2016年にヘッダー入札が市場に登場したとき、Google以外の全員がウィン・ウィンになれるもののように見えたかもしれない。だが、あっという間に今日を迎え、状況は少し変わった。ヘッダー入札の採用が進むにつれて、意図しなかった長期的結果がいくつか出てきている。今回は長期的な勝者と敗者を見てみることにしよう。
2016年にヘッダー入札が市場に登場したとき、Google以外の全員がウィン・ウィンになれるもののように見えたかもしれない。だが、あっという間に今日を迎え、状況は少し変わった。この方法は、パブリッシャーがプログラマティック広告を売買するのに非常にうまい方法だと思われる一方で、アドテクベンダーのインフラストラクチャに負担をかけ、アドサプライのコモディティ化を加速させてきた。
ヘッダー入札は、アドサーバーへのコールを行う前に、パブリッシャーが複数のアドエクスチェンジに同時にインベントリー(在庫)を提供できるようにするというもので、ウォーターフォール型のオークションプロセスでプログラマティック広告市場を牛耳っているGoogleの力を弱めたいというパブリッシャーの希望から生まれた。ヘッダー入札は、いまではかなりあちこちで利用されている。
だが、ヘッダー入札の採用が進むにつれて、意図しなかった長期的結果がいくつか出てきている。今回は長期的な勝者と敗者を見てみることにしよう。
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勝者 / Winner
パブリッシャー:サブスクリプション型パブリッシャーがトランプ大統領の当選や英国のEU離脱問題について語っている場所で、デジタル広告販売担当幹部はヘッダー入札について語っている。間違いない、ヘッダー入札から恩恵をもっとも多く得ているのはパブリッシャーだ。ヘッダー入札によりページロードの遅延が増えたという初期の報告は、ラッパーや、最終的にはサーバーサイドのオプションで解決された。広告コールの負担がパブリッシャーのヘッダーやブラウザから取り除かれ、アドサーバーにかけられるようになったからだ。入札密度の高まりに伴うCPM増加に加え、ヘッダー入札を導入した結果、最初の頃はプログラマティック広告の売り上げが急増したと、多くが報告した。
バイヤー:当初、少なくとも短期的には、パブリッシャーのプログラマティック広告売り上げを改善しうる中核技術と見なされていたが、バイヤーもだんだんと多くのメリットを感じはじめるようになっていった。
アドテクベンダー、サブライム(Sublime)で欧州・中東・アフリカ担当マネージングディレクターを務めるアンドリュー・バックマン氏はこう語る。サプライサイドのコンフィギュレーションの透明性向上など、デマンドサイドに向けた新しい機会の創出により、バイヤーは中期的な勝者になるだろう。バイヤーが改良された交渉戦術を開発し、パブリッシャーのインベントリーへのよりよいアクセスを手に入れるにつれ、CPMは減少しはじめるだろう」。パブマティック(Pubmatic)の創設者で会長のアマール・ゴエル氏によると、バイヤーは今年になってヘッダー入札の意味合いを考えはじめたところで、2019年にはその勢いがさらに増すだろう、という。
Amazon:ヘッダー入札は2016年のアドテク界のバズワードだったが、Amazonはすでにこの分野で何年も、自社のヘッダー入札製品「A9」を使って活動していた。A9は、その時点でいくつかのパブリッシャーが採用していた。これによりeコマースの巨人は、ヘッダー入札の次の段階、つまりサーバーサイド入札の開発で優位な位置に立てた。同社のサーバーサイドソリューション「Transparent Ad Marketplace(TAM)」はまだパブリッシャーに広く採用されてはいないが、誠実なサーバーサイドオプションを提供した最初の大手企業のひとつだったことに間違いはない。
敗者 / loser
サプライサイドプラットフォーム:サプライサイドプラットフォーム(以下、SSP)はヘッダー入札によるプレッシャーを受けてきた。いち早く採り入れたSSPは、販売できるインプレッションのシェアの増加から恩恵を受けたが、そうした恩恵は長続きしなかった。
バックマン氏は、「いまではヘッダー入札が広く採用されているので、もっとも大きな打撃を受ける敗者は、SSPということになるだろう」と話す。
ヘッダー入札の導入はSSPの階層構造に変化を及ぼした。SSPはかつて、パブリッシャーインベントリーへの独占的アクセスと、ウォーターフォールでのより高い位置を謳い文句にしていたが、もはやそれはできなくなってしまった。ヘッダー入札では、規模やパートナーであるパートナーとの関係にかかわらず、すべてのSSPがほかの各エクスチェンジと一緒にインベントリーを競い合うようになった。時間が経つにつれ、入札密度の向上とそこから誘導される高いCPMをパブリッシャーが享受したのに対し、SSPはますます、どこも同じに見えはじめた。サプライがコモディティ化してしまったのだ。
ヘッダー入札の登場以前にパブリッシャーからの十分なサプライフローを得ていたSSPがいまでは、同じインベントリーへのアクセスをめぐって他のすべてのエクスチェンジと競い合っている。要するにこれは、SSPの勝率が著しく低下したしたことを意味する。
「SSPはパブリッシャーからのインプレッションのネーム数を処理しているが、勝つのは6回に1回だ。つまり、パブリッシャーあたりの勝率と売り上げははるかに小さくなっている」と、ゴエル氏はいう。
デマンドサイドプラットフォーム:ヘッダー入札はデマンドサイドプラットフォーム(以下、DSP)側で、これまでとは違う頭の痛い問題を生み出した。DSPとエクスチェンジにおけるヘッダー入札のインフラ費用の激増だ。
DSPは、SSPから送られてくるアドコール量の紛れもない増加に圧倒されている。たとえば以前は、彼らが入札できる100インプレッションを1つのエクスチェンジから受け取っていたのに対し、いまではその数の入札リクエストを1秒あたり、SSPごとに受け取っている。だが、パブリッシャーから入ってくるインベントリーの初期量は変わっていない。
秒間クエリ(QPS)のコストの引き下げに成功したと主張するDSPもなかにはあるが、そのために相当の時間と技術リソースが注ぎ込まれていると、アドテクの情報筋は話す。そのリソースは、新しい革新的製品の開発に回されるはずだったものだ。
エッセンス(Essence)で欧州・中東・アフリカ向けプログラマティック広告部門を率いるマット・マッキンタイヤー氏は次のように語った。「DSPは、入札リクエスト量の増加に苦しめられているが、入札リクエストのほとんどは重複だ。それに加え、SSPカテゴリーの知覚価値が全体として低下していて、ここ数年彼らが経験してきたような料金引き下げへの圧力につながっている」。
Jessica Davies(原文 / 訳:ガリレオ)