ガーディアン 、20年ぶりに「黒字化」:寄付会員制に勝機

ガーディアン(The Guardian)は独自のやり方で持続可能な財務状況を成し遂げた。

ハードペイウォール(すべてのユーザーがどのようなコンテンツに対しても料金を払わないといけないペイウォール)を設置せずに寄付ベースの会員制という枠組みを選び、コストを20%削減するという苦しい3年計画をやり通したガーディアン。戦い疲れたが勝利を収めた。

成果はすでに出てきている。ガーディアンは5月1日(現地時間)、2018年4月~2019年4月は収益が2億2300万ポンド(約320億円)で、営業利益が80万ポンド(約1.1億円)だったと報告した。実に20年ぶりの黒字だ。2016年時点で1万2000人だった有料会員は、現在65万5000人で、さらに増え続けている。ガーディアンによると、このうち36万人は定期的に支払いのある会員であり、プリント版とデジタル版の有料会員が29万人いるという。

この3年間で、単発の寄付や定期的な会費の支払い、プリント版の販売などで、合計100万件の支払いがあった。現在は、広告料と読者の支払いからなるデジタル収益が、ガーディアンの全収益の55%を占めている

8000万ポンド(約115億円)という以前の営業損失から黒字化を果たすために視野の狭い展望をやめ、ガーディアンは今回、新たな目標を明らかにした。ガーディアンの次の3年間のビジネス戦略は2本立てだ。有料会員と寄付者を2022年までに200万人以上にする。そして、必要資金が、オーナーであるスコット・トラスト・エンダウメント・ファンド(Scott Trust Endowment Fund)の長期期待年次リターンである2500万~3000万ポンド(約36億~42億円)に沿ったものに収まるよう、引き続き気を配る。

英DIGIDAYに話をしてくれた、ガーディアン・ニュース・アンド・メディア(Guardian News and Media)のCEOであるデビッド・ペムゼル氏と編集長のキャサリン・バイナー氏は、この成功には喜びながらも、メディアモデルに対する現状の脅威を認識していた。「強いていうなら、脅威は増してはいないにせよ、変わっていない」とペムゼル氏。「Amazonについてたくさんの分析があり、広告戦略という意味ではAmazonはまだスタートもしていないという事実がある。このことを踏まえると、難しさはこれまでと変わっていない」と同氏は語った。

一方で、ペムゼル氏は好ましい傾向が出てきていることにも言及した。会員モデルの成功は、掲げる指針を堅持するメディアブランドの質と信頼を読者が求めている証拠なのだ。加えて、巨大なデジタルプラットフォームに対する広告主の態度も、パブリッシャーにプラスになるような形で徐々に変わりつつあるという。

「約3年半前は、みんながこぞってデジタルプラットフォームに参加し、可能な限り多くの資金をここにつぎ込む必要があると思っていた。しかしいま、広告という点では、そうしたプラットフォームの外側にマーケティング戦略を広げていくようにクライアントがなってきている」と、ペムゼル氏はいう。

バイナー氏は、質の高いジャーナリズムへの脅威がこの3年間で高まったと同意した。「ソーシャルのニュースフィードは依然として粗悪な情報の拡散を促進しており、これを悪用する困りものたちがたくさんいる」と同氏は語った。

読者収益の目標

ガーディアンの会員制の計画は、ある意味、運がよかった。英国の欧州連合離脱の国民投票や2016年の米国大統領選挙といった予測のできない政治結末の衝撃と、Facebookなどのソーシャルプラットフォームにおけるフェイクニュースの蔓延を受けて、態度を180度変え、質の高いジャーナリズムにお金を出すのを厭わない人が多かったのだ。のちにブレグジット効果やトランプ効果と呼ばれるようになったものにより、フィナンシャル・タイムズ(Financial Times)やニューヨークタイムズ(The New York Times)をはじめとする、あらゆる高級紙でサブスクリプションが加速した。

