「ガーディアン」は、パナマ文書をとても巧みに報道した。関連記事がもっとも多く出回った2016年4月4日、アクセス数の新記録を生み出したのだ。その日だけでユニークビジター数が1040万人、ページビュー数が3500万にものぼったという。
今回のパナマ文書では、ジャーナリズム的な挑戦に加え、技術面でもさまざまな障害や困難があった。そのうちのひとつがモバイル機器でのコンテンツの最適化だ。「ガーディアン」の捜査主任であるジュリエット・ガーサイド氏によると、モバイル用のコンテンツを用意することは、生き残りを賭けたうえで、とても重要だと話している。
2016年4月3日、パナマ文書の分析結果が公開され、世界を騒がせている。
2015年8月にドイツの新聞社『南ドイツ新聞』へもたらされた同文書。その後、80カ国におよぶ400名のジャーナリストたちによって、1年間近く調査が行われた結果、世界中の超富裕層による租税回避地、いわゆる「タックス・ヘイブン」の利用方法が判明した。今回の発表は、1150万件ものやり取りが記録されたデータを慎重に分析した結果だ。
この文書はパナマの法律事務所モサック・フォンセカ(Mossack Fonseca)のデータベースから『南ドイツ新聞』へリークされたのち、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)に引き渡された。ICIJは文書を分析するために107社にも及ぶメディア企業や報道機関を選んだが、そのうちの1社が英デジタルメディア「ガーディアン(The Guardian)」だった。
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1日で3500万ものPVを獲得
今回、「ガーディアン」は、この事実をとても巧みに報道。そのおかげで、関連記事がもっとも多く出回った4月4日、アクセス数の新記録を生み出した。内部情報によると、その日だけでユニークビジター数が1040万人、ページビュー数が3500万にものぼったという。
もちろん、この数字にはモバイルトラフィックも含まれている。だが、同サイトの1日あたりの平均ユニークビジター数が約850万人だということを考えれば、驚きの数字だ。
これは「ガーディアン」の歴史上12番目に大きな記録であり、「ニュースが無い日」に限っては新記録だ。ちなみに、「ニュースが無い日」というのは、セレブの訃報、飛行機事故、選挙や重大ニュースなど、トラフィックに影響が出るような大きなニュースが無い日を指す。
前回、記録的なトラフィックを出したのは2016年1月14日で、イギリスの大物俳優であるアラン・リックマン氏の死を伝えるものだった。この時は、1日あたり1450万人のユニークビジターが「ガーディアン」のサイトを訪問した。また、同年3月22日に発生したブリュッセル連続テロ事件では、1170万人のユニークビジター数を記録している。
モバイルや動画が極めて重要
このような、数百万点ものデータが関わる複雑な事件を理解するのはとても難しい。「これは複雑な事件だった」と、「ガーディアン」の捜査主任であるジュリエット・ガーサイド氏は話す。「オフショア諸国でどのように金がロンダリングされたかを示す表を作らなければならなかった。ほかにも中国や南米からロンドンやチューリッヒなどの仲介業者を通じ、どこのタックス・ヘイブンに資産を移転しているのかなど、資産やカネの動きを図として書き出した」。
今回のパナマ文書では、ジャーナリズム的な挑戦に加え、技術面でもさまざまな障害や困難があった。そのうちのひとつがモバイル機器でのコンテンツの最適化だ。ガーサイド氏によると、モバイル用のコンテンツを用意することは、生き残りを賭けたうえで、とても重要だと話している。
「現在ではモバイルや動画が極めて重要になっているため、どう編集すれば最適なのかを常に考えている」と、彼女は言う。「ガーディアン」の調査チームは、今回の記録的なトラフィックを獲得できたことに対し、クリック戦争に勝った結果だと話している。「これはとても複雑で、極めて重大なニュースだ。どれくらいのクリックを獲得できるかがキーとなった」と、ガーサイド氏はコメントした。
短く、インパクト重視の動画づくり
データの視覚化は真新しいものではないが、今回の「ガーディアン」による報道記事には多く使われていた。4月5日には、ロンドンの街のモンタージュを作成し、どの建物を誰が所有しているかを明記。これらのコンテンツは、すべてモバイルとオンライン専用に作成されたものだが、結局は同社のすべての媒体で利用される青写真となった。
特に人気のあった動画2本
「ガーディアン」がパブリッシュしたコンテンツのなかで、もっとも多くのトラフィック数を獲得したのがアイスランドのグンロイグソン首相をインタビューした動画(下)だ。同首相は租税回避疑惑を受け、即座に辞任を発表している。
実際、「ガーディアン」は、この取材映像を配信予定日の3週間前に入手。だが、ロシアのプーチン大統領のオフショア金融を暴いた「ウラジーミル・プーチンにつながるオフショア金融の痕跡」記事と同時にパブリッシュするため、4月2日の日曜日に配信した。
文章記事はすでに3万3000件ほど共有されているが、動画は50万回以上も「ガーディアン」サイトやほかのプラットフォームで視聴されている。パナマ文書関連の動画としては、2番目に人気のある動画だ。
すべてを「インスタント記事」で配信
当然ではあるが、この4月上旬だけでも「ガーディアン」は多くのコンテンツをソーシャルプラットフォームにパブリッシュしている。「パナマ文書:数十億ドルを隠す方法」と題された同社の動画は、Facebookで130万回以上視聴された。全視聴数50万件のうち、約6万件はFacebookからとなっている。
イギリスにおいて、「ガーディアン」はFacebookの「インスタント記事」への参加を早期に決めたパブリッシャーの1社で、すべてのコンテンツを「インスタント記事」で配信している。4月6日に配信された「パナマ文書の重大な問題:ミレニアル世代が賃貸の罠に陥る」記事は、1日で2200件のいいね!を獲得し、「トーリー党の思想に根付く問題」と題された記事もFacebookで同様の数のいいね!を獲得している。
ウェブ解析企業シミラーウェブ(SimilarWeb)によると、「ガーディアン」が得たトラフィック数のおよそ半分はソーシャルプラットフォームからのものだという。
Jessica Davies(原文 / 訳:BIG ROMAN)
Photo via The Guardian