Facebookは去る1月11日、インスタント記事の新機能をテストしていることを公式ブログで明かした。パブリッシャーは、複数のインスタント記事をひとつのポストにパッケージできるという。今回、テストケースに選出された、10のパブリッシャーは、早速この機能を大いに活用している。
Facebookは去る1月11日、インスタント記事の新機能をテストしていることを公式ブログで明かした。その新機能でパブリッシャーは、複数のインスタント記事をひとつのポストにパッケージして投稿できるという。
今回、テストケースに選出された、BuzzFeed、ワシントン・ポスト、サン、エル・パイスといった10のパブリッシャーは、早速この機能を大いに活用している。「必読」コンテンツをそのままプラットフォームに定期的にパブリッシュできるようになったのだ。「ただのリンク機能を超えたチャンスを探ることができる」と、ワシントン・ポストの主任プロダクトマネージャーのデービッド・メレル氏は述べる。
ワシントン・ポストはコンテンツの種類やタイミングについては、のちほどいろいろと試みるという。現時点では、必読のインスタン記事5本をパッケージにしたものを毎朝投稿している。「朝起きたときに人々がまず行うのは、Facebookを開くことだ。散らばったニュース記事を見るのではなく、現時点でもっとも重要な5つの記事を読むことができる」と、メレル氏は語る。その日のトップストーリーをeメールで受け取るのと似ている。しかし読者は、Facebookを離れる必要がないのだ。
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毎日の習慣となる
読者が記事を読み終わると「すべて読み終わりました。また明日」というFacebookのメッセージが表示される。またパッケージが投稿されたときの通知を受け取るオプションも表示される。「毎日の習慣として身につけてもらう助けになる。私たちは人々に発見して欲しいんだ。押し付けられるのではなくて」と、メレル氏は説明した。
この段階からパブリッシャーを関わらせることで、エンゲージメントの測り方や広告の表示方法に関して、もっとも実用的な方向性を徹底的に吟味することができる。この機能によって新しい広告スペースが生まれるのは確かだが、最重要項目は読者がどのように反応するのか、という点に集中することだ。
ワシントン・ポストのインスタント記事・広告収入は「増えている」とのことだ。同紙のコマーシャルチームによってダイレクトに売られた広告収入は、すべてワシントン・ポストのものである。Facebook経由で売られたものはパブリッシャーの配分が7割となる。パブリッシャー側が売り切れていない在庫は、Facebookのオーディエンスネットワークによって売られる。
「これは大きな収益を生むと考えている」と、メレル氏は付け加える。Facebookが保持しているデータを使って、広告を効率的にターゲットできるからだ。しかし、すべてのパブリッシャーが同じ体験をしているわけではない。ザ・インデペンデント(The Independent)のようなパブリッシャーは機能を利用しはじめてから収益が減っていると、レポートしている。
ワシントン・ポストが毎日配信している800から1000もの記事は、すべてインスタント記事で閲覧可能となっている。Facebookによるとインスタント記事は、Facebook上でポストされる通常のリンクよりもシェアされる傾向が15%も高くなっている。インスタント記事以前であれば、Facebookからの読者が7日間以内にまたワシントン・ポストの記事を読む割合は50%だったが、いまではそれが60%にまで上がっている。
偽ニュース対策
「私たちにとっては偽ニュースに対抗するための素晴らしいツールだ。嘘や(プラットフォームの)中毒状態に対抗するひとつの手段となる。アルゴリズムを回避してオーディエンスに直接リーチすることができるんだ」と、エル・パイスのマネージング・エディターであるデービッド・アランデーテ氏は言った。
エル・パイスもまた、記事5本のセットを毎日朝7時に配信している。そこには速報から、社説、深い調査報道からビデオなど、いろいろな種類の記事が含まれている。エル・パイスはポルトガル語とカタルーニャ語のふたつで発行されており、ブラジルかスペイン北部、どちらの読者に読まれるかによって言語を変えている。「Facebookが位置に基づいたターゲッティングができること、そしてインスタント記事によって良い意味で混乱が起きているおかげで、年齢と地理的な面で新しいオーディエンスがもたらされている」と、アラデーテ氏は言う。
昨年インスタント記事を使いはじめて以来、彼らは毎日250本ほどの記事のうち100本ほどをこの方法でプッシュするようになった。結果には満足しているものの、まだすべての記事をインスタント記事で閲覧できるようにするのは、ためらっているようだ。彼らのコマーシャルチームが広告収益について分析が終わり次第、記事すべてを閲覧可能にする計画を立てている。
アランデーテ氏によると、「インスタント記事のおかげで、私たちのFacebookからのトラフィックは2倍になった。過去2年間は、少なくとも75%のFacebookトラフィックの増加が見られていた」そうだ。しかし去年に限ると、通常のFacebookからのトラフィックは横ばいだったとのこと。12月になってはじめて、通常のFacebook上でのリンクシェアからのトラフィックが50%、インスタント記事からが50%という成果が見られたという。
私たちが今回の記事で取材をしたパブリッシャーたちは、Facebookとの関係に満足しているようだったが、常に調整や修正が必要となることは確実だ。「Facebookのこれまでの歴史では常に、事前の知らせもなくこういった関係を変更している。これがどうなっていくか、注視していかないといけない」と、フォレスター(Forrester)のシニア・アナリスト、スーザン・バイデル氏は語った。
Lucinda Southern(原文 / 訳:塚本 紺)