トラフィック活性化を目的に、昨年11月にペイウォールを廃止した、英タブロイド紙の「ザ・サン(The Sun)」。次なる戦略の一環として、去る6月にWebサイトのデザインを一新した。運営元となる英ニュースメディア企業のニュースUK(News UK)は、具体的な数字を明らかにはしないものの、リニューアル以降、ホームページトラフィックが平均25%上昇したと主張している。
ペイウォールの廃止にともない「ザ・サン」では、コンテンツのSEOが強化されている。課金でユーザーを囲っている状況では、頼る必要がなかった施策だ。SEO対策のほかにも、コンテンツプラットフォームのアップデートも行ったという。
トラフィック活性化を目的に、昨年11月にペイウォールを廃止した、英タブロイド紙の「ザ・サン(The Sun)」。次なる戦略の一環として、去る6月にWebサイトのデザインを一新した。運営元となる英ニュースメディア企業のニュースUK(News UK)は、具体的な数字を明らかにはしないものの、リニューアル以降、ホームページトラフィックが平均25%上昇したと主張している。
ペイウォールの廃止にともない「ザ・サン」では、コンテンツのSEOが強化されている。課金でユーザーを囲っている状況では、頼る必要がなかった施策だ。SEO対策のほかにも、コンテンツプラットフォームのアップデートも行ったという。
「我々は、ボリュームとスピードを求めている」と、「ザ・サン」のデジタルエディター、キース・プール氏はいう。「無償Webの世界では、あまりにも規模が広大であるため、話題作りをしなければならない。できるかぎり多くの人々に、我々のコンテンツを体験してもらいたい。彼らを惹きつけることさえできれば、定期購読者に変えることが可能だと考えている」。
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記事本数は半年前の10倍
プール氏が2016年1月にエディターとして加わった当初、「ザ・サン」は1日約25本のニュース記事を公開していた。現在、100名からなるその編集チームは、1日250本のニュース記事を作成しており、独占スクープを優先的にパブリッシュしているという。そして、より多くの海外ニュースや健康、科学、スポーツなどの主要コンテンツ分野に関して、専門家のアドバイスを報じるようにしてきた。
スピードに関しては、新しいデザインとバックエンドプラットフォームにより、ジャーナリストはよりスピーディに記事を作成できる。また、同サイトのロード速度も上昇したとプール氏はいう。サイト上のコンテンツが横並びで表示されるようにリニューアルした「ザ・サン」。写真はより目を引くものとなり、ページの1番上には、より多くのコンテンツを紹介するためのナビゲーションが追加されている。これにより、ユーザーがスポーツや芸能などのセクションをクリックして、スムーズにカテゴリー内のコンテンツを閲覧できるようになった。

いまだ旧デザインのスコットランド版(左)と、6月以降の本サイト(右)
ロード時間の短縮にも成功
プール氏によると、新サイトのローンチ以来、ホームページへのダイレクトトラフィックは25%上昇。歴史的事件となったブレキジット(Brexit)中は、ホームページへのトラフィックは2倍になった。そして、そのアクセスレベルは、直後の週末を通して維持され、翌月曜夜にサッカーのユーロ2016でイングランドが敗退するまで続いた。
ヘッドラインと画像の読み込み時間は2.8秒から1秒に減り、全体のページ読み込み時間は15.8秒から11秒まで短縮されている。しかし、「ザ・サン」の改修プランは、まだ初期段階にあるとプール氏は指摘。Googleの「ページスピードインサイト(PageSpeed Insights)」では、同ホームページを速度に関して100点中63点、ユーザエクスペリエンスに関して100点中99点と評価している。
ブレキジットまたはチルコット・レポート(イラク戦争参加を決断したブレア元英首相を非難した独立調査委のレポート)の公開など、動きの速いニュースに追いつくことは、旧式のイーシーニック(Escenic)CMSでは、より困難であったはずだ。以前なら、記者は画像の掲載に際して、写真部に依頼する必要があった。しかし、現在は、カスタマイズされたワードプレス(WordPress)サイトでの作業に切り替わっている。そのため、記者たちは、写真や動画など、素材を自由に利用できるようになっているという。
徹底したSEO対策
これまでのペイウォール時代であれば、GoogleのWebクローラは、サッカーやセレブに関する「ザ・サン」のニュース記事をピックアップしなかっただろう。それが現在、社内のSEOエキスパートと一緒に、ほかのパブリッシャーが展開してきた戦術同様、適切なキーワードを使用し、過去記事へリンクバックを行ってきたことが功を奏している。2016年1月には、そのトラフィックの18%は、SEOリファラであった。そしていま、その規模は29%になっている。
Googleが好むオリジナルコンテンツとしては、速報ニュース記事や独占記事が、よりSEOに効果があるといわれている。2016年6月、同紙はトム・ヒドルストンとテイラー・スウィフトのデートスクープをものにした。プール氏によると、「ザ・サン」の読者の大半はソーシャル・リファラからであるが、テイラー・スウィフトの記事は好ましいことに均等に分散しており、38%がソーシャルからのリファラ、残りが検索、そしてダイレクトトラフィックからだった。「検索では、記事公開後の2日間、テイラー・スウィフトとトム・ヒドルストンの組み合わせ、すべてにおいて『ザ・サン』は、1位もしくは2位を保持した」。
トラフィック数の増加がこのまま進んでいることから、部数公査機構(ABC : Audit Bureau of Circulations)が公表する「ザ・サン」の2016年5月の流入規模は、1日240万のユニーク数になるかもしれないと、プール氏は期待している。2015年のペイウォール時代、トラフィック規模はこの半分だった。
「サイトのデザイン変更にあたって、人々は変化を好まないし、トラフィックも減少するだろうと警告されていた。しかし、いまでは二桁成長を期待している」。
Lucinda Southern (原文 / 訳:Conyac)
Image courtesy of Huffington Post.