MODERN NEWSROOM

スタッフライターからサブスタッカーへの転身に必要なこと:「ヒーテッド」創業者エミリー・アトキン氏

サブスクリプション型ニュースレタープラットフォーム、サブスタック(Substack)は現在、多くのジャーナリストを惹きつけている。一介のライター/記者を脱皮して、編集者、アーティスト、マーケター、経理、そして何と言っても上司という、一人で何役もこなせる存在になれるからだ。エミリー・アトキン氏もその魅力に惹かれていち早く行動を起こしたひとりであり、2019年9月に「ザ・ニュー・リパブリック(The New Republic)」のスタッフライターの座を捨て、気候変動にフォーカスするニュースレター「ヒーテッド(Heated)」を同月に創刊した。

「具体的に独立を考えてはいなかったんだけど、そろそろ何かしたい、という気にはなっていた。それで選択肢を検討したところ、[サブスタックが]一番ワクワクさせてくれる気がした」とアトキン氏。「一番楽しいと思えて、目的意識も高く持てることをやってみようと思った。そこが出発点ね」。

それから1年半後の現在、「ヒーテッド」には4万人以上の無料定期購読者が付いており、有料購読者へのコンバージョン率は8~12%と高い。この数字が氏いわく成功のバロメーターであり、そこにこだわっているという。そしてこの結果を踏まえ、「ヒーテッド」唯一の収益源である有料購読者に満足を届けるべく、すでにチームを増員する用意があるという。定期購読者数については、氏は明かさなかった。

4回にわけて、ユーチューバーやティックトッカー、サブスタッカーといった独立系コンテンツクリエイターに話をうかがうこのインタビュー特集。今回はその2回目だ。特集の目的は、一般にブロガーやインフルエンサー、フリーランサーと呼ばれる人々が自身の情熱や趣味をメディア事業に転化している姿を伝えると同時に、彼らのような独立系クリエイターがメディア界の主流となっていく未来を、そしてデジタルメディア企業がこうしたプラットフォームと適切に向き合うための指針を示すことにある。

以下に会話の一部を紹介する。なお、端的にまとめるため、発言には多少編集を加えてある。

まずはコツを知ること

[サブスタックを始める]つもりなら、正確で、有意義なコンテンツをタイムリーに配信するためには何が必要なのか、良い先輩や上司との経験を通じて、身をもって知っておいたほうがいい。自分が自分の上司になったら、記者としてのミスは自分で見つけるしかない。編集者としての冷静な目を常に持っていないと、そういうミスにはまず気づけない。そして、自分を客観的に評価し、反省して、「私が間違えました」と進んで言える人にならないといけない。フリーになったら、もう誰にも頼れないのだから。

広告に対する反対意見

多くのニュースの場合、広告が倫理にかなっているとは思えない。読者に何かを買わせたり、特定のブランドの良いイメージを植えつけて、そのブランドに金を儲けさせたり、といった心の操作を意図しているのは、火を見るより明らかだから。自身のビジネスモデルをサポートするのにそれが必要というなら、それはそれで構わない。けれど、私は広告も取材の対象にする。そして、そのなかで見えてくるのは、化石燃料企業と自動車メーカーとプラスティック製造販売企業が広告を利用して人々を操作し、事実とは違うことを信じ込ませようとしている姿。その事実が明らかになるほど、広告がたとえば「このシャツを買おう、これは赤いシャツ」と謳っていて、実際にそれが赤いシャツである場合は別だけど、真の目的は真実を伝えないことにある、という実態がはっきりと見えてくる。そもそも、広告は読者に何かを無理やりさせようとするもの。そういう心理操作は、少なくとも私のニュースレターでは起きて欲しくない。だからやっぱり、ニュースレターに広告を入れることは、今後も絶対にない。

気候関連のコンテンツは、タイミングがすべて

気候危機を訴える何かを始めるのに最適な時期を探っているなら、答えは――認めるのは心底嫌だし、本当に悲しくなるんだけど――8月と9月と10月、全米が灼熱と洪水に見舞われる時期ね。しかも、その傾向は年々強まっている。トランプ政権は気候変動にとって最悪の期間だったし、そのせいで国民はこの問題に対して麻痺してしまった。それに比べれば、いまは始めるのに良いタイミングだと思う。バイデン政権は気候問題対策をアジェンダに掲げ、改善に向けて行動を起こそうとしているから。[本気でやれば]自分の両手の上で真の戦いが行なわれている状態を作れるし、それこそがジャーナリストのあるべき姿だと思う。闘争なのよ。

[原文:Heated founder Emily Atkin shows what it takes to make the transition from staff writer to Substacker

KAYLEIGH BARBER(翻訳:SI Japan、編集:長田真)
ILLUSTRATION BY IVY LIU