ハーストマガジンデジタルメディア(Hearst Magazines Digital Media)が運営するコンテンツコマースサイト「ベストプロダクツ(Best Products)」では、複数のアフィリエイト戦略がテストされてきた。いまや同サイトは、ハーストにおける最大級のデジタルネイティブサイトとなっている。
ハーストマガジンデジタルメディア(Hearst Magazines Digital Media)はこの1年半、アフィリエイトコマースの詳細を解き明かすのに役立つウェブサイトを構築してきた。
すでにハーストのなかで最大級のデジタルネイティブサイトとなった「ベストプロダクツ(Best Products)」は、株式非公開の出版社であるハーストの「実験室」として、複数のアフィリエイトコマース戦略を同時にテストしてきた。具体的には、製品(「夏に楽しめるスタイリッシュな白のスニーカー」)や、現地の旅行体験(「本物の味がするニューヨークのロブスターロール」)から、ブランドと小売業者の両方に貢献することを意図したブランデッドコンテンツまで、さまざまなものを特集するコンテンツを掲載している。
「ポートフォリオ全体のアフィリエイトについて学ぶ先鋒のような存在だ」と、ハーストマガジンのデジタル担当グローバルヘッド、トロイ・ヤング氏は説明する。「当社ビジネスの下層ファネルを把握するのに役役ち、得られた知見はどこにでも適用できる。コンテンツマーケティングは業界で広く受け入れられるようになったが、とりわけ先進的なクライアントは、『次にどうする?』と問いかける」。
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「バナー広告における『次にすること』は、クリックだった」と、ヤング氏。「コンテンツマーケティングにおける『次にすること』は、閲覧者をファネルの下へ誘導することだ」。
ベストプロダクツの領域
ハーストがコマースコンテンツに挑戦するのは、ベストプロダクツが最初ではない。5年前には雑誌『ハーパーズ・バザー(Harper’s BAZAAR)』がデジタルショッピングサイトをローンチしたほか、雑誌『エル(ELLE)』および『エスクァイア(Esquire)』の両サイトがアフィリエイトコマースに着手し、ハーストのデジタルネイティブサイト「デリッシュ(Delish)」も調理製品を売っている。
だが、ベストプロダクツは、コマースに向けたハーストの新構想すべての源になるサイトだ。ハーストが詳細を把握してコマースに注力した投稿を可能な限り効率化するのに、ベストプロダクツが役立っているという。閲覧とコンバージョンを最適化するために購入ボタンをどこに置き、製品のリストをどの価格順で並べるかといったことから、さまざまな小売業者を行き来することにより、投稿が生む売上を最適化する方法まで、その範囲は幅広い。
「プラットフォームがやる必要があることは、プラットフォームのどこでも利用できるようになるべきだ」と、ヤング氏は語る。
ベストプロダクツの一定のオーディエンスでうまくいっている投稿は、CMS(コンテンツ管理システム)を共有しているおかげで、ハーストの別のサイトに簡単に配信できる。たとえば、今年多くのパブリッシャーが力を入れたプライムデーのときには、ベストプロダクツの記事がハーストのネットワーク中に配信された。
どんどん拡大する戦略
いまや収益を生むベストプロダクツは、ハーストデジタルメディアのポートフォリオでは3番目に大きなサイトにまで成長した。売上高については、具体的な数字を明かさなかったものの、前年比で230%以上増加しているという。
ハーストマガジンのオーディエンス開発のトップ、ブライアン・マドン氏によると、ベストプロダクツが現在もっとも強みを発揮するのは、ファッション系とテック系の製品だ。ただし、さらに多くのカテゴリーで実験を進めており、直近も旅行やソフトウェア、サブスクリプションと、コマースに注目するパブリッシャーのあいだで関心が高まっている分野を取り上げるコンテンツの制作を開始している。
コマースに注力する多くのパブリッシャーと同じく、ベストプロダクツももっぱら検索主導だ。解析サービスのシミラーウェブ(SimilarWeb)の分析によると、デスクトップトラフィックは85%が検索から流入する。しかし、ベストプロダクツはさらに、ほかのソーシャルチャネルをブランドに取り込むことにしている。Facebookではファン数が100万人に迫っているが、それは、Googleのような検索プラットフォームで探すことになるような製品よりも楽しくて面白い製品を狙ったコンテンツ戦略のおかげだ。イルカのような形をした植物に関するこの投稿はその一例だが、これだけではない。「グッド・ハウスキーピング(Good Housekeeping)」のようなハースト傘下の雑誌にとどまらず、「インサイダー(Insider)」、「LADバイブル(LADbible)」、「バイラル・スレッド(Viral Thread)」のような明らかに競合しているところを含む他社のパブリッシャーからも、パフォーマンスが高いコンテンツをシェアしているのだ。
パブリッシャーの未来像
Facebook上ではまた、ニューヨーク、ロサンゼルス、ボストンなどの都市を対象に、ローカライズしたコンテンツの配信を実験している。
「パブリッシャーは将来、3つの分野の専門知識を持つようになる」と、ヤング氏は予測する。「コンテンツのデータベース、人のデータベース、そして製品のデータベースだ。世界規模のコンテンツのデータベースは、まさに当社が得意とする分野。そして、製品のデータベースは、ベストプロダクツが目指しているものだ」。
Max Willens (原文 / 訳:ガリレオ)