アメリカのスペイン語テレビ局であるテレムンド(Telemundo)にとって、ワールドカップでの最大の出来事は、もっとも小さい画面のうえで起きた。米国内でワールドカップの全試合をスペイン語で放送する権利を持っているテレムンドは、ライブ放送のデジタル視聴者の48~51%は常にスマートフォンで視聴しているという。
アメリカのスペイン語テレビ局であるテレムンド(Telemundo)にとって、ワールドカップでの最大の出来事は、もっとも小さい画面のうえで起きた。
NBCユニバーサル(NBCUniversal:以下、NBCU)傘下のテレビ局で米国内でワールドカップの全試合をスペイン語で放送する権利を持っているテレムンドは、ライブ放送のデジタル視聴者の48~51%は常にスマートフォンで視聴しているという。残りの半分は、インターネットに接続したテレビ(コネクテッドTV)やデスクトップのストリーミングで見ていると、NBCUテレムンドのデジタルメディアならびにエマージングビジネス担当エグゼクティブバイスプレジデントのピーター・ブラッカー氏は話す。フリーホイール(FreeWheel)の最近のデータによると、スポーツを含め、ストリーミングのライブ動画を視聴する人気のスクリーンは、コネクテッドTVのままで変わらない。
「我々が学んだことは、ストリーミングの数のなかに、ふたつのグループがあることだ。ひとつはスマートフォンを使っているモバイルデバイスのグループ、もうひとつはコネクテッドTVやデスクトップを使っているグルーブだ。モバイルデバイスのグループは、試合によって数字が増減しようとも、安定している」と、ブラッカー氏は話す。
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モバイルで長時間視聴
ワールドカップの予選グループリーグは全部で48試合。それが終わるまでに、テレムンドのライブストリーミング放映は、1070万人のユニークビューワーを集め、計1億530万回のライブストリームと、総視聴時間は16億分以上を記録した。1試合の平均は200万ライブストリーム。テレムンドのデジタル配信は、テレビ放送だけの場合より視聴者数が平均で15%多かったと、テレムンドは説明する。
テレムンドの放映のハイライトは、6月27日に行われたメキシコ対スウェーデンの試合で、テレムンドによると、ピーク時は100万の同時ライブストリームを記録した。これはNBCスポーツ(NBC Sports)の放送史上2番目、2018年のスーパーボウルに次ぐ数字だ。2018年のスーパーボウルは、平均ライブストリーミング視聴者数が200万人、ピーク時の同時視聴者数は310万人という数字をたたき出している(ワールドカップではメキシコやコロンビアのような国が好成績を収め、それぞれに決勝トーナメントに進んだことが、当然のことながらテレムンドに有利に働いた)。
テレムンドは、1カ月間続くワールドカップの模様を伝えるためにロシアに500人以上のスタッフを送り込んでいるが、ここまでの結果は、ヒスパニック系米国人がモバイルデバイスでいかに長い時間を過ごしているかを示していると語る。ワールドカップの試合のように長時間番組をライブで視聴するケースでさえもだ。
多文化のオーディエンス
「(モバイルデバイスの)グループは、週末になるとスマートフォンから離れてコネクテッドTVのほうで視聴するだろうと私は思っていたが、実際はそうではなかった。これが(テレムンドの親会社であるNBCUが放映した)オリンピックと違う点で、あの時はたくさんの人がモバイルとコネクテッドTVを行き来していた」と、ブラッカー氏は述べる。
ブラッカー氏は、テレムンドにとってワールドカップは、ヒスパニック系米国人オーディエンスの消費習慣や、彼らが一般に思われているよりデジタルに明るい事実をマーケターに示す好機になるという。同氏は、テレムンドではグループリーグが終わるまでにワールドカップ期間の総売上予測を2度修正したが、2度ともそれを上回る結果を出していると話す。
「多文化のオーディエンスについて話す場合、スケールをめぐる議論を避けては通れない」と、ブラッカー氏はいう。「我々の業界にいる人々はたぶん、以前はこの点を理解していなかったし、目を向けてもいなかった。だが、このレベルのスケールを見ると、ここに市場がある、ここにオーディエンスがいるとすぐにわかる」。
コンバージョンが次の目標
テレムンドが次に考えているのは、「ティーヴィー・エブリウェア(TV Everywhere)」サービスでの認証について自社のユーザーに教えることだ。テレムンドは、予選グループリーグの期間中、ライブストリームを無料で提供していた。決勝トーナメントでは、ケーブルTVか衛星TVのアカウント情報でユーザーにサインインを促すつもりのようだ。グループリーグ期間中にテレムンドが行った数回のテストの結果は当初の予測を上回ったとブラッカー氏は言うが、コンバージョン率の具体的な数字は明かさなかった。
ストリーミング動画の解析を手がける企業コンビバ(Conviva)のチーフサイエンティスト、ホイ・ザン氏は、次のように語る。「ペイウォール(有料の壁)を取り除けば、驚くほどオーディエンスが増える。これは、我々が一緒に仕事をしているストリーミングサービス全体で繰り返し見てきたことだ。コンバージョン率は主要なパラメータだが、テレムンドがとった動きは正しかったと思う。基本的なレベルで、消費者が主役であり、まずはアプリを使ってもらう必要がある」。
Sahil Patel(原文 / 訳:ガリレオ)