローバル・エディトリアル・ディレクター、エイミー・アストリー氏(TOP画像右)は、100年の歴史を持つ同誌が、伝統的な考え方に閉じこもってしまわないようにしたいと考えている。
米国の富裕層向け月刊誌『アーキテクチュラル・ダイジェスト(Architectural Digest)』のグローバル・エディトリアル・ディレクター、エイミー・アストリー氏は、100年の歴史を持つ同誌が、伝統的な考え方に閉じこもってしまわないようにしたいと考えている。
現在、アーキテクチュラル・ダイジェストの出版事業は堅調に伸長中だ。しかし、若年層のオーディエンスを獲得するためには、メディアブランドの存在感を、デジタル上で高めていく必要があるとアストリー氏。ここで重要な役割を担うのが、グローバル・デジタル・ディレクターのデーヴィッド・カウフマン氏だ。同氏は昨年、同メディアブランドの国際的な拡大とグローバルな統合を推進する存在として招聘された人物だ。
両氏は現在、より多くのオーディエンスを獲得するためにタッグを組んでおり、YouTubeやインスタグラムを含む、自社の保有チャネルを利用し、eコマースをはじめとした新規コンテンツの展開を推進。サブスクリプション加入者やオンライン購入者になり得る新規オーディエンスの獲得に努めている。
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米DIGIDAYのポッドキャスト、最新エピソードではこの両氏に話を訊いた。新たなコンテンツ、eコマース事業の構築、Z世代やミレニアル世代が頻繁に利用するプラットフォームへの参入など、パンデミックがアーキテクチュラル・ダイジェストにもたらした変化とは何かを探る。
以下は会話のハイライトだ。読みやすさのために若干の編集を加えている。
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多様なオーディエンスに向けて
「YouTubeのオーディエンスは、従来、我々が向き合ってきたオーディエンスとは異なる。これを踏まえ、私がチームに参画した当初に心掛けたのは、メッセージを限定されたものではなく、さまざまな人に届くよう形に調整したうえで届けることだった。これは成長戦略以前の問題だ。ブランドは、文化的にオーディエンスと関係し、対話に参加するなど、オープンな姿勢を持つ必要がある」。
「私たちは、オーディエンスがいるメディアに応じて、さまざまな方法でコミュニケーションを図っている。我々の出版事業にはすでに熱心なファンがおり、ビジネスとして現在も伸びている。一方若者を中心とした新規のオーディエンスたちは、YouTubeコンテンツを好み、彼らにとって紙媒体は不要かもしれない。しかし実際は、多くの若者が(そしてデータがそれを裏付けている)我々のインスタグラムアカウントをフォローしている。彼らは、これから我々が投稿するストーリーズ(Stories)経由で、eコマースコンテンツを見るかもしれない。また、紙媒体の購読者になる可能性だってある。そうしたあらゆる可能性を想定して、我々は目標を立てている。オーディエンス全員を購読者に転換するといったゴールは見据えていない」。
公開済みの動画をeコマース戦略に活用
「私たちが行っていることのひとつは、eコマースにより、紙媒体とデジタルを統合することだ。例を挙げよう。我々はこの4月、(人気ミュージカル『ハミルトン[Hamilton]』出演俳優の)デーヴィード・ディッグスとエミー・レイバー=ランプマンの記事を出した。彼らの自宅はとても美しく快適だったが、実は非常にお手頃な価格で作られていたのだ。そこで我々は、彼らの自宅と同じインテリアやデコレーションを購入できるデジタル・コンテンツを作成した。彼らの家のような自宅を、自分も持ちたいと誰もが持っているのは事実だ。しかも手頃な価格である。ショッピングに焦点を当てたコンテンツを作成しない手はない」。
「eコマース戦略を推進するうえで重要な役割を果たしているのが、我々が展開しているYouTube番組、『オープンドア(Open Door)』の過去コンテンツ。ここにショッピング要素を追加するわけだ。動画のなかには、1年前に公開されたにもかかわらず、いまだに毎月10万回再生されているものもある。我々は、こうした動画であれば、新規で制作する必要もないし、すぐに成果を得られることが分かっていたので、ショッピング要素を追加しない理由はなかった。単純で簡単な取り組みを組み合わせることで、最終的には大きな成果が得られた」。
グローバル・オーディエンスの統合
「アーキテクチュラル・ダイジェストは、グローバルな企画も開始している。これは、我々が持つ10以上のメディアブランドのすべてと協力して、グローバルにアピールできるコンテンツを特定し、世界中で同時に投下するというもの。たとえば『ザ・ワン(The One)』というカリフォルニア州ベル・エアにある、何千万ドルのお金をかけて建てられた52のプールとボウリング場を持つ超巨大な豪邸を紹介するコンテンツがある。私たちはひとりのライターに取材をさせ、記事を書かせ、その内容、コピー、写真、キャプションを、すべて我々の姉妹ブランドに送った。そして、その記事は世界中で同時に公開された。経済学的観点、規模の経済から見れば、それは誰にとっても大きなメリットがあった。ライターの報酬額としては少し多めに渡したが、記事を10本依頼するよりもずっと安上がりだった。これにより我々は、自分たちがとてもクールだと理解している記事が、グローバルのオーディエンスにはどう思われているかを知ることができる。私にとっては、世界中のオーディエンスが何を求めているかを知るのは、非常にエキサイティングだ。これはまだはじまったばかりの取り組みなので、なおさらだ」。
[原文:How 100-year-old Architectural Digest is becoming a brand for a younger and more diverse audience]
KAYLEIGH BARBER(翻訳:塚本 紺、編集:村上莞)