会員制の促進を後押ししてきた幅広い調査テーマをガーディアンは常に拡大しており、大部分の人の態度にこのような変化があっても、それが痛手になるはずがない。バイナー氏は、特に注目された中心的な調査として、英国のウィンドラッシュのスキャンダルの暴露、シリコンバレーのケンブリッジ・アナリティカのスキャンダルの暴露、そして、グローバルに広がっている長期的な環境破壊の報道を挙げた。

ハードペイウォールを用いているパブリッシャーの場合、サブスクリプション登録を促すような記事と、たくさんの人を集めることを狙った記事とはまったく別物になる。後者は通常、さまざまなプラットフォームから記事にやってくるが再訪問する可能性が低い「一過性のオーディエンス」ということになる。ペイウォール内の記事は、調査や分析の記事が普通で、何よりも重要なのは、ウェブのほかのところにないものであることだ。オープンアクセスであるガーディアンの場合は、そこまで型通りではない。

とはいえ、バイナー氏によると、読者は奥深い調査に対して寄付をしようとする傾向が強い。「今後、さらに多くの調査に投資をしていく」と同氏は語った。

当然ながら、サブスクリプション契約者が一定の規模に到達すると、新規契約者の獲得と同じくらい既存契約者の維持が重要になる。ペムゼル氏は、会員制の目標をどのように達成するのかについては詳細を語ろうとしなかったが、会員の維持など、適切なところに投資をしてリソースを配分する用意はあるということは話した。

「リソース配分によって適切な人員とシステムを手に入れて、しっかりとした読者の道筋を確保し、また、この規模の(会員)基盤を維持するために必要なことに関する理解がさらに磐石になるようにする必要になる」と、ペムゼル氏は語る。

ガーディアンは、解約を減らし、支払いを定期的なものにする新たな方法をすでに模索しはじめている

大きかった米国での軌道修正

この3年間でとりわけ頭を抱えたのは、それまでの状態では米国事業が財務的にやっていけないと判明したことだったと、ガーディアンは認める。米国では、2014年に編集チームがNSAの調査報道でピューリッツァー賞を受賞するなど、数々の栄誉を手にしたが、広告に依存した収益モデルは停滞していた。ガーディアンは、破綻させないためにはなにか劇的な変更が必要だと思い知った。

昨年、米国のスタッフを140人から約80人に削減したことと、寄付キャンペーンを導入したことが黒字化に有効だった。結果として、ガーディアンによると、英国以外での収益は2015年/2016年から倍増しており、2桁の年間成長率が続いているという。

「米国でなにか思い切った措置が必要だった」と、ペムゼル氏は振り返る。「米国はとても厳しい市場だ。当時は、必要な多様性がビジネスモデルになかった。すぐに軌道修正していなかったら、こうしていま持続可能な財務状況について話をするようなことにはなっていなかっただろう」。

広告収益は欠かせない

ガーディアンは読者収益に改めて注力したが、広告事業にも引き続き取り組んでおり、2018年は3%の成長だった。現在、プリント版の広告収益は、全収益の8%を切っている。ブランデッドコンテンツ部門であるガーディアン・ラボ(Guardian Labs)は、戦略と方法を大幅に見直した結果、2018年上半期には収益が66%増加した。一方で、ルビコン・プロジェクト(The Rubicon Project)との長年の訴訟で勝利するなど、デジタル広告分野でとった強硬路線も、収益にプラスに働いたようだ。ガーディアンは引き続き、オープンマーケットプレイスよりもプライベートマーケットプレイスでの提供を推進していくことにしており、オープンマーケットプレイスでリスクが大きくなるブランドセーフティのスキャンダルを恐れる広告主たちから、ニューズUK(News UK)、リーチ(Reach)、 テレグラフ(The Telegraph)らと投資したアライアンスのオゾン(Ozone)がより多くの予算を勝ち取ることを期待している。

Chart: made using Guardian data on Infogram

Jessica Davies (原文 / 訳:ガリレオ)