米出版大手ハーストは、同社のネイティブデジタル広告製品を、米国での成功に引き続き、世界84カ国のマーケットすべてで展開しようとしている。
同社の広告製品「シェアード・スペーシズ(Shared Spaces)」を利用すれば、広告主は記事コンテンツと同じ「スペース」を「共有」することが可能だ。イギリスでは2016年1月にローンチされた「シェアード・スペーシズ」は、同年上半期末までにハースト・マガジンUK(Hearst Magazines UK)が所有するすべてのWebサイトに実装されることになっている。その後、アジアに拡大される見込みだという。
米出版大手ハーストは、同社のネイティブデジタル広告製品を、米国での成功に引き続き、世界84カ国のマーケットすべてで展開しようとしている。
同社の広告製品「シェアード・スペーシズ(Shared Spaces)」を利用すれば、広告主は記事コンテンツと同じ「スペース」を「共有」することが可能だ。イギリスでは2016年1月にローンチされた「シェアード・スペーシズ」は、同年上半期末までにハースト・マガジンUK(Hearst Magazines UK)が所有するすべてのWebサイトに実装されることになっている。その後、アジアに拡大される見込みだという。
「我々は、大きな成功を収めている米国モデルに基づいて、小規模マーケットを急速に生まれ変わらせようとしている。これは興味深いビジネスチャレンジだ」と語るのは、アンディー・ハート氏。2015年9月にハースト・メディア・インターナショナル(Hearst Media International)の最高売上責任者(CRO)兼シニアバイスプレジデントとしてハーストに入社した同氏は現在、「シェアード・スペーシズ」を世界展開する構想の陣頭指揮を執っている。
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「重要な点は、手本となるモデルをサイズの異なる国々・文化に適合させることだ。すべてが異なった開発段階にある」と、同氏は語る。
ネイティブアドを成功させるには
ハーストは、エージェンシーのあいだでは、デジタルシフトをうまく成し遂げた出版ブランドとして認知される存在ではない。しかし、とりわけブランドがプログラマティック広告やリザベーション広告の垣根を越えて、より深くオーディエンスとつながろうとしている昨今。今回のグローバルなネイティブアド展開は、「前向きな変化」と重要な売上推進力を表すと、デジタルエージェンシーのエッセンス(Essence)で企画とモバイル部門の代表を務めるアーファン・ジャズミ氏は語る。
「ブランドは機械的にネイティブアドを利用する、という形式主義の落とし穴にはまらないように気をつけなければならない。記事広告やスポンサー提供の投稿に留まらず、記事コンテンツの共同作成に進出した方がいいだろう」と、ジャズミ氏。「成功は、記事コンテンツがブランドメッセージといかに調和しているかにかかっている。その調和が、コンテンツをユーザにとって価値と意味のあるものにするのだ」。
ネイティブアド売上の起爆剤
ハート氏は、かつてMicrosoftで広告およびオンライン部門の欧州担当バイスプレジデントを務めていた人物で、それ以前には、現在大きな成功を収めている「メールオンライン(MailOnline)」を立ち上げた。彼の最優先項目のひとつは、小規模マーケットをデジタルシフトさせる方法を見つけることだ。
だからこそ、ハーストは「メディアOS(MediaOS)」(記事コンテンツと商業コンテンツを一体化して公開・配信するためのツールを統合するプラットフォーム)と「シェアード・スペーシズ」というふたつの製品の展開を早急に進めている。特に同氏は、「シェアード〜」が同社のネイティブアド売上の起爆剤だと確信しているという。
「我々は、すべてのデジタルパブリッシャーが直面する同種の課題に直面している――オーディエンスの分散、アドブロック、ビューアビリティ(可視性)、商業モデルにおけるトラストモデルの変更、無料コンテンツを期待する消費者という観点から見たサブスクリプションモデルへの取り組み、注意持続時間の減少などといった課題だ」と、同氏は付け加える。
自社内メディアでコンテンツ流用
ハーストは、「ELLE」や「コスモポリタン」「エスクァイア」など300近くの印刷版雑誌を抱えており(英国では19誌)、250以上のサイトを84カ国で運営している。この規模の老舗出版社をペースの速いデジタルメディアの世界に移行させるのは容易なことではない。しかし、ハーストはその達成を確信している――少なくとも、米国においては。
そして、その大部分は技術、すなわち同社の「メディアオペレーティングシステム」への投資のおかげだ。このシステムを通して、同社の米国ニュースデスクは、常に同社のサイトネットワーク全域でニュースを隅々までチェックし、どのニュースがほかのサイトでもうまく機能しそうかを識別できるのだ。通常、サイトコンテンツの約20%は、同社のほかのサイトに掲載されていたものが占めている。
ハーストは、このシステムの全面展開以来、デジタル部門の売上は米国で35%上昇し、同社サイトへのユニークビジター数は50%近く増加したという。インターネット調査企業のコムスコア(comScore)によると、ハーストは現在、デスクトップ部門で1億1300万人以上の月間ユニークビジターを抱えている。英国のユニークビジター(モバイルおよびデスクトップ)は1600万人だという。